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骨細胞の転写後応答を制御するRNA結合タンパク質を特定 ―高血糖ストレスでHuRが遺伝子の働きを微調整する―

【本学研究者情報】

〇学際科学フロンティア研究所/大学院歯学研究科 助教 Aseel Marahleh
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【発表のポイント】

  • 高血糖状態(高糖環境(注1))になると、RNA結合タンパク質(注2)の働きによって、骨細胞(注3)における遺伝子の働きを後から微調整するシステム(転写後調節(注4))が変化することを発見しました。
  • RNA結合タンパク質HuR(注5)の働きを抑えると、mRNA(注6)の量と実際に作られるタンパク質の量の連動性を不一致にすることから、遺伝子発現における転写後調節の重要性が明らかになりました。
  • 糖尿病に伴う骨合併症(骨折しやすくなる、など)の将来的な予防や、新しい治療戦略の構築につながることが期待されます。

【概要】

高血糖状態は、骨がもろくなり、骨折しやすくなることと関連しています。しかし、骨の中で最も数の多い細胞である骨細胞が高血糖状態によるストレスにどのように適応するのか、その分子メカニズムについては十分に解明されていませんでした。

東北大学大学院歯学研究科のFan Ziqiu助教、北浦英樹准教授、金髙弘恭教授、および同大学学際科学フロンティア研究所のAseel Marahleh助教らの研究グループは、高血糖状態のストレスに対する骨細胞の応答を制御する鍵として、RNA結合タンパク質の一種であるHuRを特定しました。さらに、HuRが欠損することによって、選択的スプライシング(注7)、翻訳シグナル伝達(注8)、ミトコンドリア機能(注9)、そしてTXNIP(注10)のmRNAとタンパク質の連動性(カップリング)が変化することも明らかにしました。

本研究は、高血糖状態に伴う骨の脆弱性への理解を深めることに貢献する成果です。また、今後はRNA結合タンパク質や転写後調節を標的とした代謝性骨疾患の研究の基盤となることが期待されます。

本研究成果は、2026年8月10日に科学誌iScienceに掲載されました。

図1. スプライシングが起きた遺伝子のRNA結合タンパク質モチーフ濃縮解析による、選択的スプライシングの候補制御因子としてのHuRを特定。

【用語解説】

注1. 高糖環境:グルコース(糖)濃度を上昇させた細胞培養条件のこと。糖尿病に伴うような高血糖環境の諸相をモデル化するために用いられる。

注2. RNA結合タンパク質(RNA-binding protein(RBP)):RNA(DNAの遺伝情報を読み取り、アミノ酸を重合させてタンパク質を合成するための仲介者として働く核酸)に結合するタンパク質。結合したRNAがどのように加工(プロセシング)され、安定化され、あるいはタンパク質へと翻訳されるかを調節する。

注3. 骨細胞(こつさいぼう):骨の中で最も豊富に存在する細胞種。骨の内部に埋没しており、周囲の環境変化の感知や、骨の恒常性(ホメオスタシス)の維持において重要な役割を果たしている。

注4. 転写後調節:DNAからmRNAを作ることを転写といい、この転写が終わった後に作られたmRNAを分解しにくくしたり、翻訳(タンパク質を作る工程)の効率を変えたりして、最終的なタンパク質の量をコントロールする仕組みのこと。

注5. HuR(Human antigen R):RNAの安定性、翻訳、およびスプライシングの調節に関与するRNA結合タンパク質。

注6. mRNA:DNAの遺伝情報を部分的にコピーし、タンパク質合成の場(リボソーム)へ伝える役割を持つ情報伝達物質。

注7. 選択的スプライシング:RNAの異なる部分(領域)同士が繋ぎ合わされる仕組みのことであり、これにより1つの遺伝子から複数のRNAバリアント(多様なRNAの型)を産生することが可能になる。

注8. 翻訳シグナル伝達:mRNAからタンパク質を作る(翻訳する)効率やタイミングをコントロールするための情報伝達ルート。

注9. ミトコンドリア機能:細胞の中で、生命活動に必要なエネルギーを作り出す働き。

注10. TXNIP(Thioredoxin-interacting protein(チオレドキシン結合タンパク質)):主要なグルコース(糖)センサーであり、細胞内のレドックス(酸化還元)調節や代謝ストレス応答に関与している。

【論文情報】

タイトル:Transcriptome-wide splicing analysis reveals HuR-regulated post-transcriptional programs in osteocytes
著者:Ziqiu Fan, Aseel Marahleh*, Hideki Kitaura, Jiayi Ren, Abdulrahman Mousa, Fumitoshi Ohori, Kuniyasu Niizuma, Sherif Rashad, Hiroyasu Kanetaka
*責任著者:東北大学学際科学フロンティア研究所、東北大学大学院歯学研究科 顎口腔矯正学分野 助教 Aseel Marahleh
掲載誌:iScience
DOI:10.1016/j.isci.2026.116529

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
東北大学大学院歯学研究科 顎口腔矯正学分野
助教 Aseel Marahleh
TEL: 022-795-5757
Email: aseel.mahmoud.suleiman.marahleh.e6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
広報室
TEL: 022-717-8260
Email: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学学際科学フロンティア研究所
企画部 広報担当
Email: fris-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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