ファイバーで
脳の謎を解き明かす
好奇心が、すべての原動力です。
現在、多機能ファイバーに焦点を当てた研究を行われています。
これらのファイバーでどのようなことができるのか、教えていただけますか。
脳が実際にどのように機能しているかを理解するためには、その活動を非常に高い精度で探るツールが必要です。私は研究室を立ち上げた当初、博士課程における研究で開発した多機能ファイバーをさらに進化させたいと考えていました。
これらのファイバーは、革新的な方法で脳と相互作用するように設計されています。光で神経細胞を刺激したり、電気信号を記録したり、微細な流体チャネルを通じて薬剤を投与して神経細胞の挙動に影響を与えたりすることができます。
その後、私たちはその機能を拡張してきました。このファイバーは現在、磁気刺激やプラズマ刺激、さらには組織内で微妙に動くことを可能にする機械的な作動さえも行うことができます。それぞれの機能は、脳の複雑なコミュニケーションシステムへの新しい窓を提供してくれます。
まさに究極のインターフェースのようです。
この技術でどんなことを目指していますか。
私たちは、脳とできるだけ自然に、そして正確に相互作用できるツールを作りたいのです。脳は、電気信号、化学信号、機械信号などの多次元的な信号を同時に使ってコミュニケーションを取っています。私たちの目標は、これらの異なる種類のコミュニケーションをリアルタイムで計測し、モジュレーションできるファイバーを設計することです。
そうすることで、脳機能をより深く理解でき、神経疾患や精神疾患の治療に役立つ技術に貢献したいと考えています。最終的な目標は、私たちの脳をはじめとする生体システムとシームレスに統合できるファイバー技術を作り出すことで、脳がどのように機能しているかについて、より深い理解を可能にすることです。
この技術は脳以外にも
応用できるということでしょうか。
はい、現在はファイバーを布地に織り込むことで、ウェアラブルな応用も模索しています。これらの「スマートファイバー・テキスタイル」は、汗や筋肉活動などの生体信号を分析できます。身体と脳の両方からのデータを研究することで、脳と身体の相互作用、例えば、私たちの身体状態が精神状態にどのように影響するか、またその逆についても理解し始めることにつながります。
私たちは、脳そのものに限定せず、その外側、つまり生体システム全体に目を向けることで、人間の生理機能のより完全な全体像が得られると信じています。
ファイバーに関する研究の道のりは
どのように始まったのですか。
博士課程から始まりました。神経細胞を研究しているその活動を記録するためのファイバーを開発していたときのことです。私たちは、不安や精神障害に関連する神経活動の挙動を調べていました。その間、アストロサイトという別の種類の細胞を不安症などの精神疾患に関わる神経活動をモジュレーションしているかもしれないことを発見しました。
アストロサイトは神経細胞のような電気的活動を持たないため、これらはしばしば脳の「糊(のり)」と呼ばれ、長らく見過ごされていました。しかし、カルシウムインジケーターなどの新しいイメージングツールによって、アストロサイトと神経細胞を相互作用しており、精神障害において重要な役割を果たす可能性があることが明らかになってきています。
この発見により、このような複雑な細胞間の相互作用を詳しく研究するためには、より優れたツール、つまり、神経細胞やアストロサイトなどの脳内の多種多様な細胞における電気・化学・光などの多次元的な信号を包括的に計測・操作するツールが必要であることに気づきました。その気づきが私を神経工学技術開発へと立ち戻らせるきっかけとなりました。
アストロサイトの研究が
新しい技術開発への移行を促したのですね。
その通りです。アストロサイトを最初に研究したとき、私は光遺伝学のツールを使ってアストロサイト活動を操作しました。しかし、これらは元々神経細胞に向けに設計されており、アストロサイトは同じようには電気的な活動をしません。電気信号を発火させないのです。
このことから、私たちはどこかから応用されたものではなく、生物学そのもののために設計された技術が必要だと考えるようになりました。それが、新たな多機能ファイバーの開発を始めたきっかけです。つまり、自然な脳のコミュニケーションをそのままに読み出すツールを開発したいです。
Image courtesy of Tohoku University and Studio Xxingham
