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スーパーコンピューターによるシミュレーションで 鋳巣発生部位の時系列予測に成功 -高圧ダイカスト鋳造における巻込み空気と鋳巣形成を可視化-

【本学研究者情報】

〇流体科学研究所 教授 石本淳
研究室ウェブサイト

【発表のポイント】

  • スーパーコンピューターによるHigh-Fidelityシミュレーション(注1により、高圧ダイカスト鋳造における鋳巣(注2発生部位の時系列特定に世界で初めて成功しました。
  • 従来手法では観察不可能であった非定常凝固を伴う鋳巣の微細形状を可視化し、鋳巣欠陥形成要因を明らかにしました。
  • 実鋳造品のX線CT(注3計測との比較検証で、鋳巣発生部位の空間一致率が最大60%に達し、予測の有効性を確認しました。

【概要】

自動車や精密機器産業において、アルミニウムダイカスト製品は軽量化と高強度を両立する基幹部品として不可欠ですが、鋳造工程中に空気が巻き込まれることで生じる鋳巣(ポロシティ)は、外観からは検知困難な内部欠陥であり、従来のシミュレーションでは正確な予測が極めて困難とされてきました。

東北大学流体科学研究所 石本淳 教授の研究グループは、VOF(Volume of Fluid)法(注4とLES(Large Eddy Simulation)(注5を組み合わせ、気体の圧縮性と凝固プロセスを統合した三次元High-Fidelityシミュレーションにより、高圧ダイカスト鋳造の充填過程から初期凝固段階までの全過程を解析しました。スーパーコンピューターによる大規模計算を活用し、気泡の生成・移動・圧縮・封じ込め挙動を時系列で追跡することで、鋳巣発生部位の時系列特定に世界で初めて成功しました。実際の量産品のX線CT計測データとの比較検証では、鋳巣発生位置の空間一致率が最大60%に達し、予測の有効性が確認されました。なおAstemo株式会社との共同研究によりオープンソースCFD(数値流体力学)ソフトOpenFOAM(注6を新たに開発し、シミュレーションにあたってはこれを基盤としたオリジナル鋳造計算ソフトウェア「DiecastCompressibleInterFoam」を用いました。

本手法は、ダイカストアルミニウム製品の欠陥予測とプロセスフィードバックに有効であり、製品設計のフロントローディングと量産時の品質保証に大きく貢献するものと期待されます。

本研究成果は、学術誌International Journal of Metalcastingに2026年3月23日にオンライン掲載されました。

図1. 鋳造解析専用ソフトウェア開発の変遷(溶湯混相流体の圧縮性を考慮し、凝固過程をシミュレート可能なソフトウェア開発に成功した)

【用語解説】

注1. High-Fidelity(高忠実度)シミュレーションとは、より多くの物理現象を精緻に再現する高精度計算手法を指す。

注2. 鋳巣(ポロシティ):鋳造工程中に内部に形成される空洞や気泡による欠陥。製品の強度低下や破損の原因となる。

注3. X線CT(コンピュータ断層撮影):X線を用いて製品内部の三次元構造を非破壊で可視化する計測技術。

注4. VOF(Volume of Fluid)法:気体と液体の界面を追跡する数値解析手法。各計算セルにおける流体の体積分率を追跡することで、気泡の生成や移動を可視化できる。

注5. LES(Large Eddy Simulation):乱流の大規模渦を直接計算し、小規模渦のみモデル化する高精度乱流解析手法。

注6. OpenFOAM:オープンソースの流体解析ソフトウェア。ソースコードが公開されており、学術研究機関や製造業で広く使用されている。

【論文情報】

タイトル:Visualization and Validation of Air Entrapment and Porosity Formation in Compressible Multiphase High-Pressure Die Casting
著者:Hideaki Yamada, *Jun Ishimoto, Fumikazu Sato, Yoshikatsu Nakano
*責任著者:東北大学流体科学研究所 教授 石本 淳
掲載誌:International Journal of Metalcasting
DOI: 10.1007/s40962-026-01946-y

詳細(プレスリリース本文)PDF

問い合わせ先

(研究に関すること)
東北大学流体科学研究所
教授 石本 淳
TEL: 022-217-5271
Email: ishimoto*alba.ifs.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

(報道に関すること)
東北大学流体科学研究所
国際研究戦略室(広報)
TEL: 022-217-5873
Email: ifs-koho*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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