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太古の火星で生命材料分子の原料が届く場所を可視化 ―水蒸気と雨がホルムアルデヒドの供給を左右―

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科地球物理学専攻 客員研究員 小山俊吾
大学院理学研究科地球物理学専攻 教授 寺田直樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 約38-36億年前の温暖な火星を対象に、光化学モデル(注1)と全球気候モデル(注2)を組み合わせて解析し、その結果、生命材料分子の原料となるホルムアルデヒドが大気から地表へ運ばれる量の全球分布を明らかにしました。
  • 地表への供給量は水蒸気量と降水に強く左右され、北半球では南半球より数倍多く、タルシスやエリシウムなどの山岳周辺では全球平均の約10倍に達することが分かりました。
  • 水が豊富だった地域の周辺にある盆地は、供給されたホルムアルデヒドが集まりやすく、糖などの有機物が作られた可能性を調べる将来の火星探査候補地になると期待されます。

【概要】

ホルムアルデヒド(化学式:H2CO)は、水中の化学反応を通じて糖やアミノ酸などの生命材料分子につながり得る重要な分子です。これまでの研究から、温暖だった太古の火星大気で生成され得ることは示されていましたが、火星のどこで、どれほど地表へ届いたのか、は分かっていませんでした。

東北大学大学院理学研究科の小山俊吾 研究員(研究当時、現:(本所属)東京科学大学理学院 研究員、(兼務)東北大学大学院理学研究科 客員研究員)、東京科学大学地球生命研究所の鎌田有紘 研究員、東北大学大学院理学研究科の寺田直樹 教授らの国際研究グループは、大気中でのホルムアルデヒド生成を計算する光化学モデルと、火星全体の気候を再現する全球気候モデルを組み合わせました。その結果、水蒸気が多く雨が降りやすい地域ほど、ホルムアルデヒドが作られ、雨と共に地表へ運ばれやすいことを明らかにしました。供給量は北半球で南半球より数倍多く、山岳地帯では地形による上昇気流で雨が生じるため、局地的な集中域が形成されました。特に湿潤地域の周辺にある盆地では、大気から運ばれたホルムアルデヒドが河川等で集まり、蒸発によって濃縮されて有機物合成が進んだ可能性があります。こうした地域は、火星で生命につながる化学進化が起きたかを検証する将来の探査候補地として注目されます。

本研究成果は、2026年9月30日23時(日本時間)に科学誌The Planetary Science Journalに掲載されました。

図1. 太古火星の大気ホルムアルデヒド地表供給量分布(現在地形へのマッピング)

【用語解説】

注1. 光化学モデル:大気中の化学反応を考慮し、各分子種の密度を計算する数値モデル。

注2. 全球気候モデル:大気の動きや水の循環を物理法則に基づいて計算し、惑星全体の気候とその変化を再現する数値モデル。

【論文情報】

タイトル:Global distribution of atmospheric formaldehyde deposition correlated with water vapor on a warm early Mars
著者: Shungo Koyama*, Arihiro Kamada, Naoki Terada, Yoshihiro Furukawa, Tatsuya Yoshida, Yuki Nakamura, Takeshi Kuroda, Ann Carine Vandaele, and Shohei Aoki
*責任著者:東北大学大学院理学研究科 小山俊吾 研究員(研究当時、現:(本所属)東京科学大学理学院 研究員、(兼務)東北大学大学院理学研究科 客員研究員)
掲載誌:The Planetary Science Journal
DOI:10.3847/PSJ/ae9942

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
客員研究員 小山 俊吾(こやま しゅんご)
Email:koyama*eps.sci.isct.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
教授 寺田 直樹(てらだ なおき)
TEL:022-795- 6734
Email:teradan*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)