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令和4年4月東北大学入学式祝辞

【はじめに】

東北大学に入学された皆さん、おめでとうございます。本日ここに、学部生2,484名、大学院生2,419名、合計4,903名の皆さんを本学に迎えることができたことは、私たちの大きな喜びです。東北大学を代表して、皆さんの入学を心より歓迎いたします。

また、この間、皆さんが晴れて入学する日を心待ちにし、これまで皆さんの勉学をさまざまな形で支え、また励ましてこられたご両親、ご家族、そして関係者の皆様に、心よりお喜びを申し上げます。

東北大学に入学した皆さんが一堂に会する形で、3年ぶりに入学式を実施することができました。対面で皆さんを迎えることができて、本当に嬉しく思っています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症への警戒と対策は、今後も怠ることはできません。皆さんが安心して学生生活を送ることができるよう、大学も引き続き万全の対策を行っていきます。皆さんも感染防止対策をお願いします。なお、本日のこの入学式の模様は、皆さんの入学をお祝いする関係の方々にもご覧いただけるよう、本学のホームページで配信しています。

皆さんはこれから始まる大学生活への期待にいま胸を膨らませていることでしょう。ぜひその思いを行動に移してください。専門を究める、グローバルな視点で社会とかかわる、課外活動に取り組むなど、やってみたいと思うことに取り組み、自分を深め、仲間や先輩・後輩あるいは社会とつながっていってください。すでに自分の方向が定まっている人にも、まだ方向を模索している人にも、東北大学は、皆さんが成長し、自らを高めていくことを後押しするさまざまな仕組みや環境を用意しています。私たちの重要な使命は、「学生諸君の挑む心を受けとめ、伸ばすこと」であるからです。

【東北大学とはどのような大学か:「研究第一」主義と「総合知」の重視】

さて、それでは東北大学とは、どのような大学であるかについてお話しします。東北大学は、今から115年前の1907年に、この「杜の都」仙台の地に、東京と京都に次ぐ第三の総合大学として創設されました。そして、今からちょうど100年前の1922年に、本学に既に開設されていた理学部、医学部、工学部に加えて、法文学部の開設が決定されました。東北大学が人文社会系を含めた「総合大学」としての歩みを始めてから今年は100年という記念すべき年になります。その間、本学は「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の理念の下で、世界をリードする研究成果をあげると同時に、多くの指導的人材を世界に輩出してきました。

現在では、東北大学は10の学部と15の大学院研究科、3つの専門職大学院、6つの附置研究所と病院、附属図書館をはじめ、教育研究に携わる多くの機構やセンターを有する日本を代表する世界有数の総合研究大学として発展を遂げています。

理念の一番目、「研究第一」主義は、初代総長・澤柳政太郎が最初の入学式で「我東北大学はこの点(研究)に於いては(世界の)何れの大学にも退けを取らざる覚悟なり」と述べたことが源流となっています。研究大学と自ら規定したわが国で最初の大学です。

世界第一流の研究こそが東北大学の最も重要なミッションであり、本学の教育も含めた活動の基盤であって、社会の信頼もそこに基づいているという理念は、脈々と受け継がれ今日まで本学の最も重要な伝統として息づいています。

ここでいう「研究」は、文理を問わず、私たちが物事を探求し、その真理を明らかにして、その先につなげていく知的営みを指しています。東北大学を卒業、修了するころには皆さんがすべからく身につけていることでしょう。そもそも、本学では設立当初から、一般教養が設けられていました。その中にある「科学概論」は、現在で言えば「科学哲学」にあたります。東北大学は当初から進取の気風をもって幅広い「総合知」をはぐくむ場であったのです。

地球規模課題をはじめとする現代社会が直面する諸問題は、従来の伝統的な学問体系のみでは解くことが困難な課題です。このような新しい課題に挑戦するためには、これまでの常識や慣習にとらわれない新たな「知」が求められます。「総合知」の重要性が社会的にますます高まっているのです。これを受けて本学では、この4月から、新たな体系による教育カリキュラム、すなわち現代的なリベラルアーツを体系的に整理した1年生から大学院までを接続する教育プログラムを実施します。数理データ科学や地球規模課題、実践的で体系的な外国語といったグローバルな社会で活躍するための素養を体系的に身に付けることができます。

【東北大学における「門戸開放」の意義と成果】

次に、理念の二番目「門戸開放」についてお話しします。これは、今の言葉で言えば多様性、公平性、包摂性、そしてそれらの力を信じるということです。

「門戸開放」に関しては、東北大学は1913年に、3名の女子学生、黒田チカ、丹下ウメ、牧田らくの入学を認めました。わが国で初めて女子の大学生が誕生したのです。化学を専攻した黒田チカと丹下ウメは、日本を代表する女性化学者として長く活躍しました。また、本学は設立当初から、旧制高等学校以外の卒業生にもその門戸を開いてきました。ここからはのちの東大総長茅誠司や東海大学の創始者である松前重義が出ています。さらに、中国の文豪である魯迅が本学医学部の前身である仙台医学専門学校に留学生として学んでいたことは広く知られています。1世紀以上の長きにわたり、東北大学は、性別や出身校、国籍等にとらわれず幅広く優秀な人材を世界から受け入れてきました。昨日発出したダイバーシティー、エクイティー、インクルージョン宣言を含め、本学は、現代的な「門戸開放」の実現に今まさに取組んでいるところです。

