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コロラド高原の地下深部で「水を運ぶ鉱物」が融解 ―電子顕微鏡による解析で判明―

【本学研究者情報】

〇大学院理学研究科地学専攻 教授  辻森樹
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 米国コロラド高原のエクロジャイト捕獲岩(注1、注2)から、水を含む鉱物ローソン石(注3)の脱水融解を示す痕跡を見いだしました。
  • 透過型電子顕微鏡(以下、TEM)(注4)などによる微細組織・結晶構造の解析と熱力学計算を組み合わせ、岩石が形成後に800℃を超える急加熱を受けたことを示しました。
  • 加熱と融解、急冷の記録から、沈み込んだプレートの断片がマグマによって地下の浅い場所へ運ばれ、その後、爆発的に地表へ到達したという二段階の上昇過程を提案しました。

【概要】

米国コロラド高原では、約2800万年前、沈み込んだファラロンプレートから放出された水を含む流体によって、地下のマントルが広く水和(注5)したと考えられています。この「グレート・ハイドレーション(注6)」は、地下深部の岩石を地表へ運んだ爆発的活動との関係が議論されてきました。しかし、深部で形成されたエクロジャイトが、爆発の起きる浅い場所まで、何によって運ばれ、どの程度加熱されたのかは十分に分かっていませんでした。東北大学、海洋研究開発機構、バイロイト大学、愛媛大学などによる国際共同研究チームは、米国コロラド高原のナバホ火山地域に産するエクロジャイト捕獲岩を調べ、ローソン石の分解に伴って岩石の一部が溶けたことを示す証拠を見いだしました(図1)。ローソン石は結晶中に多くの水を含み、沈み込むプレートとともに地球深部へ水を運ぶ重要な鉱物です。本研究は、この鉱物が急激な加熱のもとで融解反応に関与し、メルト(岩石が溶けた液体)が生じ、その後に冷えて固まった履歴を、微小な鉱物の集合体から読み解いたものです。

本成果は、2026年10月29日に岩石学の国際学術誌Journal of Petrologyに公開され、注目論文としてエディターズチョイス(Editor's Choice)に選定されました。

図1. コロラド高原産エクロジャイト捕獲岩から発見された、ローソン石の分解と岩石の融解を示した微細組織。TEMを使用した微小領域の観察により、ローソン石仮像(上段)およびオンファス輝石(下段)からメルトの急冷組織を発見した。

【用語解説】

注1. エクロジャイト:主にざくろ石とオンファス輝石からなる高圧変成岩。地下深部の高い圧力のもとで形成される。

注2. 捕獲岩:周囲とは異なる岩石の断片が、マグマや噴出物などに取り込まれたもの。本研究では、地下深部の変成岩の断片を指す。

注3. ローソン石:結晶中に約11.5重量%の水を含む鉱物。沈み込み帯の低温・高圧環境で形成される。

注4. 透過型電子顕微鏡(TEM):極めて薄い試料に加速した電子を透過させて、拡大像や回折図形を観察し、微細な組織や結晶構造を調べる装置。光学顕微鏡では見えないナノスケールの特徴を解析できる。

注5. 水和:岩石や鉱物が水と化学反応し、水の成分を結晶構造に取り込むこと。この反応によって、水を含む鉱物(含水鉱物)が形成される。

注6. グレート・ハイドレーション(Great hydration):先行研究で提案された、約2800万年前のコロラド高原地下における大規模な水和イベント。沈み込んだファラロンプレート由来の流体が、上部にあるマントルの岩石へ広く浸透したと考えられている。

注7. 仮像:元の鉱物の外形を保ちながら、内部が別の鉱物などに置き換わったもの。元の鉱物が失われても、反応の履歴を読み取れる場合がある。

注8. 脱水融解:水を含む鉱物の分解を伴ってメルトが生成する過程。本研究では、ローソン石とオンファス輝石が関与する反応として検討している。

【論文情報】

タイトル:Melting of a lawsonite eclogite xenolith in the Colorado Plateau: Micropetrological constraints on the Oligocene thermal pulse
著者:Ryo Fukushima 1,2*, Tatsuki Tsujimori 2, Nobuyoshi Miyajima 3, Sayako Inoué 4, Tiziana Boffa-Ballaran 3, Giacomo Criniti 3,5
1 海洋研究開発機構物質地球科学研究部門 高知コア研究所
2 東北大学大学院理学研究科地学専攻
3 バイロイト大学バイエルン地球科学研究所
4 愛媛大学先端研究院地球深部ダイナミクス研究センター
5 ミュンヘン大学地球環境科学科
*責任著者:
海洋研究開発機構物質地球科学研究部門 高知コア研究所
福島 諒 ポストドクトラル研究員(日本学術振興会特別研究員PD)
(研究開始時:東北大学大学院理学研究科地学専攻 大学院生)
掲載誌:Journal of Petrology
DOI:10.1093/petrology/egag092

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問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科地学専攻
教授 辻森 樹(つじもり たつき)
Email:tatsukix*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科
広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)