第5章
第5章翔け!輝け!東北大の女性研究者たち

本学は、文部科学省の委託、又は補助事業に採択され「杜の都女性科学者ハードリング支援事業」(2006〜2008年)、「杜の都女性科学者ジャンプアップ事業for 2013」(2008〜2013年)、そして「杜の都女性研究者エンパワーメント推進事業」(2016〜2021年)を着実に実行してまいりました。女性研究者が働きやすい研究環境のダイバーシティを高め、女性研究者の研究力向上のための取り組みを行い、さらには上位職への積極採用に向けた取組を支援してきました。本章では、その実りとして活躍している女性研究者たちを紹介します。

励まして羽ばたかせる
「紫千代萩賞」

本学は、2017年東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」を創設しました。本賞は、東北大学において優れた研究を展開する若手女性研究者に対しその活躍を讃えることで、研究意欲の一層の増進に繋げ、世界トップリーダーとなるような女性研究者の育成を目的とします。人文・社会科学分野、理学・工学分野、農学・生命科学分野、医歯薬学・保健分野の4分野から各1名を選出、本賞の授与により女性研究者の活躍を促進することで、優れた研究成果の創出に繋げることが期待されています。
 歴史は短いですが、受賞者の中で猿橋賞が2名輩出され、またJST創発的研究支援事業※に採択されるなど、受賞者たちの次なる活躍が続いています。TUMUG(東北大学男女共同参画推進センターの愛称)のホームページに歴代受賞者の情報とコラムを載せております。ぜひご一読ください。あなたのロールモデルが見つかるかも知れません。

※既存の枠組みにとらわれない自由で挑戦的・融合的な多様な研究を、研究者が研究に専念できる環境を確保しつつ原則7年間(最大10年間)にわたり長期的に支援する国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の事業

「紫千代萩賞」について

歴代受賞者

第1回(2017年)紫千代萩賞受賞者

第1回(2017年)
紫千代萩賞受賞者

(右から)永吉希久子准教授(文学研究科)、梅津理恵准教授(金属材料研究所)、里見進総長、常松友美助教(学際科学フロンティア研究所)、有澤美枝子准教授(薬学研究科)

紫千代萩賞受賞者

第2回(2018年)
紫千代萩賞受賞者

(右から)大野英男総長、石綿はる美准教授(法学研究科)、福泉麗佳准教授(情報科学研究科)、佐藤優花里助教(生命科学研究科)、落合恭子助教(医学系研究科)、大隅典子副学長

紫千代萩賞受賞者

第3回(2019年)
紫千代萩賞受賞者

(右から)吉川貴子助教(医学系研究科)、朱琳准教授(国際文化研究科)、関口仁子准教授(理学研究科)、齊藤繭子准教授(医学系研究科)

紫千代萩賞受賞者

第4回(2020年)
紫千代萩賞受賞者

(右から)大坪和香子助教(農学研究科)、熊田佳菜子助教(薬学研究科)、鄭嫣婷准教授(国際文化研究科)、林久美子准教授(工学研究科)

紫千代萩賞受賞者

第5回(2021年)
紫千代萩賞受賞者

[左写真・右から]簡梅芳助教(環境科学研究科)、前川素子准教授(医学系研究科)、岡田彩准教授(情報科学研究科)
[右写真]郭媛元助教(学際科学フロンティア研究所)

紫千代萩賞受賞者

第6回(2022年)
紫千代萩賞受賞者

(右から)西村直子准教授(文学研究科)、川西咲子助教(多元物質科学研究所)、多田千佳准教授(農学研究科)
※医歯薬学・保健分野は該当なし

※所属、及び職位などは受賞時のもの

本学が輩出した
日本をリードする
女性研究者たち

猿橋賞(さるはししょう)は、1980年から自然科学の分野で、顕著な研究業績を収めた女性科学者に贈られる日本の賞です。
本学出身、又は本学の教員で本賞を受賞した女性研究者を紹介します。

佐藤 周子 博士
(東北大学卒業生・受賞当時愛知がんセンター研究所
研究部長)

1988年第8回の猿橋賞の受賞者である佐藤周子博士は、1962年東北大学医学部を卒業し、東北大学放射線基礎医学教室の助手を経て、愛知県のがんセンターで勤務、愛知県ガンセンターの初の女性管理職となられました。佐藤博士は、「放射線によるがん細胞分裂死の研究」で猿橋賞を受賞されましたが、惜しくも翌年1989年にお亡くなりになりました。

小谷 元子 教授
(理事・副学長(研究担当))

