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自然免疫を標的とした慢性腎臓病の新たな治療アプローチに繋がる可能性 ―既承認薬ジスルフィラムによる腎線維化抑制作用を示唆―

【本学研究者情報】

〇大学院医学系研究科 講師 大江佑治
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • アルコール依存症治療の既承認薬であるジスルフィラムが、マウス慢性腎臓病(CKD)(注1)モデルにおける腎障害や腎線維化を軽減することを確認しました。
  • ジスルフィラムの投与により、炎症・インフラマソーム(注2)・パイロトーシス(注3)関連分子と、腎障害に伴う脂肪酸代謝(注4)関連遺伝子発現の変化が改善しました。
  • ヒトCKD腎生検組織(注5)において、ガスダーミンD(注6)の活性化と腎障害の程度との関連を確認しました。
  • 自然免疫(注7)応答やパイロトーシスを標的とした慢性腎臓病の新たな治療アプローチにつながる可能性を示唆しています。

【概要】

慢性腎臓病(CKD)は、進行すると末期腎不全に至る可能性があり、CKDの進行を抑制するための治療薬はありますが、腎障害の進展に関わる新たな病態メカニズムを標的とした治療法の開発が求められています。

東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野の大江佑治講師、金沙織大学院生、田中哲洋教授らの研究グループは、アルコール依存症の治療に用いられている既承認薬ジスルフィラムが、マウス慢性腎臓病(CKD)モデルにおいて腎障害や腎線維化を抑制する可能性があることを明らかにしました。ジスルフィラム投与により、インフラマソームやパイロトーシス関連分子の発現上昇が抑制され、腎組織への炎症性細胞の浸潤も軽減しました。また、脂肪酸代謝関連遺伝子の発現異常も改善しました。さらに、ヒトCKD腎生検組織では、パイロトーシス関連因子ガスダーミンDの活性化と腎障害との関連を確認しました。本研究は、CKDにおける自然免疫を標的とした新たな治療アプローチの基礎的知見となることが期待されます。なお、本研究は主に動物モデルを用いた基礎研究であり、ジスルフィラムのCKD患者に対する有効性や、病態進行段階による効果の違いについては、今後の検討が必要です。

本研究成果は、2026年9月17日に国際学術誌The FASEB Journalに掲載されました。

図1. ジスルフィラムは、過剰な自然免疫応答を抑制するとともに脂肪酸代謝を改善し、アデニン誘発性腎症を軽減した。

【用語解説】

注1. 慢性腎臓病(CKD):腎臓の働きが長期間にわたって低下したり、腎臓に異常が続いたりする状態。日本では成人の約5人に1人にみられる身近な病気。

注2. インフラマソーム:細胞の中にある免疫反応の仕組みの一つで、異常や傷害を感知すると活性化し、炎症を引き起こす物質の産生を促す。

注3. パイロト―シス:強い炎症を伴って起こる細胞死の一種で、細胞が破裂して内容物を放出することで、周囲に強い炎症反応を引き起こす。

注4. 脂肪酸代謝:脂肪酸を分解してエネルギーを作ったり、細胞の構成成分として利用したりする仕組み。腎臓では脂肪酸をエネルギー源として利用しており、CKDでは脂肪酸代謝が低下すると、エネルギー不足や脂質の蓄積などを通じて腎障害が進行する。

注5. ヒトCKD腎生検組織:CKD患者の腎臓の一部を採取し、顕微鏡などで腎臓の状態を調べた組織。

注6. ガスダーミンD:過剰な炎症が起きた際に活性化され,細胞を壊して炎症をさらに引き起こすタンパク質。

注7. 自然免疫:病原体や細胞の傷害などをいち早く感知し、体を守るために起こる免疫反応。過剰に活性化すると、炎症を引き起こし、組織を傷つける。

【論文情報】

タイトル:Disulfiram Attenuates Adenine-Induced Renal Fibrosis by Modulating Inflammatory and Immunometabolic Responses
著者:Saori Kin, Yuji Oe*, Shun Ishigaki, Ichiro Fujio, Mariko Miyazaki, Tetsuhiro Tanaka
*責任著者:東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野 講師 大江 佑治
掲載誌:The FASEB Journal
DOI:10.1096/fj.202601271RR

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科腎臓内科学分野
講師 大江 佑治(おおえ ゆうじ)
TEL: 022-717-7163
Email: yuji.oe.b3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
東北大学病院広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)