2026年 | プレスリリース・研究成果
高血圧の原因病変を探るPET検査薬候補を開発 ―患者の負担を減らす画像診断へ―
【本学研究者情報】
〇先端量子ビーム科学研究センター 教授 古本祥三
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 高血圧の原因病変を捉えるため、構造のよく似た2種類の副腎(注1)酵素を見分ける性能を重視して、PET(陽電子放出断層撮影)検査(注2)薬候補[18F]ApaScan(アパスキャン)を開発しました。
- ヒトの摘出組織で、ホルモンを過剰に作る病変への結合量は正常な副腎組織の約18倍となり、病変に対する高い選択性を示しました。
- 今後、分子レベルの検証と臨床研究を通じてアルドステロン合成酵素の特異的な画像化を実現し、検査の負担軽減と適切な治療法の選択につなげることを目指します。
【概要】
原発性アルドステロン症(注3)など、副腎の病変によって起こる高血圧では、ホルモンが過剰に作られている場所を突き止めることが、適切な治療法の選択につながります。東北大学大学院薬学研究科の清水悠暉大学院生、東北大学病院の山﨑有人講師、手塚雄太助教、大学院医学系研究科の高瀬圭教授、先端量子ビーム科学研究センターの古本祥三教授らは、体の外から分子の分布を調べるPET検査の薬剤候補として、アルドステロン合成酵素を標的とする[18F]ApaScanを開発しました。この酵素と、構造のよく似た別の副腎酵素を見分けられるよう、化学構造と結合性の関係を調べて最適な候補を選び、ヒトの摘出組織で病変に対する高い選択性を確認しました。今後は分子レベルの検証と臨床研究を進めます。
本成果は、2026年10月8日に米国化学会の学術誌Journal of Medicinal Chemistryのオンライン速報版(ASAP)に掲載されました。
図1. PET検査薬候補[18F]ApaScanの化学構造、および正常な副腎皮質における酵素の分布と薬剤の結合。(A)[18F]ApaScanの化学構造式。(B)左の画像2枚は免疫染色によるCYP11B1、CYP11B2の分布像です。右の画像2枚は既報の薬剤[18F]FETO(CYP11B1とCYP11B2の両方に結合する)と[18F]ApaScanの結合を表す放射線画像です。免疫染色像と両薬剤の放射線画像を比較すると、[18F]FETOはCYP11B1の多い束状帯を含む広い範囲に結合するのに対し、[18F]ApaScanはCYP11B2が分布する球状帯に沿って結合しているのがわかります。
【用語解説】
注1. 副腎:左右の腎臓の上にある小さな臓器で、血圧や代謝などを調節するホルモンを作る。
注2. PET(陽電子放出断層撮影)とフッ素18:PETは、微量の放射性薬剤を用い、標的分子の分布や代謝などを体外から高感度に調べる非侵襲的な検査法。フッ素18(18F)はPET薬剤の目印に使う放射性同位体。
注3. 原発性アルドステロン症とアルドステロン産生腺腫:原発性アルドステロン症は副腎がアルドステロンを過剰に作る病気である。その主な原因の一つで、アルドステロンを過剰に作る副腎の良性腫瘍をアルドステロン産生腺腫と呼ぶ。
【論文情報】
タイトル:[18F]ApaScan: A 2-Pyridinylbenzimidazole PET Tracer with Highly Selective Binding to Human Aldosterone-Producing Adenoma Tissue
著者:Yuki Shimizu, Teruyuki Tanaka, Gesshu Takao, Toko Otaka, Yuto Yamazaki, Yuta Tezuka, Ryoma Hosaka, Yoshikiyo Ono, Yoshitaka Toyama, Ryuichi Harada, Ren Iwata, Fumitoshi Satoh, Hideki Katagiri, Tomohiro Kaneta, Takashi Suzuki, Kei Takase, Hironobu Sasano, Shozo Furumoto*
*責任著者:東北大学先端量子ビーム科学研究センター
教授 古本 祥三(ふるもと しょうぞう)
掲載誌:Journal of Medicinal Chemistry(ASAP)
DOI:10.1021/acs.jmedchem.6c01084
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学先端量子ビーム科学研究センター
教授 古本 祥三(ふるもと しょうぞう)
TEL:022-795-7801
Email:shozo.furumoto.b6*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)