2026年 | プレスリリース・研究成果
父親の高齢化が胎仔期の脳に与える影響に性差 ―マウスの雌胎仔で特異的な遺伝子発現変化を確認―
【本学研究者情報】
〇大学院医学系研究科 名誉教授/客員教授 大隅典子
大学院医学系研究科 講師 吉川貴子
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【発表のポイント】
- 父親の高齢化が、胎仔期の脳の遺伝子発現(注1)にどのような影響を与えるのかをマウスを用いて調べたところ、父親の年齢と胎仔の性別の両方が、胎仔脳の遺伝子発現に影響を及ぼしていることを明らかにしました。
- 特に、高齢の雄マウスに由来する雌の胎仔では、他の群とは異なる遺伝子発現パターンがみられ、全体的に遺伝子の発現が増加する傾向が示されました。
- 本研究成果は、父親の高齢化が妊娠初期の胎児の脳発達に及ぼす影響や、自閉スペクトラム症(ASD)(注2)にみられる性差の分子基盤を解明する手がかりとなることが期待されます。
【概要】
父親の年齢が高くなるほど子の自閉スペクトラム症(ASD)発症の可能性が高まることが疫学研究(注3)等から報告されていますが、そのメカニズムや子の性別によって影響の度合いが異なるかどうかは十分に解明されていません。
東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野の遠藤悠大学院生、吉川貴子講師、大隅典子名誉教授・客員教授らの研究チームは、若齢(3か月齢)および高齢(19か月齢)の雄マウスに由来する胎仔を用いて、胎齢14.5日(注4)の脳での遺伝子発現をRNAシーケンス(注5)により網羅的に解析しました。
その結果、胎仔期の脳の遺伝子発現パターンには、父親の月齢と胎仔の性別の双方が影響することが明らかになりました。特に、高齢の父親から生まれた雌の胎仔は、他の群とは異なる遺伝子発現パターンを示すことが分かりました。また、高齢の父親から生まれた雌の胎仔では、多くの遺伝子の発現が増加する傾向がみられ、父親の高齢化に対する脳の遺伝子発現応答が、胎仔の性別によって異なる可能性が示されました(図1)。本研究により、父親の高齢化は胎仔期の脳における遺伝子発現に影響を及ぼし、その影響は胎仔の性別によって異なる可能性が示されました。本研究で得られた胎仔期脳の遺伝子発現データは、父親の高齢化が妊娠初期の胎児の脳発達に及ぼす影響と、その性差を理解するための基盤となることが期待されます。
本研究成果は、2026年10月8日に国際科学誌Scientific Dataに掲載されました。
図1. 父親の高齢化に伴うマウス胎仔の脳の遺伝子発現変化と雌雄差
【用語解説】
注1. 遺伝子発現:DNAに保存された遺伝情報が読み取られ、RNAやタンパク質などの形で細胞の機能に利用されること。遺伝子発現の量やパターンが変化することで、細胞の性質や機能にも変化が生じる。
注2. 自閉スペクトラム症:社会的なコミュニケーションの難しさや強いこだわりを特徴とする神経発達症の一つ。
注3. 疫学研究:人々の集団を対象として、病気の発症頻度や健康状態と、年齢、生活環境、遺伝的要因などとの関連を調べる研究。
注4. 胎齢14.5日:交配後14.5日が経過したマウスの胎仔の発生段階。脳を含む各組織の発生が進み、神経細胞産生がもっとも盛んな時期にあたる。本研究では、この時期の胎仔脳を解析対象とした。
注5. RNAシーケンス:細胞や組織に含まれるRNAを網羅的に読み取り、どの遺伝子がどの程度発現しているかを調べる解析手法。多数の遺伝子の発現状態を一度に解析できる。
【論文情報】
タイトル:A Transcriptomic Dataset of Embryonic Mouse Telencephalon Revealing Sex-dependent Effects of Advanced Paternal Age
著者:Haruka Endo, Takako Kikkawa*, and Noriko Osumi*
*共同責任著者:
東北大学 大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野 講師 吉川貴子
東北大学 大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野 教授 大隅典子
掲載誌:Scientific Data
DOI:10.1038/s41597-026-08446-y
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野
名誉教授/客員教授 大隅典子(おおすみ のりこ)
TEL: 022-717-8203
Email: noriko.osumi.c7*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
講師 吉川貴子(きっかわ たかこ)
TEL: 022-717-8203
Email: takako.kikkawa.c4*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院医学系研究科・医学部広報室
TEL: 022-717-8032
Email: press.med*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)