2026年 | プレスリリース・研究成果
腎臓病により変性した細胞の修復をマウスの実験で確認 ―腎臓病の治療戦略に新たな道筋―
【本学研究者情報】
〇未来科学技術共同研究センター 教授 鈴木教郎
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 腎臓病は、多様で複雑な病態を示しますが、ほとんどの腎臓病で腎臓の「線維化(注1)」が生じることに着目し、線維化を抑制する薬剤を発見しました。
- この薬剤は、腎臓の線維化を促進する筋線維芽細胞(注2)の遺伝子を制御することにより、筋線維芽細胞を鎮静化し、線維化を抑制します。
- マウスの実験から、線維化を抑制することによって腎臓の機能が回復することがわかり、腎臓病の新たな治療戦略として、筋線維芽細胞への介入が有効であることを示しました。
【概要】
現在、国内の成人の5人に1人が腎臓病を発症しているといわれていますが、腎臓病は病態が複雑なため、効果的な治療法の開発が遅れています。
東北大学病院 石岡広崇 助教と東北大学未来科学技術共同研究センターの鈴木教郎教授らの研究グループは、腎臓病の進行に伴って、腎臓内の「線維芽細胞(注3)」が変性し、「筋線維芽細胞」となって腎臓を「線維化」させ、病態が悪化することを2013年に発見しました。この研究成果をもとに今回さらに研究を進めたところ、筋線維芽細胞に線維芽細胞の性質を回復させる薬剤を探し出すことに成功しました。また、この薬剤を腎臓病を患ったマウスに投与すると、線維化が軽減されたうえに、腎臓の他の細胞の性状も改善することを確認しました。本研究成果によって、腎臓病に対する根本的な薬剤治療法の開発に新たな道筋が示されました。
本研究成果は、2026年7月20日に生命科学の国際学術誌Life Sciencesのオンライン版で公開されました。
図1. 腎臓病によって線維芽細胞が筋線維芽細胞に変性し、線維化が進行する。HDAC阻害剤によって筋線維芽細胞が線維芽細胞の性質を回復し、線維化が収束するとともに、腎臓全体の障害も軽減されることが明らかとなった。
【用語解説】
注1. 線維化:臓器の損傷を受けた部位にコラーゲンなどの線維成分が蓄積し、臓器が硬くなる状態を線維化と呼びます。腎臓以外でも、ほとんどの臓器で認められ、線維化が進むと、臓器の構造が破壊され、本来の機能を保ちにくくなります。
注2. 筋線維芽細胞:線維化部位に出現し、線維成分を多量に産生する細胞です。腎臓病では、もともと腎臓にある線維芽細胞が筋線維芽細胞に変化し、線維化を進めます。
注3. 線維芽細胞:ほとんどの臓器に存在し、臓器の構造を支える細胞です。腎臓には、尿を生成する尿細管と血管が複雑に絡み合っていますが、それらの隙間を埋めるように線維芽細胞が存在します。
【論文情報】
タイトル:Histone deacetylase inhibition ameliorates kidney injury by restoring fibroblast features to myofibroblasts
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害は、筋線維芽細胞の線維芽細胞様特性を回復させることで腎障害を軽減する
著者: Hirotaka Ishioka, Yuma Iwamura, Yusuke Konta, Koji Sato, Koichiro Kato, Tetsuhiro Tanaka, Taku Nakai, Norio Suzuki
石岡広崇、岩村悠真、今田悠介、佐藤浩司、加藤幸一郎、田中哲洋、中井琢、鈴木教郎*
*責任著者:東北大学 未来科学技術共同研究センター
教授 鈴木 教郎(すずき のりお)
掲載誌:Life Sciences (Elsevier)
DOI:10.1016/j.lfs.2026.124599
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 未来科学技術共同研究センター
教授 鈴木 教郎(すずき のりお)
TEL: 022-717-8206
Email: norio.suzuki.c8@tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学 未来科学技術共同研究センター 広報
TEL: 022-795-4004
Email: niche-pr@grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

![]()
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています