2026年 | プレスリリース・研究成果
昆虫の「歩き方」をAIが解読しロボットへ ―数歩分のデータで六脚ロボットが適応歩行―
【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科 准教授 大脇大
研究室ウェブサイト
【発表のポイント】
- ナナフシ(注1)のわずか数歩分の歩行データから、歩き方を生み出す「報酬構造」(注2)と脚の協調則を、人の設計なしに抽出しました。
- 平地の歩行データのみを教師としながら、凹凸地形や脚を1本失った状況でも、生物に近い柔軟な脚の協調(注3)が現れました。
- 昆虫から抽出した報酬構造は、体格も構造も異なる六脚ロボットへ移植でき、歩行学習を約3倍高速化しました。
- 実機の六脚ロボットによる実証に成功し、災害現場など未知の環境にも柔軟に対応可能な多脚ロボットの実現につながります。
【概要】
瓦礫の山やでこぼこの地面は、車輪では越えられません。そこで期待されるのが多脚ロボットですが、脚が増えるほど制御は難しく、歩き方のルールを人が設計する必要がありました。一方、昆虫は約20万個の神経細胞(ヒトの脳は約860億個)で、地形の乱れや脚の欠損にも即座に対応して歩き続けます。
東北大学大学院工学研究科の王 昱晨(ワン ユチェン)日本学術振興会特別研究員(DC2)、大脇大准教授らの研究グループは、タイ王国ウィタヤシリメティー科学技術大学院大学(VISTEC)のPoramate Manoonpong(ポラメート マヌーンポン)教授らとの国際共同研究により、ナナフシのわずか数歩分の歩行データから、歩行を生み出す報酬構造と脚の協調則をAIが抽出する枠組みを構築しました。抽出した報酬構造は体格の異なる六脚ロボットへ移植でき、実機での歩行も実現しました。
本研究成果は、2026年8月11日に英国物理学会出版局(IOP Publishing)の科学誌Bioinspiration & Biomimeticsに掲載されました。
図1. ナナフシの歩行データから移植可能な歩行制御則を学習する枠組み
【用語解説】
注1. ナナフシ:木の枝に擬態した細長い体をもつ昆虫。本研究では学名Medauroidea extradentataの歩行データを用いた。柔軟で高度に協調した六脚歩行を示すため、歩行研究のモデル生物として広く用いられている。
注2. 報酬構造(報酬関数):学習において「何を良しとするか」を数値で表したもの。強化学習では通常これを人が設計するが、本研究では昆虫の歩行データから逆向きに推定した。
注3. 脚の協調(脚間協調・脚内協調):複数の脚どうしのタイミング関係を脚間協調、一本の脚に含まれる複数の関節どうしの連係を脚内協調と呼ぶ。両者の組み合わせが、昆虫の適応的な歩行を生み出している。
【論文情報】
タイトル:From insect behavior to transferable robot locomotion: inferring embodied locomotor principles from limited data via adversarial inverse reinforcement learning
(和訳:昆虫の行動から移植可能なロボット歩行へ -敵対的逆強化学習による限られたデータからの身体性歩行原理の推定-)
著者:Yuchen Wang, Chuthong Thirawat, Mitsuhiro Hayashibe, Poramate Manoonpong, Dai Owaki*
*責任著者:東北大学大学院工学研究科ロボティクス専攻 准教授 大脇大
掲載誌:Bioinspiration & Biomimetics(IOP Publishing)
DOI:10.1088/1748-3190/ae901f
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院工学研究科
准教授 大脇 大(おおわき だい)
TEL: 022-795-4064
Email: owaki*tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
担当 沼澤 みどり(ぬまざわ みどり)
TEL: 022-795-5898
Email: eng-pr*grp.tohoku.ac.jp(*を@に置き換えてください)

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