Si-ence との絆
私の目標のひとつは、
有機化学と典型元素化学の掛け合わせで、
新しい分子科学を切り開くことです。
ご自身の研究を専門家ではない人に
どのように説明しますか?
私は有機化学者で、有機化学の視点でケイ素(シリコン、Silicon)の化学を中心に研究しています。ケイ素は天然に非常に豊富に存在する元素で、多くの岩石や石はケイ素でできており、無機化合物や材料にとって代表的な元素です。
私たちの日常生活でも
ケイ素はたくさん使われていますね。
はい、ケイ素はコンピューターや携帯電話に使われる半導体の材料にもなります。また、無機物と有機物の中間的な有機ケイ素材料であるシリコーン(Silicone)のような役立つ材料も生み出します。シリコーンは柔らかい素材でありながら、熱に非常に強いという特性を持っています。そのため、自動車エンジンのシールやカバー、電子レンジに入れるカップの蓋などに使われています。シャンプーに使われて髪を滑らかにするのにも役立っているんですよ!
最近では、ジェットエンジンのタービンにも使われています。これらのタービンはかつて、非常に重いニッケル合金で作られていました。しかし今は、はるかに軽く、極めて耐熱性に優れた炭化ケイ素(SiC)繊維を用いた材料が用いられるようになり、ジェット燃料の消費量削減にもつながっています。この炭化ケイ素繊維は有機ケイ素化合物から作られたものです。このように、新しいケイ素化合物や材料を開発することは、社会に大きく貢献しうるものであり、それが私の仕事です。
テーマに興味を持ったきっかけは
どのようなことでしたか?
学部生のとき、指導教員の櫻井英樹先生と吉良満夫先生から、ケイ素は周期表で炭素と同じグループに属しているにもかかわらず、必ずしも炭素と同じような化合物を形成できるわけではないということを教わり、その理由に非常に興味を持ちました。当時、炭素の化学では一般的な二重結合や三重結合を持つケイ素化合物の例はほとんどありませんでした。理論的には、そのようなケイ素化合物の構造は、炭素化合物とはかなり異なることが予測されていました。私は、なぜケイ素やその他の14族元素が異なる構造を形成するのかを理解したいと考えました。
岩本先生の好奇心は
純粋に学術的なものでしたか、
それとも興味をもつことになった
出来事がありましたか?
その両方です。子供の頃、山や野原の近くに住んでいて、植物や昆虫がなぜ異なる形や色をしているのかということに、とても興味を持っていました。例えば、松の木は針のような葉を持つ一方で、イチョウの木は扇形の葉を持っています。木の枝や小さな生き物の形も好きでした。
今、研究者として、子供の頃の
そうした疑問に対する答えを見つけましたか?
いくつかについては、答えを見つけました。例えば、野菜の色は中に含まれる有機化合物に由来するもので、二重結合の数に左右されることが分かっていますし、昆虫の色は、表面の構造的特徴によって生まれている場合が多いことも知りました。しかし、もちろん、まだ分かっていないこともたくさんあります。旅先などで、奇妙な植物や昆虫を見かけたときは、今でも「なぜそのような形をしているのだろう」と考えてしまいます。
Image courtesy of Tohoku University and Studio Xxingham
Image courtesy of Tohoku University and Studio Xxingham
自らの研究が最も大きな影響を与えると
期待している技術分野は何ですか?
一つは半導体です。現在、岩石から半導体へとケイ素を変換するには、莫大な量の電気と熱が必要ですが、これは環境に負担をかけます。一部のケイ素化合物は、そのような極端な条件を必要とせずに、半導体の良い原料として活用できる可能性があります。私の目標の一つは、より環境に優しく持続可能な方法で半導体を作ることです。
研究室で新しく作った材料が、
全く予期せぬ特性を示したことはありますか?
以前、ある目的の化合物を合成しようとしていたとき、それを首尾よく得ることができたのですが、同時に副生成物として非常に珍しい化合物も得られました。その化合物は、有機化学では見られない構造を持っていたのです。それは、ケイ素がときに炭素では不可能な構造を形成できることを示しており、大きな驚きでした。
オフィスには奥様が作られた
周期表のタペストリーがあるそうですね。
科学への興味はご家族にも
受け継がれているのでしょうか?
このタペストリーは私の妻が学生時代に作ったものです。妻も私と同じ学科で化学を学び、現在は化学産業の特許翻訳の仕事をしています。家族との会話では化学が話題になることが多く、家族が私の研究をとても応援してくれているので幸運だと思います。
どのように心身をリフレッシュし、
気分転換していますか?
数年に一度、海外へシュノーケリングに行き、海の生き物を観察しています。通常は一週間ほど行くのですが、最初の二、三日はまだ仕事のことを考えています。しかし、その後は仕事のことを忘れて、シュノーケリングやトロピカルフードを楽しんでいます。このような旅行の後には、研究のための非常に良い新しいアイデアがよく浮かぶので、大切な時間です。また、温泉に行くことやドライブも楽しんでいます。
写真:妻による手作りの周期表の刺繍。元素間に新しい結合を持つ新分子材料の緻密な構造を彷彿とさせます。
岩本 武明
岩本武明教授は、分子典型元素化学の専門家です。彼の研究は、珍しい典型元素化合物の創製と、それらの反応性や物理的特性の追究です。
東京で生まれ、横浜で育ちました。子供の頃は、自然に魅了され、後に哲学、物理学、化学に強い関心を抱くようになりました。東北大学入学以降仙台で過ごし、1993年に学士号、1995年に修士号、1998年に博士号を、すべて化学の分野において、東北大学で取得しました。岩本教授は現在、大学院理学研究科の副研究科長も務めています。

Translation: Waka Kuchimachi
Romance
of
Research