【「実学尊重」:「知」の成果による社会価値の創造】

三番目は「実学尊重」です。現代的に言うと「社会価値の創造」です。イノベーションの創出とさまざまな地球規模の社会課題の解決は、大学が取組むべき最も重要な役割として社会から強く期待されており、これから大学や大学院での学びを始める皆さんに社会が期待していることでもあります。

この10年ほどの間の社会の出来事を振り返ると、2011年に発生した東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。東北大学は、被害からの復興に取り組み、その10年間の活動を基盤に、グリーンな未来を創造するグリーン未来創造機構の設置へとつなげました。災害科学の確立、気候変動とカーボンニュートラルへの道、さらには感染症への対応など、私たちが解を見つけなければならない課題は多くあります。

さらに、本年2月に始まったロシアのウクライナへの侵略は、私たちが享受してきた平和が、所与のものではないことを改めて明らかにしました。皆さんも連日報道されているウクライナの悲惨な状況に、心を痛めているものと思います。人間にとって共感する力は、具体的な行動を起こす原動力となります。東北大学では、今回の事態で深刻な被害を受けた関係者やそのご家族への支援にまず取り組んでいます。世界中から優秀な学生と教職員が集うグローバルな研究大学である本学にとって、ウクライナをめぐる情勢は、「海の向こうの遠い国の出来事」ではないからです。

一方、今日のウクライナ、そしてこれまでに起こった紛争と大量の避難民が母国を離れざるを得なくなる事態は、国際秩序の基本構造への深刻な問いを提起しています。このような事象が発生する理由と要因、発生を防ぐ方法、発生した場合の効果的な救済システムのあり方、といった多くの検討すべき重要な課題があります。私たち人類は、これらの難しい社会課題に挑戦し、解決に向けた青写真と処方箋を創出する必要があるのです。

【東北大学コミュニティの一員として――萩友会と東北大学基金、学友会各部の活躍】

東北大学では、学生やその保護者の皆様、卒業生、教職員など東北大学コミュニティをつなぐ全学組織として「萩友会」が設立されており、日本全国や海外の国や地域にも支部が設けられて、活発な活動を展開しています。また、学生の皆さんの教育研究活動を経済的に支援するため「東北大学基金」も設けられています。

また、東北大学では、学友会の体育部や文化部などの活動も非常に活発で、素晴らしい成果を上げています。全国の国立七大学が持ち回りで開催する「全国七大学総合体育大会」(いわゆる「七大戦」)では、本学の学友会体育部の各部が目覚ましい活躍をしており、2013年から2015年までと2017年から2019年まで、それぞれ3連覇を果たしました。優勝回数も、東北大学は合計15回と最多となっています。新型コロナウイルス感染拡大のため、2020年と2021年の七大戦は残念ながら中止となりましたが、七大戦史上初の4連覇と最多優勝を目指して、今年の七大戦での東北大学の学生諸君の活躍を期待したいと思います。新入生の皆さんにも、是非これらの活動にも積極的に参加し、充実した学生生活を送ってもらいたいと思います。

【留学生へのメッセージ】

さて、今年も、東北大学には海外から多くの留学生が入学しました。ここで、海外から本学に入学した日本語を母語としない留学生のために、英語でお祝いの言葉を述べたいと思います。

I would like to take this opportunity to address our non-Japanese speaking students who become a member of the Tohoku University community.

Welcome to Sendai, and welcome to Tohoku University.

I am very delighted to meet you in person here at this Entrance Ceremony because we could not have this Ceremony in recent two years owing to the Covid-19 pandemic.

As you may know, the academic year in Japan starts in April under the cherry blossom blooms, and it is indeed my great pleasure to have this Entrance Ceremony of Tohoku University in this April.

Tohoku University was founded in 1907 here in Sendai as a third national university in Japan. The year 2022 marks the 115th anniversary of Tohoku University's founding. It has also been 100 years since the inclusion of humanities and social sciences as part of our faculty marking the start of our history as a comprehensive university.

Tohoku University is renowned for its outstanding achievements in basic science, technological innovation, humanities, and social science. For instance, Judge Shigeru Oda, who was a Tohoku University Professor of international law, contributed greatly to the peaceful settlements of international disputes, which we desperately need today, to serve as a Judge of the International Court of Justice in the Hague, the Netherlands.

Since its foundation, Tohoku University has been renowned for its "open door" policy and "research first" principle, and it has been a research-centered, practice-oriented institution that values innovation and diversity. We were Japan's first university to accept female students in 1913, and we have accepted for a long time many talented young people regardless of their gender, nationality, and educational background.

Our 'Research First' principle called upon our faculty members to pursue highly creative studies and we nurtured a tradition of the creation of social values in which the results of cutting-edge research are used for the good of society.

Our "Open Door" policy in which we strongly believe in the value of "diversity" remains very much intact today as we strive to become one of the world's great research universities.

I am confident that your time at Tohoku University will be intellectually stimulating and emotionally fulfilling. You will meet people from many backgrounds and diverse cultures and things from different perspectives. You might be confronted with a lot of information, experiences, and, sometimes, difficult challenges. But just remember, all of us, our faculty members, staffs, and students are here to help and support you.

Congratulations on your entrance to Tohoku University, welcome to the Tohoku University community.

【結びの言葉】

東北大学は、次世代の有為な人材である皆さんの入学を心から歓迎いたします。東北大学での学業と研鑽が実り豊かなものとなること、また皆さんがさらに大きく成長されることを心から期待して、私のお祝いの言葉といたします。

令和4年4月6日


東北大学総長

大野 英男


里見進前総長メッセージはこちらよりご覧ください。

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