2026年 | プレスリリース・研究成果
太陽光で充電する「光蓄電池」の新設計を確立 ―従来法よりも高い約1 Vの光電圧を実現―
【本学研究者情報】
〇学際科学フロンティア研究所 助教 下川航平
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 発電と蓄電を一体化した「光蓄電池」(注1)において、従来の課題である電荷再結合(注2)を抑制して約1 Vの光電圧(注3)を実現しました。
- 電極の層構造化により電荷の輸送経路を制御することで、光エネルギー変換の熱損失(注4)を低減できることを明らかにしました。
- 外部電源を必要としない小型IoTデバイス(注5)や自律型センサーの電源実現に向けた、光蓄電池の基礎的な設計指針を確立しました。
【概要】
持続可能社会の実現に向けて、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換して蓄える一体型デバイスである「光蓄電池」の開発が期待されています。従来の研究では、光吸収材料と蓄電材料を物理的に混合した電極(混合型)が広く用いられていましたが、電極内部の電荷再結合により熱損失が生じ、発生する光電圧が顕著に制限されるという課題がありました。
東北大学学際科学フロンティア研究所(金属材料研究所兼務)の下川航平助教らの研究グループは、英国ケンブリッジ大学との国際共同研究により、光蓄電池の電極構造に着目した設計アプローチを検証しました。具体的には、水系亜鉛電池(注6)を対象にして、光吸収を担う層や蓄電を担う層などを分離して重ね合わせた積層型の光電極を構築しました。これにより、電荷の輸送経路を制御して熱損失を抑制し、疑似太陽光の照射下において約1 Vの高い光電圧が得られることを実証しました。提案した基本構造は、今後の開発が期待される自律型の小型電源等の設計指針になると期待されます。
本成果は、2026年10月13日(日本時間)に米国学術誌Nano Lettersにオンライン掲載されました。
図1. 本研究で構築した積層型光電極を用いた光蓄電池。
【用語解説】
注1. 光蓄電池:光を電気エネルギーに変換する発電と、それを化学エネルギーとして蓄える蓄電を、単一デバイス内に統合したシステム。
注2. 電荷再結合:光照射によって生成した電子と正孔が電気エネルギーとして取り出される前に再び結合して消滅する現象。発生電圧や変換効率の低下原因となる。
注3. 光電圧:光照射によって材料や電極の内部で電子と正孔が分離されることで発生する電位差。
注4. 熱損失:吸収した光エネルギーが電気的なエネルギーに変換されず、熱として逃げてしまう現象。
注5. IoTデバイス:身の回りのモノに通信機能を搭載して、インターネット経由で各種データの収集や遠隔操作を行うスマート機器。
注6. 水系亜鉛電池:電解液に水溶液、負極に金属亜鉛を用いる二次電池。可燃性有機溶媒を使用しないため、安全性が高く安価な電池として研究が進められている。
【論文情報】
タイトル:Photobattery Architectures to Suppress Charge Recombination
著者:Kohei Shimokawa*, Byung-Man Kim, Arvind Pujari, Hooman Abbasi, Tetsu Ichitsubo, Michael De Volder*
*責任著者:東北大学 学際科学フロンティア研究所 助教 下川 航平
掲載誌:Nano Letters
DOI:10.1021/acs.nanolett.6c02373
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
新領域創成研究部
東北大学金属材料研究所
先端・萌芽研究部門
助教 下川 航平
Email: kohei.shimokawa.b7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学学際科学フロンティア研究所
企画部 広報担当
Email: fris-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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