2026年 | プレスリリース・研究成果
動物プランクトン長期モニタリングにより経年レジームシフトが明らかに ―採集ネットの網目サイズにより生態系の見え方が一変―
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 教授 山口篤
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【発表のポイント】
- 西部北太平洋亜寒帯域にて16年間にわたり採集された動物プランクトン試料を、画像解析装置(ZooScan(注1))を用いて分析しました。
- 採集ネットの目合い(100 µmと335 µm)の違いにより、評価される個体数や群集構造が大きく異なることが明らかになりました。
- 大型カイアシ類(注2)の繁殖戦略の違いが環境変動(レジームシフト(注3))への応答に影響を与えていることが示唆され、今後の長期モニタリングでは異なるネットを組み合わせて使用することの重要性が示されました。
【概要】
地球温暖化等の環境変動が海洋生態系に与える影響を予測するには、生態系の基盤を支える動物プランクトンの長期変動を把握することが不可欠です。しかし、従来の長期モニタリングでは採集ネットの網目が大きく、小型プランクトンを十分に採取できない問題点がありました。
東北大学大学院農学研究科の山口篤教授(研究当時・北海道大学大学院水産科学研究院)らの研究グループは、西部北太平洋亜寒帯域の1定点にて2003~2018年に採集された動物プランクトン試料を、網目サイズの異なる2種類のネット(100 µm、335 µm)毎に、画像解析装置(ZooScan)を用いて解析しました。その結果、335 µmネットによる個体数は100 µmネットの約11.7%に留まり、小型カイアシ類が大幅に過小評価されていました。一方、バイオマスはどちらの網目でも差はありませんでした。大型カイアシ類のうち、表層で繁殖する種のEucalanus bungiiは、2008年に個体数とバイオマスが急減し、繁殖戦略の違いが環境変動への応答に関係する可能性が示されました。本研究は、海洋生態系の正確なモニタリングには、調査目的に応じて異なる網目のネットを組み合わせて使用することが重要であることを示すものです。
本研究成果は、2026年10月22日に国際学術誌Oceansに掲載されました。
図1. 2003~2018年の春季の、西部北太平洋亜寒帯域における動物プランクトン出現個体数(A: 目合い100 µm、B: 目合い335 µm)とバイオマス(C: 目合い100 µm、D: 目合い335 µm)。バイオマスでは目合いによる差が小さいが、出現個体数においては小型な目合い(100 µm)の方が高く、特に小型カイアシ類のOithona属の占有率が高くなっている。
【用語解説】
注1. ZooScan:動物プランクトンの液浸標本をスキャンし、高解像度のデジタル画像を取得して、個体のサイズ計測や分類を自動または半自動で行う画像解析システム。
注2. カイアシ類:甲殻類の一種で、海洋の動物プランクトンの中で最も個体数が多く、海洋生態系において極めて重要な役割を果たす。
注3. レジームシフト:気候システムや海洋生態系の状態が、数年から数十年のスケールで別の状態へと急激に移行する現象。
【論文情報】
タイトル:Interannual Variations in Epipelagic Zooplankton Communities and Size Composition at a Station in the Western Subarctic Pacific During Spring (2003-2018): Influence of Mesh Size Differences
著者:Wataru Obi, Sojin Ryu, Kazuki Maeda, Muhammad Izzat Nugraha, Kosei Sasaoka, Goh Nishitani, Atsushi Yamaguchi*
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 教授 山口 篤(研究当時・北海道大学大学院水産科学研究院)
掲載誌:Oceans
DOI:doi.org/10.3390/oceans7060089
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科
教授 山口 篤
TEL:022-757-4243
Email:a-yama*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科広報室
TEL:022-757-4034
Email:agr-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)