本文へ ナビゲーションへ
ここから本文です

チタン添加ステンレス鋼の孔食はどこから始まるのか? ―さらなる高耐食化に向けて介在物の電気化学特性を解明―

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 助教 西本昌史
ウェブサイト

【発表のポイント】

  • チタン(Ti)添加ステンレス鋼(注1)のさらなる高耐食化に向けて重要となるチタン含有硫化物系介在物(注2)の電気化学特性を明らかにしました。
  • 介在物の組成を系統的に制御したモデル試験片を作製し、マイクロスケールの電気化学計測技術により、MnS、(Mn,Ti)S、TiS2、TiN介在物の溶解しやすさの違いを明らかにしました。
  • Ti添加ステンレス鋼では、微量に存在する(Mn,Ti)S介在物が孔食の発生起点となることを示しました。本成果は、より高い耐食性を有するステンレス鋼の材料設計につながることが期待されます。

【概要】

ステンレス鋼は高い耐食性を有していますが、海水などの塩化物水溶液にさらされる環境では、介在物を起点として孔食(注3)が生じることがあります。Tiの添加はステンレス鋼の耐孔食性を向上させますが、孔食を完全に抑制できるわけではなく、Ti添加によって形成される各種介在物の電気化学特性と孔食の発生起点は明らかになっていませんでした。

東北大学大学院工学研究科の高嘉淇大学院生、西本昌史助教、武藤泉教授は、介在物の組成を系統的に制御したモデル試験片を作製し、マイクロスケールの電気化学計測技術を用いて、MnS、(Mn,Ti)S、TiS2、TiN介在物の溶解しやすさの違いを明らかにしました。さらに、実際のTi添加ステンレス鋼の孔食発生挙動を解析し、微量に存在する(Mn,Ti)S介在物が孔食の起点となることを示しました。本成果は、介在物の組成制御によるステンレス鋼のさらなる高耐食化につながることが期待されます。

本成果は、2026年10月22日(現地時間)に材料の劣化に関する学術誌npj Materials Degradationにオンライン掲載されました。

図1. 各種介在物の溶解しやすさの比較。MnS、(Mn,Ti)S、TiS2の順に溶解しにくくなり、TiNは溶解しなかった。Tiを含む介在物はMnSより電気化学的に安定である一方、(Mn,Ti)SはTiを含む介在物の中では比較的溶解しやすいことが分かった。

【用語解説】

注1. ステンレス鋼:鉄(Fe)に約11%以上のクロム(Cr)を添加して耐食性を高めた鋼。

注2. 硫化物系介在物:ステンレス鋼の製造工程において完全に除去しきれない硫黄(S)と合金元素であるマンガン(Mn)やチタン(Ti)等が化合して形成され、鋼中に生成する介在物。

注3. 孔食:塩化物イオン(Cl−)などの侵食性化学種の作用により、ステンレス鋼の不働態皮膜が局部的に破壊され、孔状の小さな腐食が生じる現象。

【論文情報】

タイトル:(Mn,Ti)S inclusions as pit-initiation sites in Ti-containing Fe-16Cr stainless steel: insights from microelectrochemical analysis using artificial inclusions
著者:Jiaqi Gao*1, Masashi Nishimoto*2, Izumi Muto
*責任著者:*1東北大学大学院工学研究科 大学院生 高 嘉淇
*2東北大学大学院工学研究科 助教 西本 昌史
掲載誌:npj Materials Degradation
DOI:10.1038/s41529-026-00902-9

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
助教 西本 昌史
TEL: 022-795-7299
Email: masashi.nishimoto.b8*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科情報広報室
担当 沼澤 みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

sdgs_logo

sdgs09

東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています