2026年 | プレスリリース・研究成果
水完全分解光触媒における初めてのオールインワン助触媒を実現 ―サステイナブルな水素社会の実現に向けて―
【本学研究者情報】
〇大学院理学研究科化学専攻 教授 坂本良太
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- 脱炭素社会の実現を目指し、クリーン水素製造の有望な方法として、光触媒(注1)による水完全分解(OWS)(注2)が注目されています。
- 二次元金属有機構造体(2D-MOF)(注3)が光触媒のオールインワン助触媒として機能することを初めて見出しました。
- ワンステップ自己組織化法により簡便に光触媒を2D-MOFで修飾でき、高効率の水完全分解を達成しました。
【概要】
光触媒による水完全分解(OWS)は、持続可能な水素生産に大きな可能性を秘めています。OWSでは、光触媒表面での水素発生反応(HER)と酸素発生反応(OER)の双方の促進が極めて重要であり、おのおのの反応に、個別に高い活性を示すHERおよびOER助触媒を、光触媒上の狙いの位置に選択的に修飾することが高活性化の鍵になります。しかし、煩雑な多段階光析出プロセスと逆反応を阻害するための酸素遮断層の必要性、逆反応を完全に抑制することの難しさ、遮断層の耐久性に関する懸念など、依然として大きな課題が残っています。
東北大学大学院理学研究科の坂本良太教授らの研究グループは、導電性二次元金属有機構造体(2D-MOF)の一種であるCo-HHTPがオールインワンの助触媒として機能することを発見しました。Co-HHTPをOWS光触媒であるSrTiO3:Al上にワンステップ自己組織化法で担持させることで、酸素遮断層なしで酸素還元逆反応(注4)を起こさず、350 nm(ナノメートル、ナノは10億分の1)における見かけの量子効率(AQE)31.5%という安定したOWSを実現しました。2D-MOFが提供するオールインワン助触媒の概念は、効率的かつ実用的なOWSシステムの設計に新たなパラダイムを提供します。
本研究成果は、2026年4月23日18時(日本時間)で科学誌 Nature Chemistry 誌 にオンライン掲載されました。
図1. 光触媒によるOWSの概念図。
【用語解説】
注1. 光触媒:光を照射することにより自身は変化しないが、触媒作用を示す物質。
注2. 水完全分解(OWS):水を分解し、酸素と水素を取り出す現象。光触媒の場合、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光が照射されると励起電子と正孔が生じる。これらがそれぞれ水の還元、酸化反応を行うことで水分解反応が進行する。
注3. 二次元金属有機構造体(2D-MOF):金属有機構造体(MOF)は金属イオンと有機配位子が規則的に結合した、ナノレベルの微細な穴を持つ多孔性結晶材料で、北川進特別教授(京都大学)らの2025年ノーベル化学賞の受賞対象となった物質群である。2D-MOFはMOFのうち、二次元シート構造を特徴とするものを指す。
注4. 酸素還元逆反応:光触媒上で生成した酸素が再び電子を受け取って還元される反応や、生成した水素と酸素が助触媒上で反応して再び水に戻る反応を指す。これらの反応が起こると、水素生成の効率が低下する。
【論文情報】
タイトル:Two-dimensional metal-organic frameworks offer all-in-one cocatalysts for photocatalytic overall water-splitting
著者:Jingyan Guan, Hajime Suzuki*, Kazuhide Kamiya, Takashi Harada, Rintaro Adachi, Osamu Tomita, Hirofumi Kurokawa, Daisuke Unabara, Koji Yonekura, Naoya Fukui, Hiroaki Maeda, Kunihisa Sugimoto, Yuichi Yamaguchi, Akinori Saeki, Akira Yamakata, Akihiko Kudo, Ryu Abe*, Ryota Sakamoto*
*責任著者 京都大学大学院工学研究科 助教 鈴木肇、京都大学大学院工学研究科 教授 阿部竜、東北大学大学院理学研究科 教授 坂本良太
掲載誌:Nature Chemistry
DOI:10.1038/s41557-026-02133-6
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院理学研究科化学専攻
教授 坂本 良太(さかもと りょうた)
TEL:022-795-3681
Email:ryota.sakamoto.e3*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院理学研究科広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr*mail.sci.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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