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クロマチン構造とDNA合成の連携がゲノム安定性を守る新原理を発見 ―ゲノムを守る「橋渡し役」を発見、がん治療と老化制御への応用に期待―

【本学研究者情報】

〇加齢医学研究所 准教授 宇井彩子
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • クロマチン(注1)構造を制御するCHRAC複合体(注2)とDNAポリメラーゼε(注3)が段階的に連携し、DNA二本鎖切断(注4)を相同組み換え(注5)により正確に修復してゲノム安定性を維持する新たな分子機構を発見しました。
  • 本成果は、分子標的薬PARP阻害剤(注6)の効果予測や、新たながん治療法の開発につながることが期待されます。

【概要】

aa東北大学加齢医学研究所の銭江浩博士、田中耕三教授、安井明学術研究員、宇井彩子准教授らの研究グループは、細胞の遺伝情報を保持するゲノム安定性を維持する新たな分子機構を明らかにしました。ゲノム安定性の破綻はがんや老化を引き起こす主要な原因の一つですが、その制御機構には未解明な点が多くありました。本研究では、クロマチン構造を制御するクロマチンリモデリング(注7)複合体CHRACとDNA合成酵素DNAポリメラーゼε(Polε)が段階的に連携してDNA二本鎖切断を正確に修復することを発見しました。CHRACはDNA修復因子(注8)で家族性乳がん原因遺伝子のBRCA1やRAD51の働きを促した後、Polεを動員して相同組換え修復を完了させる「橋渡し役」として機能していました。さらに、CHRACやPolεの機能が低下した細胞では、分子標的薬(注9)PARP阻害剤への感受性が高まることも明らかになりました。本成果は、PARP阻害剤の治療効果を予測する新たなバイオマーカーや創薬標的となる可能性を示し、個別化がん治療や老化制御法の開発へつながることが期待されます(図1)。
本研究成果は、2026年9月15日に科学誌 Communications Biology に掲載されました。

図1. 今回発見した新しいメカニズム

【用語解説】

注1. クロマチン:真核生物の細胞の核内に存在するDNAとヒストンなどのタンパク質からなる構造体で、DNAがヒストンなどに巻き付いて折りたたまれて核内に収納されています。遺伝子の発現を調節するなど、生命の活動に重要な役割を果たしています。

注2. Chromatin Accessibility Complex (CHRAC)複合体:DNAが収納された構造(クロマチン)を整え、DNA結合して働く酵素や因子が働きやすい環境をつくる複合体です。

注3. DNAポリメラーゼε:細胞がDNAを複製するときに新しいDNAを合成する酵素であり、細胞の増殖に必須です。

注4. DNA二本鎖切断(DNA double strand break; DSB):DNA損傷の中でも特に致死的なDNAの二重鎖が切断された損傷です。

注5. 相同組み換え(Homologous recombination;HR):DNAが両方切れてしまったとき(DNA二重鎖切断)に使われる、時間はかかりますが正確な修復機構です。がんや老化を防き、細胞の正常な働きを保つためにとても大切な仕組みです。

注6. PARP阻害剤:がん細胞がDNAを修復する仕組みを妨げ、がん細胞だけを効率よく死滅させる分子標的薬で、家族性乳がん原因遺伝子のBRCA1やBRCA2などDNA修復機能に異常をもつがんに高い効果を示します。

注7. クロマチンリモデリング:クロマチン(真核生物の細胞核内に存在するDNAとタンパク質の複合体)の構造を動的に調節することで、遺伝子発現(転写)やDNA修復やDNA複製を制御する仕組みです。

注8. DNA修復因子:細胞がDNAの損傷を修復する因子です。DNAの損傷は、紫外線や化学物質、活性酸素や放射線などによって引き起こされます。

注9. 分子標的薬:がん細胞が増殖や生存に利用している特定の分子だけを狙って作用する薬です。正常な細胞への影響をできるだけ抑えながら、がん細胞を効率よく攻撃します。

【論文情報】

タイトル:ISWI/CHRAC orchestrates sequential chromatin-remodeling activities by mobilizing DNA polymerase ε for homologous recombination
著者:Jianghao Qian, Kozo Tanaka, Akira Yasui and Ayako Ui*(*責任著者)
*責任著者:東北大学 加齢医学研究所 准教授 宇井彩子
掲載誌:Communication Biology
DOI:https://doi.org/10.1038/s42003-026-10862-0

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学 加齢医学研究所
准教授 宇井彩子
TEL: 022-717-8469
Email: ayako.ui.c7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学加齢医学研究所
広報情報室
TEL: 022-717-8443
Email: ida-pr-office*grp.tohoku.ac.jp (*を@に置き換えてください)

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