2026年 | プレスリリース・研究成果
多機能ファイバー中に「ねじれた」三次元マイクロ流路 ―高効率な液体混合を実現、多領域への応用に期待―
【本学研究者情報】
〇学際科学フロンティア研究所 准教授(ディスティングイッシュトアソシエイトプロフェッサー) 郭 媛元
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 回転型熱延伸技術(注1)を用いて、「ねじれ型」三次元マイクロ流路を多機能ファイバー内部に連続的に形成することに成功しました。
- 高い混合効率と低圧力損失を両立するマイクロミキサー(注2)を実現し、その性能を数値シミュレーションと実験で実証しました。
- 「ねじれ」構造が生み出す旋回流と、「螺旋」の遠心力が生み出す渦により、混合が大幅に促進されることを解明しました。
【概要】
髪の毛ほどの細さの流路で微量の液体を精密に操作する「マイクロ流体デバイス」は、生命科学、化学、材料工学、医療診断など幅広い分野で注目されています。なかでもマイクロミキサーは、複数の試薬を迅速かつ均一に混合する重要な構成要素です。しかし、マイクロ流路内では液体が層流(注3)として流れるため自然には混ざりにくく、高効率な混合には複雑な流れを生み出す三次元構造が必要です。一方、従来技術では三次元マイクロ流路の作製が難しく、量産性、形状設計の自由度、他の機能との統合が大きな課題となっていました。
東北大学学際科学フロンティア研究所・大学院医工学研究科の郭媛元准教授と工学部電気情報物理工学科の加藤駿典学部生(研究当時・学際科学フロンティア研究所ジュニアリサーチャー)を中心とした、沖縄科学技術大学院大学、フランスINSA Lyonとの国際共同研究チームは、この課題を解決するために、回転型熱延伸技術を用いて、「ねじれ型」三次元ファイバーマイクロミキサーの開発に成功しました。 開発したマイクロミキサーは、75 %以上の高い混合効率と低圧力損失を両立し、その優れた性能を数値シミュレーションと実験の両面から実証しました。
本研究成果は、学術誌ACS Applied Materials & Interfacesに2026年8月31日付で掲載されました。
図1. 熱延伸技術により、「ねじれ型」のマイクロ流路を備えたポリマー製ファイバーを製造した。
A)延伸中に回転を加えることで、ねじれパターンを生成する。
B)マイクロ流路は製造誤差が小さい。また、ファイバーは高い伸縮性を持つ。
C)「ねじれ」により旋回流が、「螺旋」によりディーン渦が発生する。
【用語解説】
注1. 回転型熱延伸技術
材料を加熱して柔らかくした状態で引き伸ばすことで、センチメートルサイズの材料を、設計した断面構造を保ったまま、マイクロメートルからナノメートルサイズまで細く加工できる製造技術。もともとは光ファイバー製造に用いられてきたが、近年では電極やセンサー、流路など複数の機能を一本の柔軟なファイバー内に集積できる技術として発展してきた。本研究では、延伸中にプリフォームを回転させる「回転型熱延伸技術」を用いることで、ファイバー内部にねじれた三次元マイクロ流路を連続的に形成した。
注2. マイクロミキサー
数マイクロメートルから数百マイクロメートルの極小な流路(マイクロ空間)を利用し、液体や気体を瞬時にかつ均一に混合・反応させるための装置。マイクロメートルは、1ミリメートルの1000分の1の大きさ。
注3. 層流
流体が乱れることなく、規則正しく整った状態で流れる流れ方。流体の各部分が互いに混ざり合わず、層状に並んで滑らかに進むのが特徴で、レイノルズ数が小さいときに現れる。
【論文情報】
タイトル:Programmable Twisted Microchannels in Polymer Fibers via Rotational Thermal Drawing for Enhanced Micromixing
著者:Shunsuke Kato*, Danessia Zan, To-En Hsu,
Ricardo Arturo Lopez de la Cruz, Tomoki Saizaki, Jérôme Adrien, Eric Maire,
Amy Q. Shen, Yuanyuan Guo*
*責任著者:
東北大学学際科学フロンティア研究所 新領域創成研究部
東北大学大学院医工学研究科 バイオファイバー医工学分野
准教授 郭媛元
東北大学工学部電気情報物理工学科
加藤駿典(学際科学フロンティア研究所ジュニアリサーチャー)
掲載誌:ACS Applied Materials & Interfaces
DOI:10.1021/acsami.6c06952
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 学際科学フロンティア研究所
准教授(ディスティングイッシュトアソシエイトプロフェッサー)
郭 媛元
TEL: 022-795-5768
Email: yyuanguo*fris.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
企画部 広報担当
Email: fris-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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