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天然ゴムで200℃未満の廃熱から 高い動力エネルギーを得ることに成功 ─低温廃熱を電気エネルギーに変換する環境発電に期待─

【本学研究者情報】

〇流体科学研究所 教授 小宮敦樹
研究室ウェブサイト

〇高等研究機構国際ジョイントラボセンター 客員教授 Sebald Gaël
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • 天然ゴムの特性を生かした新たな熱-動力変換機構を提案し、その性能を実験的に評価しました。
  • 工場廃熱などの低エネルギーとゴムが有する弾性熱量効果(注1)を利用することで、ゴムから形状記憶合金等に匹敵する十分な機械的仕事が得られることを明らかにしました。
  • 提案した熱―動力変換機構は安価な天然ゴムを利用していることから、出力向上が容易に可能であり、廃熱を電気エネルギーに変換する環境発電(注2)への利用が期待できます。

【概要】

200℃以上高温排熱は発電・蒸気等での利用が推進されています。一方、80℃~200℃低温排熱は大部分が大気中に排気されています。そこで工場等から排出される200℃未満の廃熱を再利用する気運が高まっています。

フランス国立応用科学院リヨン校(INSA Lyon) とフランス国立科学研究センター(CNRS)のGaël Sebald教授とGildas Coativy研究員、東北大学流体科学研究所のGiulia Lombardi研究員(日本学術振興会外国人特別研究員)、小宮敦樹教授らの研究グループは、天然ゴムなどの弾性熱量効果に着目し、わずかな温度差から効率的に動力エネルギーを得ることに成功しました。さらに提案した再生型の熱-動力変換機構の性能の向上についても検討を行い、熱駆動アクチュエータとしての評価を行いました。

その結果、1サイクルあたり3.2Jの正味出力エネルギーが測定され、120mW相当の出力となることを確認しました。今回提案したエネルギー変換機構を大型化することで、熱から動力エネルギーを経由した電気エネルギーへの変換も可能であり、新たな熱電変換技術の実現が期待されます。

本研究成果は、2025年7月7日にエネルギー分野に関する科学誌Jouleにオンライン掲載されました。

図1. 熱-動力エネルギー変換機構の全体写真。中央の可動台の上下に天然ゴムチューブ群で構成される弾性体が配置され、両方向からの力を受ける構造となっている。この可動台は、力を測定する際にはアクチュエータに固定することが可能。

【用語解説】

注1. 弾性熱量効果:弾性体の形状が急激に変形する際に、変形前後でのエントロピーの差に相当する発熱や吸熱が起こる効果。

注2. 環境発電:様々な形態で周囲に存在する従来利用されることのなかった微小なエネルギーを、電気エネルギーに変換して活用する技術。

【論文情報】

タイトル:Converting low-grade heat into mechanical energy using a natural rubber elastocaloric device
著者:Gaël Sebald*, Giulia Lombardi, Gildas Coativy, Atsuki Komiya
*責任著者:東北大学 高等研究機構国際ジョイントラボセンター 客員教授 Gaël Sebald
掲載誌:Joule
DOI:https://doi.org/10.1016/j.joule.2025.102012

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学流体科学研究所 教授
小宮 敦樹
TEL: 022-217-5876
Email: komiya*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

東北大学高等研究機構国際ジョイントラボセンター 客員教授
INSA Lyon 教授
Sebald Gaël
Email: gael.sebald*insa-lyon.fr(*を@に置き換えてください) (報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
国際研究戦略室(広報)
TEL: 022-217-5873
Email: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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