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悪性脳腫瘍がセレンを「循環利用」する仕組みを解明 ―CCDC152-SeP-LRP8軸が抗酸化防御と腫瘍増殖を支える―

【本学研究者情報】

〇大学院薬学研究科 教授 斎藤芳郎
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 悪性脳腫瘍である膠芽腫(glioblastoma; GBM)(注1)が、セレン輸送タンパク質SePを自ら分泌し、受容体LRP8(注2)を介して再び取り込む「腫瘍関連SePサイクル」を形成することを明らかにしました。
  • 長鎖ノンコーディングRNA CCDC152(注3)がSePの産生とLRP8の発現を協調的に制御し、セレン依存的な抗酸化酵素GPX1・GPX4の維持、腫瘍細胞の増殖、細胞死に対する抵抗性を支えることを見いだしました。
  • CCDC152-SeP-LRP8軸を阻害することで、膠芽腫のセレン依存的な抗酸化防御を弱め、細胞死を誘導する新たな治療につながる可能性があります。

【概要】

東北大学大学院薬学研究科の斎藤芳郎教授らの研究グループは、悪性度の高い脳腫瘍である膠芽腫が、必須微量元素セレンを効率的に確保し、繰り返し利用する新たな仕組みを明らかにしました。セレンは、細胞を酸化ストレスから守る抗酸化セレン含有タンパク質の合成に必要な必須微量元素です。一方、増殖の速いがん細胞が、どのようにセレンを確保し、抗酸化機能を維持しているのかは十分に分かっていませんでした。本研究では、膠芽腫細胞がセレン輸送タンパク質SePを自ら産生して細胞外へ分泌し、それを受容体LRP8を介して再び取り込むことを明らかにしました。さらに、このセレン循環を上流から制御する因子CCDC152を同定しました。これらの結果から、CCDC152-SeP-LRP8軸が、膠芽腫におけるセレン利用と酸化ストレス防御を統合的に制御していることが示されました。本成果は、がん細胞が外部から栄養素を取り込むだけでなく、自ら分泌したセレン運搬タンパク質を再回収し、限られたセレンを循環利用するという新たながん代謝の仕組みを示すものです。

本成果は、2026年10月12日、学術誌 Redox Biology に掲載されました。

図1. 本研究の概要:膠芽腫におけるSeP循環利用機構の模式図。

【用語解説】

注1. 膠芽腫(glioblastoma; GBM):成人に発生する代表的な悪性脳腫瘍の一つで、現在のWHO分類ではglioblastoma, IDH-wildtypeに分類される。

注2. LRP8(ApoER2):SePを細胞内へ取り込む受容体。特に脳や精巣へのセレン供給に重要。

注3. CCDC152(L-IST):タンパク質をコードしない長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)。これまで肝細胞ではSeP翻訳を抑制する因子として知られていたが、本研究では膠芽腫においてSePとLRP8を正に制御することが示された。

【論文情報】

タイトル:LncRNA CCDC152 coordinates a tumor-associated selenoprotein P cycle that sustains selenium-dependent redox homeostasis in glioblastoma
著者:Stephanie Siu, Hiroki Taguchi, Xi Zheng, Hikari Sugiura, Shota Yamashita, Tatsuya Takahashi, Masato Kosuge, Takayuki Kaneko, Misaki Shimizu, Yoshiteru Shimoda, Kota Noritsugu, Kotoko Arisawa, Mika Watanabe, Takashi Toyama, Masayuki Kanamori, Hidenori Endo, Yoshiro Saito*
*責任著者:東北大学大学院薬学研究科 教授 斎藤芳郎
掲載誌:Redox Biology
DOI:10.1016/j.redox.2026.104438

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
教授 斎藤芳郎
TEL:022−795−6870
Email: Yoshiro.saito.a8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院薬学研究科
総務係
TEL: 022-795-6801
Email: ph-som*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)