2026年 | プレスリリース・研究成果
結氷下北極海における動物プランクトン生態を通年解明 ―優占カイアシ類の幼生から成体までの年間生産量を世界で初めて算出―
【本学研究者情報】
〇大学院農学研究科 教授 山口篤
ウェブサイト
【発表のポイント】
- 極夜(冬)を含む周年海氷下での連続採集試料を用い、西部北極海における優占動物プランクトン「メトリディア・ロンガ(Metridia longa)」の生活史と全発育段階(幼生~成体)に基づく生産量を解析しました。
- 本種の年間生産量は、北太平洋などの他海域の同属種に比べて約35%と低い値にとどまることが明らかになりました。
- 本研究は、急速に海氷減少が進む北極海生態系の将来予測における重要な基礎指標となります。
【概要】
地球温暖化に伴い北極海では海氷の融解エリア拡大や融解期間の長期化が進んでおり、海洋生態系の基盤を支える生物群集への影響が懸念されています。しかし冬季の厳しい海氷環境のため、海洋生態系で重要な役割を果たす動物プランクトンの生態に関する年間を通したデータは極めて限られていました。
東北大学大学院農学研究科の山口篤教授、ムハンマド・イザット・ヌグラハ助教、西谷豪准教授、北海道大学大学院水産科学研究院、米国ウッズホール海洋研究所、ロードアイランド大学の国際研究グループは、西部北極海で1年間にわたり実施された氷上基地での連続採集試料を解析しました。その結果、動物プランクトン優占種の大型カイアシ類(注1)である Metridia longa の幼生(ノープリウス期)(注 2)から成体に至る全発達段階の鉛直分布・個体群構造および年間生産量を解明することに世界で初めて成功しました。
本研究成果は、通年海氷下における動物プランクトン生産の貴重な基準データとなり、温暖化に伴う北極海の海氷減少が海洋生物資源や物質循環に与える影響を評価・予測する上で重要な基盤となります。
本研究成果は、2026年9月18日付(現地時間)で海洋科学分野の国際学術誌Frontiers in Marine Scienceに掲載されました。
図1. 西部北極海における漂流氷上基地(SHEBA)の移動軌跡と調査位置。1997年10月〜1998年9月にかけ、ボフォート海からカナダ海盆にかけて漂流しながら通年観測が実施された。
【用語解説】
注1. カイアシ類(コペポーダ):体長数ミリメートル程度の小型甲殻類。海洋の動物プランクトンの中で最も数が多く、海洋生態系における一次生産(植物プランクトン)と高次生産(魚類や鯨類など)をつなぐ重要な生物群。
注2. ノープリウス(Nauplius):カイアシ類などの甲殻類が卵から孵化した直後の初期幼生段階。脱皮を繰り返しながら成長し、コペポダイト期(幼体)へと進む。
【論文情報】
タイトル:Production estimates of the dominant copepod Metridia longa from nauplii to adults in the western Arctic Ocean, based on year-round observations at an ice station
著者:Yunosuke Koguchi, Dongwoo Kim, Muhammad Izzat Nugraha*, Carin J. Ashjian, Robert G. Campbell, Rubao Ji, Goh Nishitani, Atsushi Yamaguchi*
*責任著者:東北大学大学院農学研究科 助教 ムハンマド・イザット・ヌグラハ
東北大学大学院農学研究科 教授 山口 篤(研究当時・北海道大学大学院水産科学研究院)
掲載誌:Frontiers in Marine Science
DOI:10.3389/fmars.2026.1864171
問い合わせ先
(研究に関すること)
東北大学大学院農学研究科生物海洋学分野
教授 山口 篤
TEL: 022-757-4243
Email: a-yama*tohoku.ac.jp(*は@に置き換えてください)
(報道に関すること)
東北大学大学院農学研究科広報室
Email: agr-koho*grp.tohoku.ac.jp(*は@に置き換えてください)

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