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令和5年4月東北大学入学式祝辞

東北大学に入学された皆さん、東北大学大学院に進学された皆さん、おめでとうございます。本日ここに、2,481名の新入生、2,470名の大学院生の皆さんを本学に迎えることができたことは、私たちの大きな喜びです。東北大学を代表して、皆さんの入学・進学を心より歓迎いたします。

また、この間、皆さんが晴れて入学・進学する日を心待ちにし、これまで皆さんの勉学を様々な形で支え、また励ましてこられたご両親、ご家族、そして関係者の皆様に、心よりお喜びを申し上げます。

今年は、4年ぶりに新入生・大学院に進学する皆さんのご家族にもご参加いただいて挙行しています。この晴れの場に、多くの皆様にご出席いただくことができ、私たちも大変嬉しく思っています。また、本日の模様は、本学ホームページを通じてライブ配信もしています。

東北大学とはどのような大学か

さて、ここで東北大学についてお話ししましょう。東北大学は、今から116年前の1907年に、この「杜の都」仙台の地に、東京と京都に次ぐ第三の大学として自治体と民間の支援も受けて創設されました。本学が「社会とともにある大学」である原点がここにあります。また、1922年には、法文学部の開設が決定され、「総合大学」として100年の歴史を刻んできました。現在では、東北大学は10の学部と15の大学院研究科、3つの専門職大学院、6つの附置研究所と病院、附属図書館をはじめ、教育研究に携わる多くの機構やセンターを有する世界有数の総合研究大学として発展を遂げています。この間、本学は「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」の理念を掲げ、世界をリードする研究成果をあげると同時に、多くの指導的人材を世界に輩出してきました。

先日、本学の「研究第一」を体現する飯島澄男博士、佐川眞人博士とシンポジウムでお話しをする機会がありました。飯島博士は、電子顕微鏡を極められた専門家で、知的好奇心に駆られて研究を進める中でカーボンナノチューブを発見しました。カーボンナノチューブは炭素からできている世界最小の筒で、軽くて強度が高く、電流を通しやすく大電流を流しても壊れないなどの特徴があります。佐川博士は、鉄を使った強力な磁石を開発するという大きな目標を立て、その方針の下で今日最強の永久磁石であるネオジム磁石を世に出しました。研究は、飯島博士のように知的好奇心に駆動される研究と、佐川博士のように方向を見極めて開発に取り組む研究に大別されますが、どちらも卓越性を追求するという点で共通しています。

「研究第一」の伝統の背後には、高いスタンダードを求める精神があります。私自身も研究を進めるにあたって、東北大学に脈々と息づく高いスタンダードに見合った研究ができているのか、常に緊張感をもって見直してきました。現在、世界のすべてのハードディスクが採用している垂直磁気記録方式を発明した岩崎俊一特別栄誉教授は、教授就任時に、先輩たちと同じ水準の成果を挙げることができるか不安に思ったと話されていました。また、岩崎先生と同じく本学特別栄誉教授で国際司法裁判所裁判官を3期27年にわたり務められた小田滋先生も、同様のことを述懐しておられます。それらを伺ったとき、高いスタンダードを求める「研究第一」の理念が代々受け継がれていることを実感したものです。

なお、「研究第一」は、一流の研究こそが一流の教育を可能にする、ということも意味しています。「研究第一」を1世紀以上にわたって掲げ、その理念に基づく教育を長年にわたり実践してきた本学が、教育力で高く評価されていることは決して偶然ではありません。

次に「門戸開放」に関してお話ししましょう。1913年に東北大学は我が国の大学として初めて、3名の女子学生の入学を認めました。性別や国籍などにとらわれず優秀な人材を世界から受け入れる本学の「門戸開放」の理念は、現在の言葉でいえば「多様性」の尊重と推進です。本学は、昨年4月に「東北大学ダイバーシティ、エクイティ(公正性)& インクルージョン(包摂性)推進宣言」(東北大学DEI推進宣言)を発表し、全ての構成員がダイバーシティを尊重し、かつ、全ての構成員のダイバーシティが尊重されるキャンパス環境の構築を進めています。

次に「実学尊重」について述べましょう。これは、今日の言葉で言うと社会価値の創造です。東北大学は、「社会とともにある大学」であることは先に触れました。大学で得られた研究成果を産業界や社会との共創を通して、社会の発展と人々のウェルビーイングのために役立てること、すなわち社会価値の創造は、東北大学が果たしてきた重要な役割の一つです。2011年の東日本大震災は、本学の長い歴史の中でも、そして日本全体としても決して忘れることのできない出来事です。この大震災の経験とその後の復興・新生の取り組みにより、本学が「社会とともにある大学」であることを学生、教職員が改めて深く胸に刻むこととなりました。特に、本学が重点的に取り組んでいる災害科学の分野では、災害や危機などを受けとめ跳ね返す力、すなわち社会のレジリエンスを一層向上させるべく、文理融合の研究や、国際社会の枠組みへの提案、国際標準の制定など幅広い活動を行っています。また、環太平洋地域の大学の中心となって、若手研究者や学生に災害科学の普及活動も進めています。東北大学はこのように従来の大学という枠組みを大きく超え、社会が必要とする課題解決やイノベーションに正面から取り組み、社会や世界における活動を進めているのです。

