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酸化物中の水素を「プラス」から「マイナス」へ ―プロトン伝導体の水素を 「ヒドリド」に置き換えることに成功―

【本学研究者情報】

〇工学研究科 教授 髙村仁
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 金属イオンの還元を伴わないヒドリド(注1)(H⁻)の新しい導入方法を確立しました。
  • アクセプター(注2)(Sc)の添加量によって、H⁻の導入量を精密に制御できることを実証しました。
  • 導入されたH⁻の一部が800 ℃以上の高温下でも安定して保持されることを確認できました。

【概要】

頑丈な酸化物の骨格内に、強い還元力と高い反応性を秘めたマイナスの水素イオン「ヒドリド(H⁻)」を組み込んだ材料は、アンモニア合成触媒や次世代燃料電池の鍵として世界中で注目されています。しかし通常、水素は酸化物中では、プラスの電荷をもつ「プロトン(H+)」として存在します。これをマイナスのH⁻へと置き換える場合、その量を精密に制御し、しかも高温で保持することは容易ではなく、ヒドリドの優れた性質を狙いどおりに引き出すうえでの課題となっていました。

今回、東北大学大学院工学研究科の高村仁教授らの研究グループは、京都大学との共同研究により、プロトン伝導体(注3)として知られるスカンジウム(Sc)置換BaZrO₃(注4)に着目し、その水素をH⁻に置き換えることに成功しました。

本手法では、導入するH⁻の量をScの添加量によって精密に制御できるうえ、導入されたH⁻の一部が800 ℃以上の高温まで安定して保持されることを明らかにしました。本手法は、従来の作製法が抱えていたH⁻量の制御の困難さと熱に対する不安定さという二つの大きな課題を同時に解決し、ヒドリドの力を安定して引き出すためのブレイクスルーとなります。

本成果は、2026年6月26日に英国王立化学会の学術誌 Journal of Materials Chemistry Aに掲載されました。

図1. Ba(Zr1-xScx)O3(x=0〜0.5)にScと同量(x)のH⁻を導入した粉末の外観

【用語解説】

注1. ヒドリド:水素が電子を一つ余分に受け取り、マイナスの電荷をもつ。一般的なプラスの電荷を持つプロトン(H⁺)とは異なり、強い還元力や高い反応性を持つため、アンモニア合成触媒や超伝導材料など、新しい機能を引き出す鍵として注目されている。

注2. アクセプター置換:本来の陽イオンを、それより価数の低い陽イオン(ここではSc)で置き換えること。これにより材料内に電荷の偏り(欠陥)が生じ、それを補うために新たなイオン(プロトンやヒドリドなど)を取り込みやすくなる。

注3. プロトン伝導体:プロトン(H⁺)が結晶中を移動することで電気を運ぶ材料。次世代型燃料電池の固体電解質として注目されている。

注4. BaZrO₃:ジルコン酸バリウム。ペロブスカイト型構造と呼ばれる結晶構造を持つ酸化物。優れたプロトン(H⁺)伝導性や、高い熱的・化学的安定性を持つことから、次世代の高温動作型燃料電池の電解質材料などとして広く研究されている。

【論文情報】

タイトル:Thermally stable and tunable hydride-ion incorporation in Sc-doped BaZrO₃
著者:Itsuki Yaegashi, Itaru Oikawa, Akihiro Ishii, Hikaru Takeuchi, Yuki Sasahara, Daichi Kato, Hiroshi Kageyama, Hitoshi Takamura*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科 教授 高村 仁
掲載誌:Journal of Materials Chemistry A(英国王立化学会)
DOI:10.1039/D6TA02652D

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 高村 仁
TEL: 022-795-3938
Email: takamura*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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