本学理事で副学長でもある小谷元子教授は、2005年「離散幾何解析学による結晶格子の研究」で第25回猿橋賞の受賞者になりました。小谷教授は、受賞後本学の東北大学原子分子材料科学高等研究機構長(材料科学高等研究所長に変更)、(一社)日本数学会理事長などを務め、2020年からは本学の理事・副学長(研究)を務めています。また、2021年10月の国際学術会議(ISC)総会で次期会長に選出され、2024年から3年間会長を務める予定です。ISCの理事会役員に日本人が選ばれたのは初めてであり、まさに世界トップレベルの活躍をしておられます。

小谷 元子 教授
小谷 元子 教授

小谷教授と梅津教授の対談

梅津 理恵 教授
(金属材料研究所)

2019年第39回猿橋賞の受賞者として、本学の梅津理恵教授(受賞当時、金属材料研究所准教授)が選ばれました。「ハーフメタルをはじめとするホイスラー型機能性磁気材料の物性研究」で受賞された梅津教授は第1回(2017年)東北大学優秀女性研究者賞『紫千代萩賞』の理学・工学分野の受賞者でもあります。3人の子供の子育てと研究を両立する梅津教授は、次世代向けセミナーの講師や、ニュース レターへのコラムご寄稿など、当センターの活動にもご助力いただいております。梅津教授は、受賞翌年に准教授から教授へと昇進、所属研究所初の女性教授となられました。

梅津 理恵 教授
梅津 理恵 教授

梅津教授の受賞と
その他のコラム

田中 幹子 教授
(東北大学大学院卒業生・
東京工業大学)

第41回(2021)猿橋賞の受賞者である田中幹子教授は東北大学大学院出身者であります。1998年、東北大学大学院理学研究科生物学専攻博士課程修了、同年東北大学より博士(理学)の学位を取得しました。 2004年、東京工業大学大学院生命理工学研究科に着任し、2021年には教授となられています。 「脊椎動物の四肢の発生と進化に関する研究」で受賞され、2022年9月15日は、TUMUG女子大生エンパワーメントミーティングーで講演者として、本学の学生たちにご自分の研究と大学時代のラボの話をしてくださいました。対談に参加したサイエンス・アンバサダーからは一途に自分の好きな研究に突進していらっしゃる田中教授に力強さを感じたという感想が寄せられました。

田中 幹子 教授
田中 幹子 教授

田中教授と
本学サイエンスアンバサダー
との対談

関口 仁子 教授
(東京工業大学・東北大学)

2022年に第42回猿橋賞の受賞者となった関口仁子教授は、第3回(2019年)東北大学優秀女性研究者賞「紫千代萩賞」の理学・工学部門の受賞者でもあります。 「原子核物理学における三体核力の実験的研究」で猿橋賞を受賞された時は、東京工業大学教授に栄転されましたが、現在も東北大学委嘱教授として後学養成に関わっていただいています。在職中は、TUMUGの様々な企画に参加していただきました。

関口 仁子 教授
関口 仁子 教授

関口教授の
紫千代萩賞受賞コラム

SAから次世代の主役に

*元サイエンス・エンジェル、現サイエンス・アンバサダー(通称:SA)制度の
詳細については第4章でご紹介しています

第4章 / 男女共同参画の歩み

鈴木 杏奈 准教授
(流体科学研究所)

男女共同参画推進センターの運営委員でもある鈴木杏奈准教授が、科学技術・学術政策研究所「ナイスステップな研究者2022」に選ばれました。鈴木准教授は「地熱資源の持続的利用と地域共創のためのデザイン−数理情報の活用から waku × waku へ」に関する研究業績が評価され、選定に至りました。鈴木准教授は、当大学工学研究科を卒業、大学院生時代の2009年から4年間サイエンス・エンジェル (SA)としても活動しています。SA時代の活動を通して、「社会の中の科学技術のあり方」を考えるようになったことが、現在の異分野・異業種・異地域の人たちによる新たな価値の要求する研究へと繋がり、今回の選定にも繋がったとのことでした。今後の活躍も期待されます。

鈴木 杏奈 准教授
鈴木 杏奈 准教授

渡邊 仁奈 さん
(大学院農学研究科
修士課程2年)

2021年度と22年度の2年間、サイエンス・アンバサダー (SA)を務めている渡邊仁奈さんが、第28回分子寄生虫学ワークショップ/第18回分子寄生虫・マラリア研究フォーラム合同大会において参加者全員の投票でBest Presentation Award (BPA)に選出されました。長崎県長崎市長崎県美術館で開かれた22年度の分子寄生虫学ワークショップは、50名を超える過去最多の参加者数と演題数でした。渡邉さんは、普段からもSAイベントにも積極的に参加し、日頃の活躍が実を結んだと言えるでしょう。

渡邊 仁奈 さん
渡邊 仁奈 さん

文責:東北大学男女共同参画推進センター