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はじめに

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東北大学は、今から111年前の1907年の建学以来、我が国有数の総合研究大学として、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念のもと、多くの指導的人材を輩出するとともに、世界的に卓越した研究成果をもって人類の知の地平を拡大し、さらには未来社会へ向けた変革・イノベーションを先導してきました。昨年6月には、名実ともに日本を代表する大学として、世界の有力大学と伍していくことを使命とする「指定国立大学法人」の最初の三校に指定されました。

本学はまた、建学の当初より、民間および自治体等から多大な期待と支援を受け、社会とともに発展してきた大学でもあります。2011年に地域を襲った東日本大震災からの復興にあたっては、多様な領域の学知および人材力を駆使して一連の復興アクションに取り組んでまいりました。この経験は、私たち大学構成員にとって、「社会とともにある東北大学」という本来のアイデンティティを、実感をもって理解するきっかけともなりました。

言うまでもなく世界は今、大きな変革期にあります。グローバリゼーションの一層の進展や第4次産業革命の進行により、多くの人が、社会の仕組みが根本から変わると考えています。さらに、国際社会の多極化、食糧問題、社会的格差の拡大、地球環境問題など、多様で複雑化した課題が顕在化しています。同時に、そのような変革期であるからこそ、より豊かな未来社会をデザインし、その実現に向けた一歩を踏み出す好機であるとも言えます。大学にとって、目前の課題に対する解決策の探求にとどまらず、既成概念の枠を超えた新たな社会価値の創造へ向けた大胆な挑戦が強く求められています。

そこでこのたび、本学が今後取り組んでいくべき挑戦について、「東北大学ビジョン2030」として取りまとめました。このビジョンは、文字通り2030年を見据えた本学の挑戦的な展望です。そしてその要諦は、本学の3つの伝統的な理念を基盤として大学経営の革新を図ることにより、「教育」、「研究」、「社会との共創」の好循環をより高い次元で実現することにあります。

本ビジョンの実現のためには、広く市民の皆さま、産業界・経済界、自治体や国などの公的機関、同窓生を含む広い意味での本学関係者など、多様なセクターからのご支援、ご協力が欠かせません。各位におかれましては、本ビジョンに提示した本学の挑戦への決意にご理解をいただき、一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2018年11月  東北大学総長  大野 英男

I 東北大学ビジョン2030策定の背景

変革期を迎えた世界

現代社会は大きな変革期にあります。グローバリゼーションの一層の進展と同時に、国や地域ごとに固有の社会・文化のあり方に立脚したローカリゼーションの動きが活発化するとの見方もあり、これらのバランスにも配意しつつ先行きを見極める必要があります。また、産業構造の変化に目を向けると、工業化、大量生産、情報通信技術革命に続き、ビッグデータやIoT(Internet of Things)、人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新を核とした第4次産業革命が進行しています。さらに、仮想空間と現実空間とを高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を創り出していく動き(Society5.0)もあります。

このような社会の変革に伴い、従来の資源やモノではなく、知識を共有・集約することで、様々な社会課題を解決し、新たな価値が生み出される「知識集約型社会」の到来が予想されており、その担い手として活躍できる人材の育成も重要です。この変革期をチャンスとしてとらえ、夢のある豊かな未来社会を構想し、その実現に向けて果敢に挑戦する、真に行動力のある人材が求められています。

国内外の課題と求められる対応

2015年に国連では、2030年までの国際目標としてSDGs(Sustainable Development Goals)を採択しました。これは、持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成されており、我が国でもその達成に向けた積極的な取組が進められています。SDGsの原点にあるのは、貧困を中心とした地球規模での深刻な課題の認識です。あらゆる形態の貧困に終止符を打つため、経済成長を促し、教育、健康、社会的保護、雇用機会を含む幅広い社会的ニーズを充足する一方、 気候変動と環境保護に取り組む戦略の重要性が訴えられ、一連の活動が国際的な潮流となっています。一方、国内に目を転じると、我が国はこれから一層、成熟社会として深化していくことが見込まれています。世界的な人口増加のトレンドの中で、我が国の人口は18歳人口を含め減少に向かうとともに、健康寿命が世界一の長寿社会として、「人生100年時代」を迎えます。このような世界が経験したことのない新たな時代に対応可能な社会システムの構築が急務となっています。他方、環境問題は一段と深刻化し、経済活動の停滞も危惧されています。頻発する自然災害に対する防災や被災後の復興の重要性はますます高まっていくことが予想されます。

予測困難な時代における大学の役割

さて、以上のように予測困難な時代にあって、大学の果たす役割はますます重大であると考えます。 既存概念の枠を超えて新たな価値を創造し、その応用展開によって社会変革・イノベーションを先導すること、地球規模の困難な課題に対して、多様な分野の知と人材の力をもって解決策を見出すこと、 深遠な学理の探求を通して人類の知の地平を拡大し、子供たちに夢を与えること、それらはいずれも大学でなければ成し得ないことです。そして、あたかも海図のない海原を行くように、果敢に未知へ挑戦する、そのような人材を育てることこそが、大学の最も重要な役割であることは言うまでもありません。

II 東北大学ビジョン2030の概要

東北大学ビジョン2030は、以上のような現代社会における大学の役割の認識に立脚しつつ、本学がその本来の使命(ミッション)を果たすうえで、今後取り組んでいくべき挑戦について取りまとめたものです。その要諦は、本学の伝統的な理念を基盤として大学経営の革新を図ることにより、「教育」、「研究」、「社会との共創」の好循環をより高い次元で実現することにあります。文字通り2030年を見据えた本学の挑戦的な展望を提示するものであり、その概要は以下のようにまとめられます。

東北大学の使命(ミッション)と目指すべき大学像

  • 【大学の使命】東北大学は、一世紀以上の歴史を有する総合研究大学として、「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」の理念を掲げて指導的人材を育成し、世界的に卓越した研究成果を創出して、平和で公正な人類社会の発展に貢献します。
  • 【伝統校から先導校へ】グローバル化の進展や科学技術の加速的進歩により、前例のない変化に直面する現代社会において、東北大学は「伝統校」に甘んじることなく、「先導校」としての大胆な挑戦を行って、その建学のミッションを高い次元で達成することを目指します。
  • 【社会とともにある大学】東北大学は、建学の当初より、民間および自治体等から多大な期待と支援を受け、社会とともに発展してきた大学でもあります。東日本大震災の経験を経て、より深く醸成された「社会とともにある大学」という本学固有のアイデンティティを基盤として、新しい時代の大学像を提示します。

東北大学ビジョン2030の策定にあたってのポイント

  • 【ビジョンの位置づけと構成】本ビジョンは、社会・経済・科学技術が地球規模で連動する世界の将来像を見据え、他大学にはない東北大学独自の強みと可能性を見極めたうえで、2030年に向けた東北大学のあるべき姿・ありたい姿(ビジョン)と、その実現を目指した中長期の方針(重点戦略)、さらには、具体的なアクション(主要施策)等を提示するものです。
  • 【ビジョンの骨子】本ビジョンの基本的な考え方は、大変革時代の社会を世界的視野で力強く先導するリーダーを育成する「教育(Vision 1)」、卓越した学術研究を通して知を創造しイノベーショ ンの創出を力強く推進する「研究(Vision 2)」、そして従来の社会連携と産学共創とを統合する「社会との共創(Vision 3)」を柱として、これら3要素の好循環を、大学の「経営革新(Vision 4)」を図ることで、より高い次元で実現することにあります。
  • 【指定国立大学法人にふさわしい経営革新へ】本ビジョンは、また、東北大学が2017年6月に指定国立大学法人に指定されたことを受け、その先導的役割にふさわしい経営革新を通して、新たな大学の姿を目指すものです。

III 4つのビジョン、19の重点戦略、66の主要施策

本ビジョンの基本的な考え方は、大変革時代の社会を世界的視野で力強く先導するリーダーを育成する「教育(Vision 1)」、卓越した学術研究を通して知を創造しイノベーションの創出を力強く推進する「研究(Vision 2)」、そして従来の社会連携と産学共創とを統合する「社会との共創(Vision 3)」を柱として、これら3要素の好循環を、大学の「経営革新(Vision 4)」を図ることで、より高い次元で実現することにあります。


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