第10章
留学生に聞く
東北大学での学び
―門戸開放の理念のなかで―

日本で初めて女子大学生を受け入れた東北大学ですが、“学びの門戸”を開いたのは日本人学生だけではありません。1927年、東北大学は海外出身者としてソウル・梨花女子専門学校出身の辛義敬(しんぎけい)を受け入れました。(第3章参照。)当時の朝鮮半島では、女性の進学の道が事実上、閉ざされていた時代。こうした時代の中でも、東北大学は「門戸開放」を理念に掲げ、多くの留学生を受け入れてきました。その精神は、約100年が経過したいまも受け継がれ、現在では年間約3,000人もの留学生が東北大学で学んでいます。
 現在、東北大学で学ぶ女子留学生たちに「東北大学の魅力」や「東北大学で学ぶ意義」についてインタビューしました。

今回対談をするお二人
ニコル デ ロス アンヘルス フング カジェハ

Nicole de Los Angeles Fung Calleja

●経済学研究科 修士課程2年生

●パナマ共和国出身

●アメリカイリノイ州の大学を卒業

●趣味は小説を書くこと

●好きな日本食は油そば

Sera Koo

Sera Koo

●工学部 4年生

●韓国出身

●インターナショナルスクールを卒業

●趣味は映画鑑賞

●好きな日本食は寿司

「学びたい」ことが
あったから、
東北大学への留学を決意

ーお二人は東北大学でどのような勉強をされているのですか?
ニコル

私は経営学を学んでいます。研究テーマは、「パナマの長寿企業」についてです。日本では100年など長く経営を続けている企業が多く存在するのに対して、パナマでは日本のように長く経営をしている企業が少ないんです。今は論文に向けて、パナマの企業にインタビューを行っています。パナマがもっと良い国になるために、何か案内やお手伝いができないかと思って、研究しています。

セラ

私は工学部で航空宇宙工学を学んでいます。私はもともと航空機の構造についてとても興味があり、航空機に使われている材料について勉強しています。今は、研究室にも所属して日々研究を進めています。

ーなぜ東北大学へ?
ニコル

私が東北大学を選んだ理由は、プログラムと場所です。
私が学ぶ経済学研究科では、「高度グローバル人材コース(Global Program in Economic & Management, GPEM)※1というプログラムがあります。経済学と経営学について英語で学べるプログラムで、興味があり東北大学への進学を決めました。また東北という場所を選んだ理由は、もともと日本の東北地方に興味があったからです。母国のパナマはいつも蒸し暑くて・・・。(笑) 特に気候面で、仙台は私にとってぴったりだなと思ったんです。

セラ

私は高校生の頃から数学と科学が好きだったので、工学部に行きたいなと思って様々な大学を探していました。その時に見つけたのが東北大学の「工学学士コース(IMAC-U)※2」というコースです。世界中から集まった学生たちと英語で教育と研究指導を受けられる国際共修型のコースで、私の勉強したい航空機についても学べることを知り進学を決めました。

対談の様子

留学生ものびのびと
自分の興味を探しながら
学べる大学

ー東北大学で実際に学んでみてどうですか?
ニコル

東北大学は留学生のための活動や交流会などが充実していてとても有難かったです。私はアニメや弓道、かるた、茶道や琴など日本の伝統的な文化が好きで、大学では茶道サークルに入部しました。日本語を使う機会が増えて、とても練習になりました。日本人の友達もでき、分からない日本語があると相談できるのも安心できましたね。何より、茶道の作法なども学べてとても素敵な思い出を作ることが出来ました。
また私は日本語教育プログラムにも参加しています。修士課程の論文は英語で書きますが、日本語をより上達させたいという気持ちがあるので週に一度受講しています。こういうプログラムを準備していただけているのもとても有難いと思っています。

セラ

私は航空機の構造に興味があったものの、実際に勉強を始めてみるといろいろなトピックがありました。たくさんのトピックの中で私は何に興味があるのか、1年生のころは詳しく分からなかったんです。でも東北大学では、1〜2年生までは工学の全体的なことを習うので、習っている間に「私は何が好きで何が嫌いなのか」が分かってきました。東北大学は“自分の興味を探しながら勉強できる”大学だと感じています。

対談の様子

昔から多様性を
大切にしてきた東北大学

ー約100年前に海外からの女子大生を受け入れていた東北大学についてどう思いますか?
ニコル

東北大学は昔から「多様性」を大切にしてきた大学なんだなと思いました。留学生が学ぶプログラムはたくさんあるし、ネットワークもいっぱいある。東北大学は女子留学生が学びやすい環境が整っていると思います。

セラ

「門戸開放」という東北大学の理念、とても良いと思っています。昔は、新しいことに挑戦するのって難しく勇気が必要だったと思います。でも東北大学は昔からそういうことをできたという点がすごく良いと思いました。あらゆることに広い視野を持っている大学だなと感じています。

ーこれから東北大学に留学を考えている女子大生にメッセージを
ニコル

私が伝えたいのは「ぜひ挑戦してみてください!」ということです。東北大学は、先生、職員、同級生・・・みんなが優しくてとても優秀な方ばかりです。私は日本に来た頃、留学生専用の寮に入っていましたが、スタッフの方がとても親切にしてくれました。本当のお母さんのように世話になって、今でも連絡を取ったり、お昼ご飯を食べに行ったりしています。入学したばかりの頃は不安だと思うけど、決して1人ではありません。

セラ

私は工学部なので工学部の立場で・・・。女性として工学部に行くのは色々な悩みがあると思います。実際に私もそういう学生を見たことがあります。でも東北大学って、女子学生を増やすためにいろいろな交流会などを開いています。私は外国人で女性だけど、研究室の中でもみんな優しく話しかけてくれます。また女性の先生方が近くにいて悩みを聞いてくれます。サークルや部活にも参加しやすく、お友達も作れると思うのでぜひ東北大学で学んでみてください。

対談の様子

取材:東北大学 総務企画部広報室

※1高度グローバル人材コース(Global Program in Economic & Management, GPEM)
経済学と経営学の教育を英語で提供する修士課程のプログラム。グローバルな視点から考察できる専門家を目指す学生を対象とし、通常の講義のほか、海外研鑽によって実践を通じた学びも目指す。

※2国際機械工学 工学学士コース(IMAC-U)
世界最高水準の研究と教育の場を世界中の若者に提供することを目的に、機械工学分野において日本で初めて学科教育を英語化した工学学位コース。2017年10月から、グローバル入試を導入することで、それまでに実績を重ねてきた留学生対象の英語コースを日本人にも開放した。これは日本で初めてとなる国際共修工学コースであり、国籍、ジェンダーを問わず、英語を基盤として工学を学ぶことができる。