2026年 | プレスリリース・研究成果
世界初、ゴムー黄銅接着界面の劣化抑制機構をナノレベルで解明 ータイヤの安全性・耐久性向上に向けた材料設計に道筋ー
【本学研究者情報】
〇多元物質科学研究所 准教授 佐藤庸平
多元物質科学研究所 准教授 宮田智衆
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 自動車の安全走行には、タイヤの耐久性を担うスチールコードとゴムの強固な接着が極めて重要ですが、接着性向上と劣化抑制のため添加される有機酸コバルト(注1)の微視的な作用機構はこれまで未解明でした。
- 走査透過電子顕微鏡法(注2)などで直接観察することにより、有機酸コバルトがスチールコードの黄銅(注3)めっき表面に硫化コバルト(注4)ナノ粒子(注5)として析出し、黄銅成分のゴム内部への溶出を防ぐバリア層として機能していることを初めて解明しました。
- タイヤの耐久性・安全性向上に向けた材料設計指針を与えるとともに、環境規制や供給リスクの懸念がある有機酸コバルトの代替物質開発を加速すると期待されます。
【概要】
タイヤを補強するスチールコードとゴムの接着性は、タイヤの耐久性や安全性にとって極めて重要です。これまで接着性向上と劣化抑制を目的に有機酸コバルトが広く添加されてきましたが、その微視的な作用機構は未解明でした。
東北大学多元物質科学研究所の佐藤庸平准教授、宮田智衆准教授と横浜ゴム株式会社の清水克典主幹による共同研究グループは、走査透過電子顕微鏡法などを用いたナノスケール分析により、有機酸コバルトがゴム中の硫黄と反応して硫化コバルトのナノ粒子として接着界面に析出し、スチールコードの黄銅めっきの溶出や空洞化を抑制するバリア層として働いていることを直接観察により初めて明らかにしました。本成果は、環境規制や供給リスクの懸念があるコバルトの代替物質探索を加速するとともに、より安全性と耐久性に優れた次世代タイヤの設計指針の構築につながると期待されます。
本研究成果は、2026年6月5日付けで、学術誌Rubber Chemistry and Technologyにオンライン掲載されました。
図1. 有機酸コバルトを添加したゴムと黄銅めっきスチールコードの接着界面の走査透過電子顕微鏡像(白黒表示)とコバルト分布(ピンク表示)。
【用語解説】
注1. 有機酸コバルト:ステアリン酸やナフテン酸などの有機酸とコバルトが結合した有機金属塩の総称。
注2. 走査透過電子顕微鏡法:ナノメートル以下に極細く絞った電子線を試料に照射・走査し、試料を透過・散乱した電子を検出して、原子~ナノスケールの超高分解能で内部組織を観察・分析する手法。エネルギー分散型X線分光法(注7)や電子エネルギー損失分光法(注8)と組み合わせることで、元素種や化学状態の分析やマッピングも可能である。
注3. 黄銅:銅と亜鉛の合金。スチールコード表面へのめっき材料として用いられており、加硫工程において硫黄と反応することでゴムとの強固な接着界面層を形成する。
注4. 硫化コバルト:コバルトと硫黄からなる化合物。
注5. ナノ粒子:直径がナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)オーダーの微粒子。
注6. 加硫:生ゴムに硫黄などの架橋剤を配合して加熱・反応させることで、ゴム分子間に架橋構造を形成させる工程。加硫により、ゴムは弾性・強度・耐久性が大幅に向上する。
注7. エネルギー分散型X線分光法:電子線を照射した際に試料から発生する特有のX線(特性X線)のエネルギーを測定することで、試料中の元素の種類やその空間的な分布(元素マップ)を分析する手法。
注8. 電子エネルギー損失分光法:透過電子が試料内の原子や電子と相互作用する際に失ったエネルギーを分光測定することで、微小領域における元素の電子状態、原子価(結合状態)を詳細に解析する手法。
【論文情報】
タイトル:Nanoscale distribution and role of cobalt at the interface between brass-coated steel wire and rubber
著者:Yohei K. Sato, Tomohiro Miyata*, Katsunori Shimizu*
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 宮田智衆
横浜ゴム株式会社 主幹 清水克典(工学博士)
掲載誌:Rubber Chemistry and Technology
DOI:10.5254/rct.25.00050
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所
准教授 宮田 智衆
TEL: 022-217-5329
Email: tomohiro.miyata.d7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学 多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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