2026年 | プレスリリース・研究成果
世界に先駆け、ナノポーラスβ-SiCを低温作製 ―金属溶湯脱成分法で三次元ナノプレート構造を実現―
【本学研究者情報】
〇金属材料研究所 教授 加藤秀実
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 金属溶湯脱成分法(Liquid Metal Dealloying: LMD)(注1)を用いて、ナノポーラス(注2)β-SiC(注3)の作製に成功しました。
- 従来の高温SiC合成プロセスと比べて大幅に低い1073 K(800 ℃)で、ナノプレートが三次元的に連結した結晶性β-SiCを形成しました。
- 前駆体の層状結晶構造がナノプレート形成に影響した可能性があり、LMDを共有結合性セラミックス(注4)の創製へ展開する新しい材料プロセスとして期待されます。
【概要】
炭化ケイ素(SiC)は、優れた耐熱性および化学的安定性を有するセラミックスです。中でもβ-SiCは、半導体・電子材料、触媒、エネルギー貯蔵材料など、幅広い分野への応用が期待されています。一方、SiCの合成には一般に高温処理が必要であり、ナノスケールの多孔質構造を同時に形成・制御することは非常に困難です。
東北大学金属材料研究所の卞筱(Bian, Xiao)学術研究員(研究当時、同大学大学院工学研究科博士課程学生)、和田武准教授、加藤秀実教授らの研究グループは、溶融金属を利用して特定の元素を取り除く「金属溶湯脱成分法」(Liquid Metal Dealloying: LMD)をSiCの作製に適用し、従来のナノ構造SiCの作製で用いられる1200 ℃以上の高温域に比べて大幅に低い800 ℃で、ナノメートルサイズの薄い板状構造(ナノプレート)が三次元的に連結したナノポーラスβ-SiCの形成に成功しました。本研究は、これまで主に金属・金属間化合物・半金属などに適用されてきたLMDの適用範囲を、共有結合性セラミックスへ拡張する成果です。今後、前駆体の層状結晶構造とナノプレートの成長・結晶方位との関係を明らかにすることで、ナノポーラスセラミックスの構造制御へつながることが期待されます。
本研究成果は、2026年9月4日に無機材料の構造・特性に関する国際専門誌Scripta Materialiaにオンライン掲載されました。
図1. 金属溶湯脱成分法によるナノポーラスβ-SiCの作製と構造形成の概念図。Mn5SiCからMnを選択的に除去することで、三次元的に連結したナノプレート構造を有するβ-SiCが形成されます。
【用語解説】
注1. 金属溶湯脱成分法(Liquid Metal Dealloying: LMD)
二種類以上の元素からなる固体前駆体を溶融金属に浸漬し、特定の元素のみを選択的に溶出させ、残された成分から多孔質構造を形成する手法。
2010 年に東北大学金属材料研究所加藤、和田らによって発明された。
注2. ナノポーラス
ナノメートルスケールの細孔や骨格を有する多孔質材料。
注3. β-SiC
炭化ケイ素(SiC)の結晶多形の一つで、立方晶構造を有する。
注4. 共有結合性セラミックス
原子間の強い共有結合によって構成されるセラミックス材料。SiCはその代表例の一つ。
【論文情報】
タイトル:Liquid Metal Dealloying Enables Low-Temperature Synthesis of Nanoporous β-SiC with an Interconnected Nanoplate Network
著者: Xiao Bian, Takeshi Wada, Hongyi Li, Ruirui Song, Mikihisa Fukuda, Nana Murata, Tetsu Ichitsubo and Hidemi Kato *
*責任著者:東北大学金属材料研究所 教授 加藤秀実
掲載誌:Scripta Materialia
DOI:10.1016/j.scriptamat.2026.117570
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学金属材料研究所
教授 加藤秀実
TEL: 022-215-2110
Email: hidemi.kato.b7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学金属材料研究所
情報企画室広報班
TEL: 022-215-2144
Email: press.imr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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