第6章
東北大学DEI
(多様性、公正性、包摂性)

推進に向けて

東北大学は、これまでの男女共同参画推進やダイバーシティ推進の新しい幕開けとして、2022年4月5日にDEI(多様性、公正性、包摂性)推進宣言を行いました。そして、2022年6月20日には、DEI推進宣言記念シンポジウムを開催しました。当日、国内外問わず多くの方よりメッセージをお寄せいただき、本学が宣言した「多様性と公正性を包摂する教育・研究・就労環境の実現」への応援をいただきました。ここでは、本学の大野英男総長によるDEI推進への意気込みと、ワシントン大学(米国)のアナ・マリ・カウセ学長、そして日本科学未来館の浅川智恵子館長からいただいたメッセージを皆様にお送りします。

大野英男総長(東北大学)

「皆が主役 -
多様性・公正性・包摂性の
実現に向けて」
大野 英男 総長
(東北大学)

この20年間、本学は女性研究者の育成や採用促進に積極的に取り組み続けてきました。2001年にはわずか6%弱であった女性教員比率が、2022年には約20%にまで引き上げられました。当初は女性研究者のワークライフバランス推進のために始まった様々な支援制度も、現在、男女いずれの研究者も利用可能なものになり、今後は対象者をさらに広げていきます。このような本学の取り組みに対して、今年度、科学技術振興機構より、女性研究者活躍推進賞(ジュンアシダ賞)が授与されました。とはいえ、まだ道半ばです。今後も東北大学は「ジェンダーパリティ」に向けて一層の取り組みを進めていく決意です。
 2022年4月、本学は「東北大学ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進宣言」すなわち「DEI宣言」を発出しました。全構成員が多様性、包摂性、公正性を尊重し、かつ尊重されるよう、啓発や環境・制度整備を促進することを国内外に向けて宣言したのです。世界と伍していく大学として独創的な卓越した研究成果をあげ、新たなイノベーションを創出していくためには、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる環境が重要です。そのような環境を実現するためには、構成員一人ひとりが「多様性、包摂性、公正性」への意識をより高めていくことが重要です。
 日本で最初の女子大学生が本学で誕生してから2023年で110周年を迎えます。全ての構成員がその一員として誇りを持って活躍できるインクルーシブな東北大学を共に目指していきましょう。

大野英男総長(東北大学)のビデオメッセージ

サムネイルをクリックすると
ビデオメッセージが視聴できます

Ana Mary Cauce学長(ワシントン大学)

「Building Excellence Through Diversity」
Ana Mary Cauceアナ・マリ・カウセ 学長
(ワシントン大学)

東北大学とワシントン大学は共通する使命として、「多様性」「公正性」「包摂性」を尊重してきました。この使命は、両大学の歴史に深く根ざしています。1913年日本で初めて女子学生を受け入れた東北大学は、包摂性を大切にする献身的な取り組みを現在まで続けています。ワシントン大学も公正性と包摂性を大切にする取り組みをしてきました。ワシントン州やこの世界に存在する多様性を歓迎するとともに、その多様性を体現できる大学となることを目指しています。
 2015年3月に、私が学長として就任して一番に行ったのは人種的公正性を実現することでした。私は「多様性、公正性、包摂性」の実現なくして、世界に貢献するトップ大学にはなり得ないと思いました。これは「善き行い」の話ではありません。これは「善きあり方」の話なのです。私たちが卓越した存在であるためには、同じテーブルの多様な声に耳を傾けることが絶対に必要です。それは、時として、少し居心地が悪い場合もあるでしょう。しかし、少し緊張感があって少し不快な状況にあるときこそ、私たちは成長するのです。自分を駆り立てて、居心地の悪い思いをしてください。大丈夫!また一緒に力を合わせることができます。そして、みんなで一緒により良い解決策を見つけ、ともに前に進むことができるのです。

Ana Mary Cauce学長(ワシントン大学)のビデオメッセージ

サムネイルをクリックすると
ビデオメッセージが視聴できます

浅川智恵子館長

「DE&Iの実現と
科学技術の役割」
浅川 智恵子 館長
(日本科学未来館)

私は中学時代、プールでの事故が原因で失明をし、高校時代に点字を学ぶことになりました。当時は、参考書や専門書の点字版は非常に少なく、自分で必要な本を点字翻訳するしかありませんでした。1985年、日本IBMに入社し、点字デジタル化プロジェクトに関わりました。パソコンの普及とともに80年代後半にはデジタル点字図書が普及することになり、90年代後半にはインターネットの普及で、世界中の莫大な情報が手に入ることができるようになりました。私は、2004年に社会人ドクターとして博士号を取得しましたが、当時の研究環境は学部時代とは全く違っていました。インターネットで論文検索をし、スキャナーを介してデジタル化でき、デジタル化された資料は点字プリンターで出力したり、音声合成で読み上げたり、点字ピンディスプレイと呼ばれるデバイスを使ってリアルタイムで読むことも可能になりました。今2022年は、情報のアクセシビリティはさらに向上しています。このように科学技術の利用によって、私たち視覚障害者の学習や就労環境も飛躍的に改善されています。SDGsでも高い教育や働きやすい環境の実現がターゲットになっています。「誰一人取り残さない社会の実現」のために科学技術が果たす役割は大きいと思います。東北大学は、これまでもダイバーシティやインクルージョンを推進してきました。今後もぜひロールモデルとして素晴らしい取り組みを継続していただきたいです。

浅川智恵子館長のビデオメッセージ

サムネイルをクリックすると
ビデオメッセージが視聴できます

文責:東北大学男女共同参画推進センター