2026年 | プレスリリース・研究成果
江戸時代の木製の義歯、三次元解析で優れた適合を証明 ―日本独自の歯科技術の再評価と個人識別への新たな応用へ―
【本学研究者情報】
〇大学院歯学研究科 非常勤講師 吉田貴恵
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 江戸時代に日本で独自に発展した木製の義歯(木床義歯(注1))が、使用者の顎の形に精密に合わせて製作されていたことを、世界に先駆けて数値的に証明しました。
- 義歯の内面と顎骨の形状を三次元解析で比較することで、多数の遺骨の中から義歯の持ち主を統計的に特定できることを実証しました。
- 本手法は、顎骨との形状比較を行うことで義歯使用者を特定するなど、現代の義歯を用いた個人識別への応用も期待できます。
【概要】
木床義歯は、日本で独自に発展した歯科技術による木製の義歯(入れ歯)です。江戸時代の木床義歯は現代の総義歯(注2)と類似した形状を既に獲得しており、審美目的だけでなく食事が可能な適合性を有していたと推定されていますが、これまで科学的な評価は行われていませんでした。
東北大学大学院歯学研究科の吉田貴恵非常勤講師(研究当時・大学院生)、鈴木敏彦准教授、小坂萌講師、同大学学際科学フロンティア研究所の波田野悠夏特任准教授らの研究グループは、江戸時代の湖雲寺跡遺跡(東京都)から出土した遺骨と、被葬者が用いていた木床義歯との形状について三次元解析を行いました。その結果、義歯と骨との直接的な形状比較によって義歯の使用者本人と他者の判別が可能であることを実証しました。
本研究成果は、江戸時代の木床義歯が高精度に上顎骨に適合して製作されていたことを定量的に示す世界に先駆けた報告であり、考古学的遺骨における義歯を用いた個人識別(注3)の可能性を初めて科学的に示すものです。
また、今回の手法は、現代の身元不明遺体における義歯を活用した法医学的個人識別への応用など、新たな鑑定手法の確立に寄与することが期待されます。
本研究成果は、学術誌International Journal of Osteoarchaeologyに2026年8月10日付で掲載されました。
図1. 本研究で用いた江戸時代木床義歯の一例(D879-1)
【用語解説】
注1. 木床義歯:柘植(ツゲ)などの硬い木材を削り出して作成された義歯。江戸時代では入れ歯師と呼ばれる職人により作成・治療がされていた。
注2. 総義歯:歯が全て無くなった場合に用いられる大きな入れ歯。
注3. 個人識別:個人に紐づけられる情報や特徴を使って、不特定多数の中から、他の人と区別して個人を特定すること。
【論文情報】
タイトル:Morphological Similarity Between Edo-Period Wooden Dentures and Maxillae in Japan: A Three-Dimensional Analysis Using Homologous Modelling
著者:Kie Yoshida*, Yuka Hatano, Moe Kosaka, Toshihiko Suzuki
*責任著者:
東北大学大学院歯学研究科 歯科法医情報学分野 非常勤講師 吉田貴恵
掲載誌:International Journal of Osteoarchaeology
DOI:10.1002/oa.70159
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
歯科法医情報学分野
非常勤講師 吉田貴恵
TEL: 022-717-8269
Email: kie.yoshida.d7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学大学院歯学研究科
歯科法医情報学分野
准教授 鈴木敏彦
TEL: 022-717-8269
Email: suzk*anat.dent.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院歯学研究科
広報室
TEL: 022-717-8260
Email: den-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
東北大学学際科学フロンティア研究所
企画部 広報担当
Email: fris-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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