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肥満症が胃噴門部腺がんを進展させる仕組みを発見 ―PPAR-δが新たな胃がん予防・治療標的となる可能性―

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科 講師 宇野要
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 肥満症が胃噴門部腺がん(注1)を進展させる機序として、腸内環境異常によるプログラム細胞死(注2)(フェロトーシス(注3)) の抑制が重要な役割を果たすことが、マウスを用いた研究で明らかになりました。
  • 脂質代謝関連因子であるPPAR-δ(注4)を抑制すると、肥満症の増悪と腸内細菌叢異常が悪化しました。さらに酸化ストレス応答を担うタンパク質NRF2(注5)の活性化を介して胃がん細胞のフェロトーシス抑制タンパク質GPx4(注6)発現が増加し、フェロトーシスが抑制されました。
  • 肥満症に伴う腸内細菌叢(注7)やその代謝産物の変化が胃噴門部腺がんの進展に関与することが明らかとなり、生活習慣病予防戦略による腸内環境改善が胃噴門部腺がんの新たな予防法につながる可能性があります。

【概要】

食生活の欧米化に伴い、胃噴門部腺がんは増加しています。近年、肥満症と胃噴門部腺がんとの関連性が注目されていますが、両者をつなぐ機序は明らかではありません。

東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野・ヘルススパン研究センターの正宗 淳教授、消化器病態学分野の宇野 要講師、田邊 瑞樹大学院生(研究当時)、東北メディカル・メガバンク機構分子血液学分野の清水 律子教授、生体分子解析分野の小柴 生造教授、地域口腔健康科学分野の玉原 亨講師らの研究グループは、マウスを用いた研究により、脂質代謝関連因子PPAR-δ抑制による肥満症の増悪が腸内細菌叢やその代謝産物を変化させ、NRF2が活性化することで胃噴門部腺がん細胞においてフェロトーシスを抑制し、胃がん進展を促進することを発見しました。本研究成果は、生活習慣病の予防戦略による腸内環境の改善が、胃噴門部腺がんの新たな予防・治療法につながる可能性を示すものです。

本研究成果は2026年9月28日に米国の学術誌Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology(CMGH誌)に掲載されました。

図1. 肥満症にともなう腸内環境異常が胃噴門部腺がんを進展させる 高脂肪食摂取と脂質代謝関連因子PPAR-δ拮抗薬GSK3787併用は腸内細菌叢異常や腸管粘膜傷害を惹起し、異常な腸内細菌叢およびその代謝産物を循環血液中に漏洩させます。胃がん細胞に GPx4発現を誘導することで鉄依存性細胞死(フェロトーシス)を抑制し、胃噴門部腺がんを進展させる可能性があります。

【用語解説】

注1. 胃噴門部腺がん:食道と胃との接合部に発生する腺がんで、近年増加しています。食道の重層扁平上皮組織から胃の単層円柱上皮組織へとつながる食道と胃の接合部は、胃食道逆流を防ぐ括約筋で内腔が調整されているため、内視鏡による詳細観察が困難なことがあります。

注2. プログラム細胞死:細胞内の特定の遺伝子の働きにより制御される細胞死の総称です。生体にとって不要または有害な細胞を計画的に死滅させることで生体の恒常性を維持しています。代表的なものにアポトーシスがあります。

注3. フェロトーシス:近年新しく提唱されたプログラム細胞死の一種であり、鉄依存的な脂質過酸化物の蓄積により引き起こされ、「がん」をはじめとするさまざまな疾患の発症や進展との関連が注目されています。

注4. PPAR-δ:ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体-δは、脂質代謝・エネルギー代謝などを調節する転写因子です。肥満症や代謝異常の治療標的として注目されています。

注5. NRF2:酸化ストレスに応答して活性化することで抗酸化作用を高める転写因子です。

注6. GPx4:グルタチオンペルオキシダーゼ4は、細胞膜に生じる脂質の過酸化を抑える抗酸化酵素です。脂質過酸化物の除去によりフェロトーシスを抑制する役割を担っています。

注7. 腸内細菌叢:腸内に生息している多種多様な細菌の集まりのことで 1,000 種類以上存在しており、腸内環境を整える"善玉菌"、毒性のある代謝産物により腸内環境を悪化させる"悪玉菌"などがあります。最近、腸内細菌叢の構成や機能変化が肥満をはじめとする生活習慣病やさまざまな病気と関連することが明らかになっています。

【論文情報】

タイトル:Ferroptosis regulates metabolic inflammation-driven tumorigenesis in obesity-related gastric cancer
著者:田邊瑞樹、宇野要*、玉原亨、浅野直喜、小柴生造、草野啓介、小笠原光矢、皆瀨ゆみ子、齊藤真弘、小池智幸、清水律子、正宗淳
*責任著者:東北大学医学系研究科・消化器病態学分野、消化器医療イノベーション推進寄附講座、講師 宇野要
掲載誌: Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology(CMGH)
DOI:10.1016/j.jcmgh.2026.101900
※2026年10月1日14時30分頃に掲載誌名を修正しました。

詳細(プレスリリース本文)PDF
※2026年10月1日14時30分頃に注釈番号を修正しました。

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・消化器病態学分野
消化器医療イノベーション推進寄附講座
講師 宇野 要(うの かなめ)
TEL: 022-717-7171
Email: kaname.uno.c3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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