Image courtesy of Tohoku University and Studio Xxingham
学際科学フロンティア研究所(FRIS)は学際的な環境で知られています。
ファイバー研究にも影響を与えましたか。
FRISで8年間過ごしましたが、創造性を発揮する素晴らしい環境であると断言できます。FRISは、エンジニアリング、材料科学、生物学、物理学の研究者を結集させています。このような学際的な環境は、オープンマインドで尽きることのない好奇心を生み出します。異分野の先生方との共同研究に直接つながらなかったとしても、廊下でのちょっとした会話が新しいアイデアを生むことがあります。
素晴らしい例の一つが、磁気刺激を可能にするファイバー上のマイクロコイルです。それは「ファイバーの内部にマイクロスパイラルパターンを作ることができるだろうか?」という基本的な疑問から始まりました。マイクロスパイラルパターンの形成に成功すると、それらが磁気コイルとして機能することに気づきました。その後、神経培養細胞を研究しているFRISの同僚と共同研究を行い、初期ではありますが、非常に面白い結果が得られました。このプロジェクトは昨年始まったばかりです。現在はin vivo(生体内)研究の準備を進め、長期的な研究を継続できるように予算申請も行っています。
マイクロコイルファイバーは非常に魅力的ですね。
次の展開はどうなるでしょうか。
とてもワクワクしています。それらは科学的にも美的にも印象的な複雑な構造です。この技術は特許を取得しており、すでにいくつかの企業が強い関心を示しています。
さらに、私たちは沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者と協力し、タコの睡眠パターンに応用したいと思っています。私の共同研究者の一人が、タコが人間と同じように深い眠りと浅い眠りを経験することを発見しました。しかし、人間と異なり、タコの皮膚は睡眠の状態に応じて皮膚の色や模様が変わります。私たちのマイクロコイルが、この魅力的な行動を理解したり、さらにはモジュレーションしたりするのに役立つかどうかを確認したいと考えています。
研究におけるモチベーションの源は何ですか。
また、若い科学者へのアドバイスをお願いします。
好奇心こそが、すべての原動力です。実験が失敗したときでさえ、好奇心が私たちを学び続け、前進させてくれます。
若い研究者への私のアドバイスは、自分の情熱を見つけ、決して諦めないことです。特に若く、オープンマインドでいられるうちに、挑戦し続けてください。年を重ねると、思考が固定化されてしまうことがあります。しかし、発見には柔軟性と好奇心が必要です。それらがイノベーションの鍵です。
研究室の外では、どのようにリラックスして過ごされますか。
夏はサーフィンに行くのが好きで、冬はスキーやスノーボードを楽しんでいます。
写真:多機能ファイバーの束。
郭 媛元
郭媛元准教授は、脳の働きを明らかにするための最先端技術を開発しています。東北大学大学院医工学研究科の博士課程在籍中、マサチューセッツ工科大学(MIT)とバージニア工科大学に留学し、光ファイバーを製作する技術である熱延伸技術と出会い、脳とインターフェースするための柔軟な多機能ファイバーの創出に取り組み始めました。これらの髪の毛ほどの太さしかないファイバーは光学、電気、化学などの機能を統合しており、さらに、電界効果型半導体イメージングセンサーと組み合わせることで、新たな脳内多様な活動をセンシング・イメージングにするツールです。
FRISにおいては、郭准教授はin vitro(試験管内)、in vivo(生体内)、そしてウェアラブルな応用全体で、生体内・外と繋ぐ多機能ファイバーをさらに発展することに力を注いでいます。基礎神経科学のための多機能ファイバー神経プローブの開発に加え、臨床医と密接に連携し、これらの技術を実用的な医療ツールに転換する可能性も積極的に模索しています。また、多機能ファイバーをテキスタイルに統合し、人間の生体信号の非侵襲的にセンシングとモジュレーションを可能にすることも取り組んでいます。さらに、ミクロスケールにおいては、独自の微量な生体試料分析のために「Lab-in-Fiber」システムを含む、新しい多機能ファイバーの応用領域を開拓しています。これらの取り組みを通じて、多機能ファイバーを生体システムと複数の領域でインターフェースでき、バイオファイバートロニクスという新しい学際的分野の確立を目指しています。

Translation: Waka Kuchimachi
Romance
of
Research