2026年 | プレスリリース・研究成果
上部尿路(腎盂・尿管)がん術後の膀胱内再発予防にピラルビシン膀注療法が有効であることを証明
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科 教授 伊藤明宏
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 上部尿路(腎盂・尿管)がんでは、手術(腎尿管全摘除術)後に膀胱内でがんが再発することが2~5割に認められますが、これまで有効な再発予防法は確立しておらず、経過観察が標準治療でした。
- 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、上部尿路がん術後の膀胱内再発を予防する標準治療を確立するため、術後経過観察と術後24時間以内にピラルビシンを膀胱内に1回投与する治療(ピラルビシン膀注療法)を比較するランダム化比較試験を行いました。
- 本試験の結果、ピラルビシン膀注療法により無再発生存期間が延長することが示されました。ピラルビシン膀注療法は、膀胱がんの術後再発予防では標準治療として行われていますが、本試験により上部尿路がんの術後再発予防においても有効であることが示されました。
- 本研究成果は、上部尿路がんにおける標準治療に関する知見を示すものとして、医学雑誌「The Lancet Oncology」に掲載されました。
【概要】
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(所在地:東京都中央区、病院長:瀬戸 泰之)が中央支援機構(データセンター/運営事務局)を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG(ジェイコグ))では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として推奨すべき最善の治療である標準治療や診断方法等を確立するため、専門別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施しています。
このたび、JCOG泌尿器科腫瘍グループでは、上部尿路(腎盂・尿管)がん注1の患者さんを対象に、腎尿管全摘除術後のピラルビシン膀胱内注入療法注2(以下、ピラルビシン膀注療法)の有効性を検証する国内多施設によるランダム化比較第Ⅲ相試験を実施しました。
上部尿路がんでは、がんが生じた側の腎臓から尿管までを切除する腎尿管全摘除術が標準治療として行われますが、手術後2年以内に膀胱内でがんが再発することが2~5割に認められています。これは、腎盂・尿管に生じたがん細胞が、尿によって膀胱に運ばれ生着し、増殖することが原因と考えられていますが、有効な再発予防法は確立されていませんでした。
そこで本試験では、臨床病期0期からIII期と診断された上部尿路がんの患者さんを対象に、腎尿管全摘除術後に、これまでの標準治療である経過観察と、手術後24時間以内のピラルビシン膀注療法を比較し、追跡期間を3年間として無再発生存期間注3(膀胱内再発および遠隔転移がなく生存している期間)を評価しました。
本試験の結果、ピラルビシン膀注療法を行った患者さんでは、経過観察を行った患者さんと比べて無再発生存期間が延長し、腎尿管全摘除術後の再発予防に有効であることが示されました。副作用としては血尿などが認められましたが、いずれも一過性で、その後回復したことから、許容可能な範囲であると判断されました。
本研究成果は、世界的に権威のある学術雑誌「The Lancet Oncology」に2026年7月10日付で掲載されました。
JCOGでは、がん患者さんにとっての最善の医療を確立するための臨床試験を今後も行ってまいります。

【用語解説】
注1 上部尿路(腎盂・尿管)がん
腎で生成された尿は、腎から出て腎盂および尿管へと流れて膀胱に到達し、膀胱から尿道を通して体外に排泄されます。この腎盂および尿管に発生するがんを上部尿路がんと呼びます。
注2 ピラルビシン膀胱内注入療法
抗がん剤を膀胱内に注入する治療法です。膀胱がんの手術後に膀注療法を行うことで、膀胱がんの再発を抑えることが知られており、膀胱がんの手術後の再発予防目的の標準治療として行われています。
注3 無再発生存期間
この試験の二次登録日から、患者さんが再発なく生存している期間です
【論文情報】
タイトル:Single, early intravesical instillation of pirarubicin in the prevention of bladder recurrence after radical nephroureterectomy for upper tract urothelial carcinoma (JCOG1403): a multicentre, open-label, randomised, phase 3 trial
著者: Akihiro Ito, Yoichi Arai, Yoshiyuki Kakehi, Masayuki Yokoyama, Keita Sasaki, Motohide Uemura, Atsushi Takahashi, Kazuo Nishimura, Takashi Kawahara, Hitoshi Masuda, Koji Yoshimura, Takashi Kobayashi, Masatoshi Eto, Tsukasa Igawa, Naotaka Nishiyama, Takanori Mochizuki, Akira Yokomizo, Makito Miyake, Tomohiko Ichikawa, Katsuyoshi Hashine, Takuma Sato, Mikio Sugimoto, Hiroyuki Nishiyama, Hiroshi Kitamura, on behalf of the Urologic Oncology Study Group of the Japan Clinical Oncology Group
掲載誌:The Lancet Oncology
DOI:10.1016/S1470-2045(26)00130-0
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科
泌尿器科学分野 伊藤 明宏
電話番号:022-717-7278
Eメール:akihiro.ito.c5*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
電話番号:022-717-8032
Eメール:press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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