2026年 | プレスリリース・研究成果
学校防災を「学校」から「地域」へ ―全国教育委員会調査から見えた地域理解とGIS活用の課題―
【本学研究者情報】
〇災害科学国際研究所 教授 佐藤健
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 全国の教育委員会を対象としたアンケート調査により、学校防災における地域特性の把握や地理情報システム(GIS)(注1)の活用の実態を明らかにしました。
- 学校防災では、学校を中心とした安全管理と、通学区域全体に広がる災害リスクとの間に「空間的ミスマッチ」が存在することを示しました。
- 大川小学校津波訴訟判決(注2)等を契機に、地域特性を踏まえた学校防災が政策的に重視されてきましたが、国の「第3次学校安全の推進に関する計画」(注3)が最終年度を迎えるなか、その具体的な実践や支援体制にはなお課題があることを明らかにしました。
【概要】
東京大学大学院情報学環の小田隆史准教授らの研究グループは、全国の教育委員会を対象に、学校防災における地域特性の把握と地理情報システム(GIS)の活用実態に関するアンケートを実施しました。全国規模で実態を明らかにした調査は、これまでほとんどありません。
東日本大震災での大川小学校事故等を受け、地域の特性に応じた学校防災の重要性が高まっていますが、その全国的な実態は不明確でした。調査の結果、学校防災において、校内や周辺のハザード情報は重視される一方、通学圏全体の災害リスクへの着目は限定的であることが判明しました。これにより、学校単位の安全管理と地域全体の災害リスクとの間に「空間的ミスマッチ」が生じている実態が浮き彫りとなりました。
また、GISの活用や地域特性を反映した防災体制の整備には依然として課題があることも示されました。この結果は、Progress in Disaster Science誌(2026年10月号)に掲載されました。
本研究の知見は、学校防災の視点を「学校」から「地域」へと広げ、地域特性に即した学校防災政策や実践を検討するための基礎的知見となり、今後策定される「第4次学校安全の推進に関する計画」においても、こうした課題を踏まえた検討が期待されます。
図1 学校防災において把握・反映が求められている地域特性
【用語解説】
(注1)地理情報システム(GIS):緯度・経度などの位置情報をもとに、電子地図上にさまざまな情報を重ね合わせ、地域の特徴や空間的な関係を表示・分析するためのシステム。本研究では、「地理院地図」や「重ねるハザードマップ」などのWeb-GISを含め、学校防災における地理情報の活用状況を調査した。
(注2)大川小学校津波訴訟判決: 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震に伴う津波により、宮城県石巻市立大川小学校で、学校管理下にあった児童74名、教職員10名が犠牲となった。児童の遺族が提起した津波訴訟では、学校防災体制の不備が問われた。仙台高等裁判所の判決は、2019年に最高裁判所が上告を棄却したことにより、原告の勝訴が確定した。
(注3)第3次学校安全の推進に関する計画:学校保健安全法に基づき、国が2022年度から5年間の学校安全施策の基本的な方向性を示した計画。2026年度が最終年度にあたる。学校や地域の実情を踏まえた安全対策や、地域の関係機関等との連携などを重視している。
【論文情報】
タイトル:Spatial Mismatch in School Disaster Risk Reduction:
Insights from a Nationwide Survey in Japan
著者:Takashi Oda, Ryo Saito, Yoshiyuki Murayama, Takeshi Sato, Aiko Sakurai, Toshimitsu Nagata,
& Shinya Morimoto
掲載誌:Progress in Disaster Science, Volume 31 (October 2026)
DOI:10.1016/j.pdisas.2026.100693
問い合わせ先
東北大学防災教育実践学分野
教授 佐藤 健(さとう たけし)
Email: takeshi.sato.c2*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学災害科学国際研究所 広報室
TEL: 022-752-2049
Email: irides-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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