2026年 | プレスリリース・研究成果
酸化ストレス応答を調節する分子の構造変化を捉える ―クライオ電子顕微鏡でKeap1の柔軟性に迫る―
【本学研究者情報】
〇未来型医療創成センター 教授 小柴生造
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【発表のポイント】
- クライオ電子顕微鏡(注1)を用いて、酸化ストレスから体を守る働きを担うNrf2(注2)と、その働きを調節するKeap1(注3)という2つのタンパク質の関係に着目し、Keap1タンパク質の多彩な構造変化を定量的に評価しました。
- その結果、Nrf2がKeap1に結合すると、Keap1の2つの結合部位が近づき、両者の結合を妨げる化合物を加えると、その距離が再び広がることを発見しました。
- 本成果は、酸化ストレス応答を制御する仕組みの理解を深めました。本成果は、副作用低減が期待される新たなNrf2活性化薬の開発につながる可能性があります。
【概要】
私たちの体には、酸化ストレスから身を守る仕組みが備わっています。その中心的な役割を担うのがKeap1-Nrf2系です。Keap1タンパク質は柔軟に形を変えることができるため、Nrf2結合に伴う構造変化を捉えることは困難でした。東北大学東北メディカル・メガバンク機構の齋藤律水学術研究員、山本雅之特別栄誉教授、東北大学未来型医療創成センターの小柴生造教授らの研究グループは、中外製薬株式会社との共同研究により、クライオ電子顕微鏡でKeap1タンパク質二量体(注4)を観察し、同二量体中の2つのNrf2結合部位の距離を測定しました。その結果、Nrf2が結合するとKeap1の2つの結合部位の距離が近づきますが、一方、両者の結合を妨げる化合物を加えるとその距離が再び広がることを発見しました。本成果は、酸化ストレス応答の理解を深めるとともに、副作用の低減を目指した新たなNrf2活性化薬開発につながるものです。
本研究成果は、国際学術誌Redox Biologyの2026年11月号にオンライン掲載されました。
図1. 研究概要
【用語解説】
注1. クライオ電子顕微鏡:タンパク質などの試料を急速に凍結し、水分を含んだ状態に近いまま電子顕微鏡で観察する方法。生体分子の形や構造を解析するために用いられる。
注2. Nrf2:細胞を酸化ストレスなどから守るための遺伝子群を活性化するタンパク質のこと。
注3. Keap1:Nrf2の働きを調節するタンパク質のこと。通常の状態ではNrf2を分解へ導き、その働きを抑える性質をもつ。
注4. タンパク質二量体:2つのタンパク質分子が結合してできた構造のこと。Keap1は2つのKeap1分子が組になって働く。
【論文情報】
タイトル:Inter-domain distance analysis reveals conformational changes in the Keap1-Nrf2 stress sensor system
著者:Ritsumi Saito, Takeshi Kawabata, Seisuke Yamashita, Keisuke Oki, Takashi Fujii, Hiroki Kawauchi, Yoshiaki Doi, Machiko Irie, Takuya Torizawa, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto*, Seizo Koshiba*
*責任著者:
東北大学東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム解析部門
特別栄誉教授 山本 雅之
東北大学未来型医療創成センター(INGEM)生体高分子構造解析グループ
教授 小柴 生造
掲載誌:Redox Biology
DOI:10.1016/j.redox.2026.104379
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学未来型医療創成センター(INGEM)
生体高分子構造解析グループ
教授 小柴 生造(こしば せいぞう)
TEL: 022-274-6016
Email: seizo.koshiba.b3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学東北メディカル・メガバンク機構
広報戦略室
室長 長神 風二(ながみ ふうじ)
TEL: 022-717-7908
Email: tommo-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)