2026年 | プレスリリース・研究成果
記憶を生み出す脳細胞の再編成を視る -ストレスがシナプス構造を書き換える仕組みを明らかにした技術革新-
【本学研究者情報】
〇生命科学研究科 教授 谷本拓
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 脳内で情報伝達を担うシナプスは、さまざまな構造や機能を持つことが知られていますが、ひとつの細胞内でこうした多様性が生じるメカニズムは不明でした。
- モデル生物のショウジョウバエを用いて、特定の神経細胞に存在するシナプス構造を高精度に可視化できる技術を開発し、ひとつの神経細胞の中にシナプス構造や機能が異なる区画があることを初めて発見しました。
- 空腹や睡眠不足といったストレス状態の変化によって、記憶を形成する神経細胞のシナプス構造が再編成されることを発見し、その仕組みを明らかにしました。
【概要】
脳は膨大な数のシナプス(注1)を介して情報をやり取りすることで、記憶を形成し行動を制御しています。シナプスにはさまざまな構造や機能がありますが、ひとつの神経細胞の内部でその構造がどれほど多様であり、この違いがどのように決まるのかは、これまでほとんど分かっていませんでした。
東北大学大学院生命科学研究科の谷本拓教授らの研究グループは、モデル生物のショウジョウバエを用いて、空腹や睡眠不足といった生理的ストレスが神経細胞内の再編成を促し、ヒトのノルアドレナリンに相当するオクトパミン(注2)という神経伝達物質を介して起こる仕組みを明らかにしました。さらに、特定の神経細胞のシナプスだけを選択的かつ高精度に可視化できる革新的な技術を確立しました。これにより、記憶を司る神経細胞のシナプスは、接続する相手細胞によって構造が区画化されていることを初めて発見しました。
今回の成果は、「生理的ストレスや内部状態に応じて、神経回路がどのように書き換えられ、行動を変えるのか」という根本的な問いに対し、細胞内の微細構造のレベルから新たなメカニズムを提唱するものです。本成果は、2026年3月18日付で科学誌 eLife に掲載されました。
図1. 各神経細胞種のシナプス密度と個体差。細胞の種類ごとに異なる個体差を持つ
【用語解説】
注1. シナプスは神経細胞間で電気信号や化学信号を伝える接続部位で、神経回路の情報伝達を担う。
注2. オクトパミンは昆虫における神経伝達物質で、哺乳類のノルアドレナリンに相当する働きを持つ。
【論文情報】
タイトル:Profiling presynaptic scaffolds using split-GFP reconstitution reveals cell-type-specific spatial configurations in the fly brain
著者:Hongyang Wu, Yoh Maekawa, Sayaka Eno, Shu Kondo, Nobuhiro Yamagata, Hiromu Tanimoto*
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 教授 谷本 拓
掲載誌:eLife
DOI:10.7554/eLife.107663.3
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科
教授 谷本 拓(たにもと ひろむ)
TEL: 022-217-6223
Email: hiromut*m.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院生命科学研究科広報室
高橋さやか
TEL: 022-217-6193
Email: lifsci-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

![]()
東北大学は持続可能な開発目標(SDGs)を支援しています