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低炭素製鉄プロセスの新しい予測技術 ―X線CTと粒子法を融合した、鉄鉱石の「強さ」を逆推定―

【本学研究者情報】

〇多元物質科学研究所 准教授 夏井俊悟
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 高炉(注1)内の高温環境を模擬した実験と高エネルギーX線CT(注2)を組み合わせ、鉄鉱石ペレットが還元・軟化・溶融(注3)していく際の内部構造と充填層の変形を3次元で捉えました。
  • 1300 ℃から1550 ℃の温度域で、金属鉄からなる硬い外殻による荷重の支え、ペレット内部の溶融スラグ生成、そして溶融・滴下に至る一連の化学・構造変化を明らかにしました。
  • X線CTで観察した変形状態と粒子法による予測結果を比較して、ペレットの外殻の「変形しにくさ」を表す実効降伏応力(注4)の温度依存性を定量化しました。
  • 本手法は、従来の試験法では困難だった高温3次元構造に基づく解析を可能にし、原料評価や高炉の安定操業条件の設計への活用が期待されます。

【概要】

鉄鋼業の脱炭素化に向けて、高炉内における鉄鉱石の還元・軟化・溶融挙動を正確に予測することは、安定操業と高効率化のために重要です。

東北大学多元物質科学研究所の夏井俊悟准教授らの研究チームは、Tata Steel Europe、Delft工科大学、産業技術総合研究所との共同研究により、高炉内を模擬した実験と高エネルギーX線CT、組織・元素分析、粒子法MPH-I(注5)による数値シミュレーションを組み合わせた解析手法を構築しました。鉄鉱石ペレット内部の構造変化を3次元的に明らかにし、数値的な逆解析によって実効的強度を定量化しました。本手法により、水素利用の拡大など低炭素化が進む製鉄プロセスにおける原料評価や高炉の安定操業への応用が期待されます。

本研究成果は、2026年10月16日付けで、科学誌Scientific Reportsにオンライン掲載されました。

図1.高炉内の融着帯と鉄鉱石ペレットの変形過程の模式図。
鉄鉱石ペレットは還元されながら軟化・変形し、最終的に溶融・滴下する。

【用語解説】

注1. 高炉:鉄鉱石から銑鉄を製造する大型の縦型炉。炉頂から鉄鉱石とコークスを投入し、下部から高温のガスを送り込むことで、鉄鉱石の還元と溶融を連続的に行う。

注2. 高エネルギーX線CT:X線を試料に照射し、さまざまな方向から得られる透過像を計算処理することで内部構造を3次元的に可視化する技術。本研究では最大9 MeVの高エネルギーX線を用いることで、鉄やコークスを含む比較的大型で高密度な試料内部を非破壊で観察した。

注3. 還元・軟化・溶融:鉄鉱石が還元ガスによって酸素を失い、温度上昇とともに軟化、変形し、最終的に溶融する一連の現象。高炉内の融着帯形成を理解するうえで重要な現象である。(Reduction-Softening-Melting:RSM)

注4. 降伏応力:物質が変形せずに耐えることのできる力の大きさを表す指標。これを超える力が加わると大きく変形し始める。本研究では、高温で軟化する鉄リッチな外殻の実効的な強さを表すために用いた。

注5. MPH-I:流体や変形する物質を多数の計算粒子として表現し、その運動を追跡する数値解析手法。解析力学に基づく手法で、本研究では、固体に近い状態から、軟化・流動する状態までを連続的に扱える点に特徴がある。(Moving Particle Hydrodynamics-Implicit)

【論文情報】

タイトル:Multiphysics framework for sustainable iron ore reduction-softening-melting: High-energy X-ray computed tomography and moving particle hydrodynamics
著者:Shungo Natsui*, Allert Adema, Jan van der Stel, Yongxiang Yang, Kaede Kano, Masahiro Kondo, Miho Hayasaka, Akihisa Ito, Takayuki Iwama, Hiroshi Nogami
*責任著者:東北大学多元物質科学研究所 准教授 夏井俊悟
掲載誌:Scientific Reports
DOI:10.1038/s41598-026-74732-9

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学多元物質科学研究所
准教授 夏井 俊悟(ナツイ シュンゴ)
TEL: 022-217-5157
Email: natsui*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学多元物質科学研究所 広報情報室
TEL: 022-217-5198
Email: press.tagen*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)