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顎の関節の軟骨が壊れやすい仕組みを解明 ―抗酸化の司令塔「Nrf2」を抑える後天的な目印を発見―

【本学研究者情報】

〇東北大学病院 講師 菅崎弘幸
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 酸化ストレス(注1)から細胞を守る抗酸化応答の司令塔であるNrf2(注2)という遺伝子の働きが、顎の関節(顎関節(注3))の軟骨(下顎頭軟骨(注4))では大きく抑えられていることを、マウスを用いて明らかにしました。
  • この抑制は、Nrf2遺伝子の"スイッチ"部分にDNAメチル化(注5)という後天的な化学修飾(エピゲノム変化)が関連した結果、顎関節の軟骨では抗酸化を担う酵素が少なく、DNAの酸化ダメージ(注6)が多い状態にあることを確認しました。
  • 顎関節症をはじめとする、かむ力による軟骨のトラブルに対して、このエピゲノム変化を標的とした新しい予防・治療法につながる可能性を示す成果です。

【概要】

私たちが食べ物をかむとき、顎の関節には繰り返し大きな力がかかります。顎の関節をつくる軟骨(下顎頭軟骨、MCC)は、膝など体を支える関節の軟骨に比べて、こうした力による変性(すり減り・破壊)が起こりやすいことが知られていましたが、その分子メカニズムは不明でした。

東北大学病院矯正歯科の菅崎弘幸講師らの研究グループは、鶴見大学との共同研究により、マウスの顎関節の軟骨では、酸化ストレスから細胞を守る"司令塔"であるNrf2という遺伝子の働きが著しく抑えられていることを発見しました。さらに、この抑制がNrf2遺伝子の"スイッチ"部分(プロモーター領域)において後天的な化学修飾(DNAメチル化)と関連していることを示しました。本成果は、顎関節症などの治療に向けた新しい手がかりとなることが期待されます。

本研究の成果は、2026年7月6日に国際学術誌 Antioxidants に掲載されました。

図1. 下顎頭軟骨(顎関節:MCC)と脛骨関節軟骨(TAC)におけるNrf2および抗酸化酵素の発現の比較。下顎頭軟骨ではNrf2とその下流の抗酸化酵素の発現が著しく低い。またその結果として酸化ストレスマーカーである8-OHdGの染色強度は高い。

【用語解説】

注1. 酸化ストレス:活性酸素種(ROS)が過剰になり、細胞のタンパク質・脂質・DNAを傷つける状態。

注2. Nrf2:抗酸化や解毒に関わる多数の遺伝子の働きをまとめて制御する転写因子。抗酸化応答の"司令塔"にあたる。

注3. 顎関節:下顎の骨と頭蓋骨をつなぐ関節で、口の開閉やかむ運動を担う。

注4. 下顎頭軟骨:顎関節を構成する下顎骨の先端(下顎頭)を覆う軟骨。

注5. DNAメチル化:DNAの特定部位にメチル基が付く化学修飾。遺伝子の配列を変えずにその働きを抑える「エピゲノム」制御の代表例。

注6. DNAの酸化ダメージ(8-OHdG):DNAが酸化的に傷ついた際に生じる物質で、酸化ストレスやDNA損傷の程度を示す指標。

【論文情報】

タイトル:Promoter hypermethylation is associated with reduced Nrf2 and antioxidant enzyme expression in mandibular condylar cartilage in mice
マウス下顎頭軟骨におけるプロモーターの高メチル化はNrf2および抗酸化酵素の発現低下と関連する
著者:Hisano Ujiie, Hiroyuki Kanzaki*, Mao Katayama, Tomomi Ida, Syunnosuke Tohyama, Miho Shimoyama, Yuta Katsumata, Chihiro Arai, Misao Ishikawa, Hiroshi Tomonari
*責任著者:東北大学病院矯正歯科 講師 菅崎弘幸(かんざき ひろゆき)
掲載誌:Antioxidants(MDPI)
DOI:10.3390/antiox15070854

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学病院
矯正歯科
講師 菅崎 弘幸(かんざき ひろゆき)
TEL: 022-717-8374
Email: Hiroyuki.kanzaki.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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