女性が工学分野で“生き生き”と
活躍できる大学に
ALicEの支援と活動

工学系女性研究者のキャリア継続に向けた支援や男女共同参画事業のほか、次世代育成などにも力を入れる東北大学工学系女性研究者育成支援推進室「ALicE」。このALicEの支援を実際に受けた工学研究科の有働恵子教授と同研究科出身で学生時代にALicEの活動にも参加していた環境科学研究科の山口実奈助教に話を聞きました。

今回対談をするお二人
有働恵子

UDO KEIKO

●工学研究科土木工学専攻水環境学講座

●2児の母

●工学系ベビーシッター利用料等補助や
研究支援要員派遣を利用

●子育てをしながら研究を続ける

山口実奈

YAMAGUCHI MINA

●環境科学研究科エネルギー資源学講座
分散エネルギーシステム学 助教

●2023年工学研究科を修了

●学生時代はサイエンスアンバサダーとして活動

研究だけではない
研究者・教員としての仕事

ー有働教授はALicEのどのような支援を受けたのですか
有働

「工学系ベビーシッターの利用等補助」と「研究支援要員(事務補佐員)派遣」の支援を利用しました。子供が小学生になる前、私は海外に赴任していたのですが、その時が1番困って・・・。ベビーシッターの利用料は結構高いし、海外の地ということもあり、どこかに子供を預かってもらうことがどうしても必要でした。その費用を補助してもらい、とても助かりました。一方、研究支援要員(事務補佐員)派遣も私にとって、すごく画期的なシステムでした。事務手続き作業って結構大変なんです。事務作業を手伝ってもらいたいと思っても、自分で誰かを雇用して、維持するのにもお金がかかります。その点、ALicEで導入している支援は、1人の支援要員をALicE側で雇用してもらい、必要としている人たちみんなでシェアをするという仕組みなのですごく良いシステムだなと思います。

対談の様子

支援を受けた分生まれる、
子供との時間

ー支援を実際に受けられてどうでしたか
有働

当然、自分でやっていた事務作業を誰かにやってもらえる分、時間は浮き、結構助かりました。私がこの制度を利用したのは、子供が大きくなってからでしたが、就学前のお子さんがいる方にとっては、より一層助かる制度だと思います。
子供が特に小さい頃は、「どうしても母親がいい」というときもあります。だからもうちょっと時間を(子供のために)使いたいなと思うこともあります。そういうときに、多少なりとも余裕が生まれるというのは、大きいと思います。私はちょっと考え方をシフトし、今は「完璧じゃなくてもいいのでは」と色々時間を割り振っていますが、その中でALicEの取り組みが自分にさらに余裕を生み出す支援になっていたのかなと思います。

対談の様子

研究者支援だけではない
次世代育成にも
力を入れるALicE

ー山口助教は工学系のご出身。東北大学工学研究科での学びはどうでしたか
山口

私は東北大学の工学部に入学し、2023年3月に大学院工学研究科を修了したのち、現在の職に就きました。工学系の女子学生数は、少しずつ増えていますがまだ多いとは言えません。でも講義や実験の組み分けは学科指定されるので男女問わず交流があったし、研究室に入ってしまえば性別を意識することはほとんどありませんでした。一方、学生数が少ないからこそ、女子は全員友達になります(笑)。宿題や授業で分からないところがあっても、教え合うという環境にあったかなと思いますし、卒業した今でも付き合いが続いていて深い強い絆があります。

対談の様子

ー学生時代はどのような活動をされていたのですか
山口

サイエンスアンバサダーとして、小中学生向けの科学教室などに参加しました。中には、ALicEとコラボした回(サイエンスキャンパスの科学体験イベント「サイエンス・エンジェルとぴかぴか☆LED手芸」)もあって、そこにも参加していました。また、工学を志す女子生徒に向けて開催されるオープンキャンパスのフォーラムにも参加しました。


ー活動を通して感じたことはありますか
山口

オープンキャンパスのフォーラムでは、大学生・大学院生と高校生が話す時間がありました。その際に、ある女子高校生とその親御さんが相談に来てくれたのですが「友達ができるのかすごく不安なんです」と言っていたのがすごく印象的でした。大学生活・大学院生活の様子を話すと、「少し安心しました」って言ってくれました。自分のこういった姿を見せるだけで、誰かの背中を押せるなら、こういう活動は結構大事だなって感じました。

対談の様子

好きなことを続けてほしい
性別を理由に
自分の選択を変える必要はない

ー学生たちへ2人からメッセージを
有働

学業にしても、仕事にしても、“好きなことを続けられる”というのは幸せなことだと思うんですよね。もし好きなことがあって、これを「やりたい!」というものがあったらどの分野でもいいです。その好きなことを続けてほしいなと思います。今は女性の社会進出に対する機運も高まってきており、キャリアを続けることができます。だから、あまり心配せずに好きなことにトライしてほしい。それを自分がやりたいと思うなら、続けてほしい。私のように「なんとかなる」から(笑)。
 また東北大学工学系という視点で言えば、色々なサポートが手厚い状況にあると思います。ALicEとしても大学全体としても、サポートが充実しているので、一人で悩まずに支援をぜひ利用してほしいですね。

山口

私は「やりたいことをやればいい」と思っています。女子学生や女性研究者への支援は、私が大学に入った時と、現在を比べてもきっと変わっているし、今の中学生・高校生が、大学や大学院進学を考えるときには、もっと良くなっていると思います。だからこそ、性別を理由に自分の選択を変える必要はないというのを伝えたいです。

対談の様子

取材:東北大学 総務企画部広報室

※サイエンスアンバサダー(SA)
次世代の研究者を目指す小中高校生に「こんな女性研究者もいるんだ!」「科学って楽しい!」という思いを伝えるために結集した、東北大学の女子大学院生(性自認が女性の方も含む)。女性研究者のロールモデルとしてセミナーやイベントに参加し、科学の魅力・研究のおもしろさを伝えている。