東北大学に対する社会の評価と学生の目覚ましい活躍

さて、新入生諸君の多くは、3年間の高校生活の大半をコロナ禍のさまざまな制約の下で過ごしたものと思います。本学では、この4月からマスクの着用を原則として任意とし、以前の学生生活がいままさに戻ってきました。

本学では、この間のさまざまな制約にもかかわらず、学友会の体育部や文化部などの課外活動が素晴らしい成果を挙げています。全国の7つの主要国立大学の学生が各種目で熱戦を繰り広げて総合成績を競う「全国国立七大学総合体育大会」(いわゆる七大戦)で、昨年本学は総合優勝を遂げ、史上初の4連覇を果たしました。2022年までの10年間では、新型コロナウイルスの影響で開催が中止となった2年間を除く8回のうちの実に7回にわたり、本学が総合優勝を遂げているのです。ちなみに優勝回数でも本学は第1位です。この例に代表されるように、本学の学生諸君の活躍には目を見張るものがあります。

ぜひ、皆さんにおかれては、勉学や課外活動など、広くやってみたいと思うことを積極的に進めてください。専門を究めるとともに、留学する、仲間とイベントを企画する、スタートアップを始めるなど、社会に関わる様々なことに挑戦してください。皆さんの未来を切り拓く力、そして、気候変動、地政学的な変化など不確実性が増している社会の未来を切り拓く原動力は、このような皆さんの挑戦から出てくるのです。東北大学は「学生諸君の挑む心を受けとめ、伸ばす」大学です。東北大学というこの舞台を存分に活用して、皆さんが大きく飛躍を遂げることを期待しています。もちろん、皆さんとともに東北大学自身も新たな時代の変革に果敢に挑戦していきます。

2週間ほど前、教育に焦点をおいたTHE(タイムズ・ハイヤー・エデュケーション)日本大学ランキング2023が発表されました。東北大学は、そこで4年連続して日本一という評価を受けました。ランキングが大学の価値を決めるものではありませんが、このような本学に対する社会の高い評価は、東北大学が長い歳月をかけて、学生はもとより高校教員の皆さんや保護者の方々などと対話を重ね、入学選抜方法や教育内容の改善を地道に、かつ着実に積み重ねてきたことの結果と考えています。

東北大学では、学生や保護者の皆様、卒業生、教職員など東北大学コミュニティをつなぐ全学組織として「萩友会」が設立されています。この萩友会は、日本全国及び海外の国や地域に多くの支部が設けられ、活発な活動を展開しています。また、学生の皆さんのさまざまな活動を経済的に支援するため、「東北大学基金」も設けられています。今日から皆さんは、この東北大学コミュニティの重要な一員となったのです。

留学生の皆さんへ

さて、今年も、東北大学には海外から多くの留学生が入学しました。ここで、海外から本学に入学した日本語を母語としない留学生のために、英語でお祝いの言葉を述べたいと思います。

I would like to take this opportunity to address our non-Japanese-speaking students. Welcome to Sendai, and welcome to Tohoku University.

I am delighted to greet you in person here at this Entrance Ceremony today. Although we still need to be mindful, wearing masks is now optional on campuses. However, please respect each other's decision whether to wear one. We are, after all, proud to be an inclusive community, respectful to each other.

This respect for one another, the promotion of equality, justice, and inclusion, is rooted in our "Open Door" policy, one of our traditions here at Tohoku University since its foundation in 1907 as a third national university in Japan.

Since then, Tohoku University is also renowned for its "Research First" principle, and it has been a research-centered, practice-oriented institution that values innovation and diversity.

Our faculty members have a tradition of pursuing excellence, and we created a progressive campus environment with the goal of having a positive impact on our society and the world.

I am confident that your time at Tohoku University will be intellectually stimulating and emotionally fulfilling. You will meet people from many backgrounds and diverse cultures, people with other opinions and different perspectives.

There might also be times when you doubt yourself. But I am convinced that you will overcome the difficulties and acquire the wisdom and awareness necessary to make a sound and fair judgement. And remember, all of us, our faculty members, staffs, and students are here to help and support you.

I wish you all an enjoyable and safe time on our campus. Congratulations on your entrance, and welcome to the Tohoku University family.

【結びの言葉】

東北大学は、次世代の有為な人材である皆さんの入学を心から歓迎いたします。東北大学での学業と研鑽が実り豊かなものとなること、そして皆さんがさらに大きく成長されることを心から期待して、私のお祝いの言葉といたします。

令和5年4月5日


東北大学総長

大野 英男


里見進前総長メッセージはこちらよりご覧ください。

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