2026年 | プレスリリース・研究成果
糖尿病治療薬リラグルチドが炎症による骨吸収を抑制 ―骨代謝をコントロールする新メカニズムを解明―
【本学研究者情報】
〇大学院歯学研究科 准教授 北浦英樹
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 糖尿病治療薬リラグルチドが破骨細胞(注1)の形成と骨吸収を強力に抑制することを生体内・試験管内実験で解明しました。
- 歯周病菌などが持つ毒素LPS(注2)が引き起こす骨吸収や炎症反応に対して、リラグルチドが優れた抑制効果を持つことを実証しました。
- リラグルチドがマクロファージ(注3)からのTNF-α(注4)の発現を抑えるという分子メカニズムを発見しました。
【概要】
近年、糖尿病患者における骨折リスクの上昇が臨床上の課題となっていますが、糖尿病治療薬リラグルチドが骨に及ぼす直接的な影響や、その具体的な分子メカニズムについては十分に解明されていませんでした。
東北大学大学院歯学研究科の村上光大学院生、北浦英樹准教授、金髙弘恭教授らの研究グループは、リラグルチドが免疫細胞であるマクロファージに作用し、強力な炎症性物質で破骨細胞形成促進因子でもあるTNF-αの発現を抑制することを突き止めました。この作用により、骨を溶かす主役である破骨細胞の形成と骨吸収が劇的に抑制されることが科学的に証明されました。リラグルチドが、免疫系を介して骨破壊を強力に防ぐという、新規性の高い骨保護メカニズムが明らかになりました。
本研究成果は、リラグルチドが糖尿病患者の血糖コントロールのみならず、骨粗鬆症などの合併症を予防・治療する「骨保護薬」としても極めて有効にはたらく可能性を提示するものであり、今後の骨代謝疾患における新たな治療戦略の確立に大きく貢献することが期待されます。
この研究成果は、2026年6月22日に分子生物学・分子医学の国際学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載されました。
図1. マウス頭蓋冠における骨吸収の比較
【用語解説】
注1. 破骨細胞:骨を溶かす(骨吸収する)機能を持つ、骨代謝に不可欠な多核の巨細胞。
注2. LPS:歯周病菌などの細菌が持つ毒素。生体内で強い炎症を引き起こし、骨を溶かす原因となる。
注3. マクロファージ:白血球の一種で、体内の異物等を掃除する役割を持つ。骨の代謝においては、骨を溶かす破骨細胞の元である破骨細胞前駆細胞となる。
注4. TNF(Tumor Necrosis Factor)-α:強い炎症反応を引き起こす代表的なサイトカイン(タンパク質)で、破骨細胞の形成に重要な役割を持つ。
【論文情報】
タイトル:Liraglutide, a GLP-1 Receptor Agonist, Mitigates LPS-Induced Osteoclastogenesis and Bone Loss by Downregulating Macrophage TNF-α Expression
著者:Kou Murakami, Hideki Kitaura*, Fumitoshi Ohori, Aseel Marahleh, Angyi Lin, Ziqiu Fan, Kohei Narita, Tomoko Ishiyama, Jin Hu, Huidan Zheng, Hiroyasu Kanetaka
*責任著者:
東北大学大学院歯学研究科 顎口腔矯正学分野
准教授 北浦 英樹(きたうら ひでき)
掲載誌:International Journal of Molecular Sciences
DOI:10.3390/ijms27125624
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
顎口腔矯正学分野
准教授 北浦 英樹
TEL: 022-717-8374
Email: hideki.kitaura.b4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
広報室
TEL: 022-717-8260
Email: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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