2026年 | プレスリリース・研究成果
ナノ磁石の磁気特性を層ごとに独立設計 ―原子の疎密をナノの世界に埋め込み、材料設計に新たな自由度を―
【本学研究者情報】
〇国際放射光イノベーション・スマート研究センター(SRIS) 教授 千葉大地
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【発表のポイント】
- ナノ磁石の多層膜の中で、磁石としての性質(磁化の向きやすさ)を層ごとに独立して作り分けることに成功
- 2つの層が数ナノメートルしか離れていないにもかかわらず独立にふるまうことを確認し、ナノメートルスケールで原子の疎密が急に切り替わる界面の形成を示唆
- 磁石以外の超伝導体・半導体など多様な材料にも応用できる可能性があり、医療・ヘルスケアを支えるフレキシブルエレクトロニクスや高感度センサなど幅広い波及効果に期待
【概要】
大阪大学産業科学研究所の森田利明助教と千葉大地教授(兼 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター センター長・教授)は、ナノ磁石の多層膜の中で、磁石としての性質(磁化の向きやすさ)を層ごとに独立して作り分けることに成功しました(図1)。
材料の性質は、構成する原子の並び方や間隔によって大きく変わります。研究グループはこれまでに、柔らかい基材を伸ばした状態で磁石のナノ薄膜を成膜し、その後、基材を元の長さに戻すことで、薄膜内の原子間隔をあらかじめ縮め、磁化の向きやすさを作り込む手法を報告してきました。
今回、研究グループはこの手法を一歩進め、2層の薄膜のそれぞれに、異なる原子の疎密を独立して埋め込みました。その結果、2つの層で(1)「磁化の向きやすさ」が異なるもの、(2)「磁化の向きやすい方向」が互いに直交するもの、という2種類のナノ薄膜を実現しました。
本成果は、フレキシブルエレクトロニクスで活躍するデバイスや高感度センサ、次世代スピントロニクス※1デバイスなどへの応用が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌『Applied Physics Letters』の2026年10月26日号(オンライン)に掲載されました。
図1
1枚の薄膜の各層の磁気特性を独立に設計し、埋め込むことに成功:フレキシブル基板をX方向に引っ張りながら下部磁性層を、Y方向に引っ張りながら上部磁性層をそれぞれ成膜し、引っ張り応力を開放する(上段)。これにより、下部磁性層にはX方向に、上部磁性層にはY方向に圧縮ひずみが導入される。積層膜の磁気特性は、上下層の磁気特性が足し合わされた性質を示す(下段グラフ参照)。
【用語解説】
※1. スピントロニクス
電子が持つ「電荷」の自由度に加えて量子的な性質である「スピン」の自由度も利用することで、従来のエレクトロニクスでは実現できなかった機能を有するデバイスの実現を目指す研究分野。
【論文情報】
タイトル:Layer-by-layer programming of built-in strain in Co bilayers
著者: Toshiaki Morita and Daichi Chiba
掲載誌:Applied Physics Letters
DOI:10.1063/5.0349990
問い合わせ先
(報道に関すること)
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(SRIS) 戦略室
TEL:022-217-5139
Email:sris-senryaku*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)