2026年 | プレスリリース・研究成果
免疫細胞「好中球」が歯の移動をコントロール ―効率的で安全な矯正歯科治療の実現へ―
【本学研究者情報】
〇大学院歯学研究科 助教 大堀文俊
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 矯正歯科治療によって歯が動く現象において、これまで謎の多かった好中球(注1)の重要性を解明しました。
- 世界に先駆けて矯正学的歯の移動モデルマウスの歯根膜組織をシングルセルRNA-seq(scRNA-seq)(注2)で解析し、歯根膜の細胞多様性と好中球の成熟経路を明らかにしました。
- 好中球はマクロファージ(注3)の動員や破骨細胞(注4)の活性化を誘導し、歯の移動を促進する具体的な分子メカニズムを発見しました。
【概要】
歯に一定の矯正力を加えると、圧迫された側の骨が溶ける(骨吸収する)ことで歯がゆっくりと動きます。近年、骨免疫学の進展により骨吸収には免疫細胞が重要であることがわかってきていますが、歯の移動における好中球の役割については依然として不明な点が多く残されていました。
東北大学大学院歯学研究科の大堀文俊助教、北浦英樹准教授、成田昂平特別研究員、金髙弘恭教授らの研究グループは、矯正学的歯の移動モデルマウスの歯根膜組織から細胞を回収し、scRNA-seq解析を世界に先駆けて行いました。その結果、好中球は歯の移動に伴って炎症を誘導する特徴(表現型)へと成熟し、ケモカイン(注5)やTNF(注6)シグナルを介してマクロファージの動員・活性化を制御し、破骨細胞形成を促進しているという、極めて新規性の高い分子メカニズムを明らかにしました。本研究成果は、効率的で安全な矯正歯科治療の実現に向けた生物学的機序の解明だけでなく、骨代謝の学問全体に新たなパラダイムを提示することが期待されます。
この研究成果は、2026年7月9日に歯科・口腔科学分野の専門誌Journal of Dental Researchに掲載されました。
図1. 矯正学的歯の移動モデルマウスを用いたscRNA-seqの流れ
【用語解説】
注1. 好中球:白血球の一種。体に細菌などが侵入した際に、真っ先に現場へ駆けつけて生体防御を担うことで知られている。
注2. シングルセルRNA-seq(scRNA-seq):細胞を1細胞ごとに分離し、それぞれの細胞でどの遺伝子が働いているかを網羅的に解析する最先端の技術。
注3. マクロファージ:好中球と同じく白血球の一種で、体内の異物等を掃除する役割を持つ。骨の代謝においては、骨を溶かす破骨細胞の元である破骨細胞前駆細胞となる。
注4. 破骨細胞:骨を溶かす(骨吸収する)機能を持つ、骨代謝に不可欠な多核巨細胞。矯正学的歯の移動において、歯が動く方向の骨をこの破骨細胞が溶かすことで、歯が移動するためのスペースが作られる。
注5. ケモカイン:細胞から分泌されるタンパク質の一種で、特定の細胞を必要な場所へ呼び寄せる働きを持つ。
注6. TNF(Tumor Necrosis Factor):強い炎症反応を引き起こす代表的なサイトカイン(タンパク質)で、破骨細胞の形成に重要な役割を持つ。
【論文情報】
タイトル:Neutrophils Orchestrate Osteoclastogenesis in Orthodontic Tooth Movement
著者:Fumitoshi Ohori*, Hideki Kitaura*, Kohei Narita, Aseel Marahleh, Jinghan Ma, Kayoko Kanou, Ziqiu Fan, Angyi Lin, Kou Murakami, Hiroyasu Kanetaka
*責任著者:東北大学大学院歯学研究科 顎口腔矯正学分野 助教 大堀 文俊
東北大学大学院歯学研究科 顎口腔矯正学分野 准教授 北浦 英樹
掲載誌:Journal of Dental Research
DOI:10.1177/00220345261459909
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
顎口腔矯正学分野
助教 大堀 文俊
TEL: 022-717-8374
Email: fumitoshi.ohori.b4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
広報室
TEL: 022-717-8260
Email: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

![]()
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています