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屈折率特性が向上した6G通信向けメタマテリアルの開発 - 微細な二層リング共振器を等方的に分散 -

【本学研究者情報】

〇大学院工学研究科 ロボティクス専攻
教授 金森義明
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 二層スプリットリング共振器(注1を三次元的に不規則に配置した三次元バルクメタマテリアル(注2を開発しました。
  • この新材料は光学的等方性を示し、テラヘルツ波(注3の周波数での屈折率制御が可能です。
  • 新材料は粉体で供給が可能なため、液状樹脂に混合し容易に任意形状に加工することができます。
  • 第6世代移動通信システム(6G)(注4をはじめ、医療・バイオ・農業・食品・環境・セキュリティなど幅広い分野での応用の加速が期待されます。

【概要】

世界ではすでに第5世代移動通信システム(5G)(注5)の次の世代「6G」を見据えた研究開発が始まっており、5G用の電波(ミリ波)よりさらに波長が短いテラヘルツ波が使用されることが明示されています。

東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻の金森義明教授らの研究グループは、6G通信向け電波制御材料の研究を行っており、2022年3月に、加工が容易かつ幅広い屈折率特性を有する新規材料の三次元バルクメタマテリアルの開発について報告しました(注6)。このたび、易加工性の利点はそのままに、屈折率特性をさらに向上させた新たな材料の開発に成功しました。以前の材料では、メタマテリアルの単位構造として一層のスプリットリング共振器を内包しましたが、それを二層のスプリットリング共振器に変更することにより、性能向上が実現しました。本学工学研究科に設置した国内初のメタマテリアルを専門とする研究センター「メタマテリアル研究革新拠点」(注7)において、この研究をさらに加速させていきます。

本研究成果は、2024年7月8日、Advanced Scienceに掲載されました。

図1. 三次元バルクメタマテリアルの利用イメージ

【用語解説】

注1. スプリットリング共振器
切れ目のある環状の構造をしたLC共振器。切れ目(スプリット)部がキャパシタ(C)、リング部分がインダクタ(L)となる。特定の周波数で電磁波に対して共振を起こす特性を持ち、特にメタマテリアルの設計において重要な役割を果たす。

注2. メタマテリアル
制御の対象とする電磁波の波長より小さな単位構造で構成され、自然界にはないような電磁波応答を示す人工光学物質。空間的な局在電場モード(光の状態密度)を自在に設計し得る最小の光共振器とも言え、電磁波の応答特性は主にメタマテリアルの形状で決まる。光共振器の設計次第で実効的な屈折率を自在に制御できる。要求に応じた屈折率を持つ光学材料を設計に基づき人工的に実現でき、負の屈折率、透明マント(クローキング)、完全レンズなどの実現可能性が示されている。

注3. テラヘルツ波
光波(赤外線)と電波(ミリ波)の中間にあたる帯域の電磁波で波長は約10μm(周波数30THz)から約1mm(周波数300GHz)。赤外線のように検査・分析に用いる他、波長約10mm(30GHz)から約10cm(周波数3GHz)のマイクロ波を用いる現在の通信(5G)に続く次世代通信(6G)用の電磁波として期待されている。

注4. 第6世代移動通信システム(6G)
現行の携帯電話で使われている 4G、5Gに続く無線通信システム。2030年代の商用化が見込まれている。通信速度は5G の10 倍以上の毎秒 100ギガビット級(ギガは10億)が想定されている。高解像度の3D映像を触覚情報などと合わせてリアルタイムで送受信できるようになる。医療分野では遠隔での治療や診察、教育分野では臨場感のあるリモート授業が実現する。

注5. 第5世代移動通信システム(5G)
2020年3月からサービスが開始された、一世代前の4Gと並ぶ現行の通信規格。4Gと比較して、高速大容量、多数同時接続、超低遅延といった特徴がある。さまざまな電子機器がネットワークに接続されるようになる。

注6. 2022年3月10日 東北大学プレスリリース
6G通信向け電波制御材料 安価に大量生産
- 世界初 部材として供給可能な三次元バルクメタマテリアルを開発 -
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2022/03/press20220310-01-6g.html

注7. 研究センター「メタマテリアル研究革新拠点」
2022年6月1日設置。拠点長は東北大学大学院工学研究科 教授 金森義明。
https://web.tohoku.ac.jp/kanamori/0meta-ric/index.html

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

【問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
教授 金森義明
TEL:022-795-4893
Email: ykanamori*tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学大学院工学研究科
情報広報室
担当 沼澤みどり
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp
(*を@に置き換えてください)

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