2026年 | プレスリリース・研究成果
竹シートで高強度化した生分解性複合材料を開発 ―海水環境における分解挙動を力学特性に基づいて予測―
【本学研究者情報】
〇環境科学研究科 教授 成田史生
【発表のポイント】
- 竹シートと海洋生分解性ポリマーPHBH(注1)を積層した高強度なグリーン複合材料(注2)を開発しました。
- 最適な積層構成では竹単体を上回る力学性能を実現しました。
- 生分解試験により、分解進行に伴う強度低下の関係を導出し、力学特性から海水環境での分解進行を推定する方法を示しました。
- 海水魚を含む水槽環境で約5ヶ月間曝露しても有害影響は観察されず、海洋・沿岸用途を含む環境調和型材料としての展開が期待されます。
【概要】
プラスチックごみによる環境負荷の低減に向けて、使用後に自然環境中で分解する材料の開発が求められています。しかし、生分解性を持つだけでは実用材料として十分ではなく、使用期間中に必要な強さや剛性をどのように確保するかが大きな課題です。
東北大学工学部材料科学総合学科のRova Lovisa助教、環境科学研究科のDas Snigdha大学院生、王真金助教、栗田大樹准教授、成田史生教授(工学部材料科学総合学科兼担)らは、竹シートと海洋生分解性ポリマーPHBHを熱圧縮により積層した新しいグリーン複合材料を開発しました。最適な積層構成では、引張強さ71.2 MPaを達成し、PHBH単体および竹単体を上回る力学性能を示しました。また、コンポスト環境では45日後に約45%の生分解に達し、分解の進行に伴って力学特性が低下する様子を定量的に捉えました。
さらに、海水環境および温水条件(水道水)での浸漬試験では、いずれの環境でも力学特性の低下が確認され、特に海水中でより速い劣化が見られました。研究グループは、コンポスト試験で得た「引張強さ保持率(注3)と生分解度(注4)の関係」を基に、水環境での分解進行を推定する方法を示しました。これにより、生分解性材料を「どれだけ分解したか」だけでなく、「いつまで機能を保てるか」という観点から設計・評価する新たな道筋を示しました。
本研究成果は2026年3月31日、高分子材料の劣化・分解現象とその制御・活用を扱う専門誌 Polymer Degradation and Stability に掲載されました。
図1.竹−PHBH複合材料の積層構造と試験片形状。竹シートとPHBHシートを積層した (a) P1B2および (b) P2B3構成の模式図と、(c) 引張試験片の形状。
【用語解説】
注1. PHBH:poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate)。微生物由来のポリヒドロキシアルカノエート系生分解性ポリマー。土壌、コンポスト、海水を含む水環境で分解性を示す。
注2. グリーン複合材料:植物由来や生分解性材料などを組み合わせて作製した環境負荷低減型の複合材料。
注3. 引張強さ保持率:初期の引張強さに対して、劣化後にどの程度の強さが残っているかを示す値。
注4.生分解度:材料中の有機成分が微生物の働きによって分解され、最終的に二酸化炭素や水などへ変換された割合。
【論文情報】
タイトル:Quantitative Coupling Between Mechanical Deterioration and Biodegradation in Bamboo-Poly(3-hydroxybutyrate-co-3-hydroxyhexanoate) Composites: Toward Predictive Modeling Across Compost and Aquatic Environments
著者:Snigdha Das, Lovisa Rova, Zhenjin Wang, Hiroki Kurita*, Fumio Narita*
*責任著者:東北大学大学院環境科学研究科 准教授 栗田大樹、教授 成田史生
掲載誌:Polymer Degradation and Stability
DOI:10.1016/j.polymdegradstab.2026.112107
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学 大学院環境科学研究科
教授 成田史生
TEL: 022-795-7342
Email: narita*material.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学 大学院環境科学研究科
情報広報室
TEL: 022-752-2241
Email: kankyo.koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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