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極端紫外(EUV)放射光の後方コンプトン散乱による高エネルギーガンマ線ビーム生成を世界初観測

【本学研究者情報】

〇先端量子ビーム科学研究センター 助教 宮部学
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 極端紫外(EUV)(注1)領域の放射光を電子加速器へ再入射する高エネルギーのガンマ線ビームを得る新光源を世界に先駆けて開発することに成功しました。
  • 今後、世界中で建設が進む放射光施設において応用が見込まれます。

【概要】

GeV エネルギー領域の高偏極ガンマ線ビームを生成する手法には、コンプトン散乱の他、ダイヤモンドの薄板に電子ビームを通過させてコヒーレント制動放射を起こす方法もあり、主にアメリカやドイツでハドロン光生成実験に供されています。

東北大学先端量子ビーム科学研究センターの村松憲仁特任教授(現:中国科学院近代物理研究所教授)らの研究グループは、極端紫外(EUV)領域の放射光を多層膜ミラー(注2)で反転反射して電子加速器(放射光を発生する電子蓄積リング(注3)) へ再入射する画期的な方法を実現し、この極端紫外光と電子の後方コンプトン散乱(図1)によって高エネルギーガンマ線ビームを生成する新光源の開発に成功しました。本研究では兵庫県立大学高度産業科学技術研究所が運用する放射光施設ニュースバルにおける実証実験で、この手法によるガンマ線ビームの生成を世界で初めて観測しました。今後世界中で建設が進む第4世代の放射光施設(注4)で電子加速器のエネルギーに迫る高エネルギーガンマ線ビームを生成する道筋を開拓しました。開発した新光源は、素粒子クォークで構成された基本粒子ハドロン(注5)の研究など、基礎科学の発展に貢献します。

本研究成果は、2026年9月11日に物理学分野の専門誌 Progress of Theoretical and Experimental Physicsに掲載されました。

図 1. 後方コンプトン散乱の概念図。電子と正面衝突する入射光(光子) がエネルギー増幅されて後方(図右側)へ散乱される。

【用語解説】

注1. 極端紫外(EUV):電磁波(光)の一種で波長が10~121 nmのものを指す。英語ではextreme ultraviolet (EUV)と表示される。近年は半導体製造工程で重要な役割を担っている。これよりエネルギーの高い(波長の短い)光は、順に軟X線、硬X線、ガンマ線と呼ばれ、逆にエネルギーが低く(波長が長く)なるにつれて真空紫外線、深紫外線、紫外線、可視光線、赤外線、・・・と呼称が変わる。

注2. 多層膜ミラー:屈折率の違う薄膜を何層も重ねて光の干渉を起こし、特定の波長成分のみ強く反射させる鏡。本研究では、超高精度に研磨したシリコン基板の上に、モリブデンとシリコンの薄膜(厚さ数nm)を交互に積層することを40回繰り返した構造の多層膜ミラーを製作した。

注3. 電子蓄積リング:放射光施設では、電子を一定のエネルギーまで加速し、電磁石を並べた円形の加速器内へ補充・蓄積することで、長時間に渡り高エネルギー電子を周回させる。電子の進行方向が曲がる箇所で放射光が発生する。

注4. 第4世代の放射光施設:放射光の輝度を従来の100倍以上に引き上げるため、蓄積する電子の空間的・角度的拡がりを極めて小さく絞った次世代の放射光用加速器施設。日本では、NanoTerasuやSPring-8-IIがこれに相当する。

注5. ハドロン:現在の冷えた宇宙ではクォークが単独で存在できないため、複数のクォークが集まって成り立っている粒子の総称。一般的には、3個のクォークが集まった陽子や中性子の仲間と、クォーク・反クォークが結びついた中間子の2つに大別される。近年では、4個以上のクォークが集まったエキゾチック・ハドロンが見つかり、注目を浴びている。

【論文情報】

タイトル:First observation of the γ-ray beam production by the backward Compton scattering of reflected synchrotron radiation in the extreme ultraviolet range
著者名: N. Muramatsu, M. Miyabe, M. Okabe, S. Daté, T. Harada, K. Kanda, S. Miyamoto, H. Ohkuma, H. Shimizu, S. Suzuki, and A. Tokiyasu
*責任著者:村松憲仁 東北大学先端量子ビーム科学研究センター教授(現:中国科学院近代物理研究所教授)
掲載誌:Progress of Theoretical and Experimental Physics
DOI: 10.1093/ptep/ptag139

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学先端量子ビーム科学研究センター
助教 宮部 学(みやべ まなぶ)
TEL:022-743-3435
Email:miyabe*raris.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)