2026年 | プレスリリース・研究成果
硬くて脆いシリコンをフレキシブル化することでテラヘルツ波を制御 ~MEMS微細加工で「フレキシブル・テラヘルツシリコンフォトニクス」を創成~
【本学研究者情報】
〇電気通信研究所 教授 冨士田誠之
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【発表のポイント】
- 半導体材料である単結晶シリコン基板に微細なばね構造を形成し、硬くて脆いシリコン基板をフレキシブルかつストレッチャブルな構造へ変換
- シリコン微細構造を機械的に変形させることで、テラヘルツ波※1に対するシリコンの光学応答を制御できることを実証
- 機械的に変形するシリコンとテラヘルツ光学機能を同一のシリコン構造に統合する「フレキシブル・テラヘルツシリコンフォトニクス」の基盤技術を創成
【概要】
地方独立行政法人大阪産業技術研究所(本部:大阪府和泉市、理事長 湯元 昇、略称:ORIST オリスト)は、大阪府・市が設置した技術支援機関です。
このたび、当研究所 電子・機械システム研究部の山根 秀勝 主任研究員、山田 義春 主幹研究員、近藤 裕佑 主任研究員、宮島 健 主任研究員、村上 修一 研究室長の研究グループは、東北大学 電気通信研究所の冨士田 誠之 教授(大阪大学 大学院基礎工学研究科 招へい教授を兼任)との共同研究で、MEMS※2微細加工技術を用いて、硬くて脆い単結晶シリコン基板そのものを曲げたり伸ばしたりできる構造へと変換し、その機械変形によってテラヘルツ波に対する光学応答を制御することに成功しました。
半導体材料であるシリコンは、テラヘルツ波の吸収が小さく、半導体微細加工技術によって、導波路やレンズ、偏光素子などを高精度に作製できることから、テラヘルツデバイスの有力な材料として研究されています。一方、通常の単結晶シリコン基板は硬くて脆いため、従来のシリコン製テラヘルツデバイスは、形状が固定された剛直な構造に限られていました。本研究では、厚さ200マイクロメートルの高抵抗単結晶シリコン基板に、周期的な渦巻きばね状の微細構造を形成し、シリコン自体の構造を設計することでフレキシブルかつストレッチャブルな自立型シリコン基板を実現しました。さらに、この微細構造は、基板を変形させる機械的なばねとして働くだけでなく、テラヘルツ波に対する光学材料としても機能します。このシリコン基板を伸ばすと、シリコンと空気の割合や構造の異方性が変化し、それに伴ってテラヘルツ波に対する実効屈折率、位相、偏光応答およびスペクトル応答が変化します。すなわち、本研究では、同一のシリコン微細構造が「大きく変形できる機械的機能」と「テラヘルツ波を制御する光学的機能」の両方を担っています。これにより、固定形状を前提としてきたシリコンフォトニクス※3に機械変形という新たな設計自由度を導入し、形状と機能を機械的に調整できる「フレキシブル・テラヘルツシリコンフォトニクス」の基盤を提示しました。
本研究成果は、米国科学誌「Optica」に、2026年10月20日(火)にオンライン掲載されました。
フレキシブル・ストレッチャブル単結晶シリコン基板
【用語解説】
※1 テラヘルツ波
およそ0.1テラヘルツから10テラヘルツの周波数を有する、電波と光の中間に位置する電磁波。電波のように物質を透過しやすく、光のように直進性や分光計測に適した性質を併せ持ち、非破壊検査、材料分析、センシング、イメージング、次世代無線通信などへの応用が期待されています。0.6テラヘルツは、波長500マイクロメートルに相当します。
※2 MEMS(メムス)
Micro Electro Mechanical Systems(微小電気機械システム)の略で、半導体微細加工技術を用いて、微小な機械構造、センサ、アクチュエータなどを基板上に形成する技術。
※3 シリコンフォトニクス
半導体としてのシリコンを、光を伝搬させる誘電体材料として考え、光の回路や機能素子を実現する技術。
【論文情報】
論文タイトル:"Refractive Index Tuning of Terahertz Photonic Materials Based on a Stretchable Silicon Effective Medium"
著者:Hidemasa Yamane, Yoshiharu Yamada, Yusuke Kondo, Ken Miyajima, Masayuki Fujita, and Shuichi Murakami
掲載日:2026年10月20日
DOI:10.1364/OPTICA.596183
問い合わせ先
東北大学電気通信研究所
広報室 担当:千葉
TEL:022-217-5427
Email : riec-kohoshitsu@grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)